2008年、BMW M3カブリオレが注目のDKG(デュアルクラッチトランスミッション)とともに登場している。この後、M3クーぺやM3セダンへの搭載が予定されていたDKGは、M3にどんな走りをもたらしたのか。Motor Magazine誌では、M3カブリオレの走りとともに、DKGの真価を探っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年7月号より)

ふたつのクラッチの採用でAMT独特のクセを改善

ここ数年の自動車技術の様々な分野での進歩の中でも、トランスミッションに関する動きは非常に活発で新陳代謝も激しい。たとえばトルクコンバーターを使ったオートマチックトランスミッションは、少し前まで6速が最大であったものが7速、そしていまや8速が出てきている。

また一方では数年前にシングルクラッチにアクチュエーターを用いたオートマチックマニュアルトランスミッション(AMT)が台頭してきた。この変速システムは構造的にエネルギーの伝達ロスが少なく、また各ギアの燃費適正シフトポイントを自動設定できるので、規格に従った最良燃費をメーカー公表値として定めることができるという副産物も持っている。

さらにマニュアル用のギアボックスをそのまま利用できるので、トルクコンバーターシステムに比べると格段にコストが安いという利点もある。そしてなによりF1の影響もあって、スポーティな雰囲気を持っているのも魅力になっている。

難点はクラッチを繋ぐ際にトルクが一瞬途絶えることでシャックリ現象が起こるため、スムーズなトルクコンバーターに比べると快適性の面で劣っており、それが数々の利点を持つにもかかわらず広範囲な普及を妨げていた。

そこに登場したのがデュアルクラッチシステムである。このシステムは前述したオートマチックマニュアルトランスミッションと基本的には同一であるが、クラッチを2枚使ってスムーズなつながりを可能にしているのが特徴。もう少し詳しく説明するならば、ふたつのクラッチを組み合わせて、ひとつのギアからもう一段アップ、あるいはダウンのギアを選択する際にもう1枚のクラッチを使ってスタンバイ状態で繋いでおき、最終的にスムーズに駆動力を車輪に伝えるというシステムである。

ハイテクと思われるこのシステムだが、実はそんなに新しくはない。1939年には、フランス人のアドルフェ・ケーグレッセが基本特許を押さえ、そして1940年にドイツのエンジニア、ルドルフ・フランケがダルムシュタットで基本作動構造における特許申請を行っている。

その後1969年に、オートマチックトランスミッションに興味を持っていた、ポルシェのエンジニアであるイムレー・ツォドフリットが再び目をつけ、当時の開発担当であるフェルディナンド・ピエヒの下でポルシェ・デュアル・クラッチの実用化が果たされた。

画像: M3カブリオレに採用されるDKG(デュアルクラッチトランスミッション)。一方のクラッチが1、3、5、7速を、もう一方が2、4、6速を受け持つ。エンジンの回転数や速度から次に選択されるギアを予測、常にスタンバイ状態となることで、瞬時のシフトチェンジを可能にする。

M3カブリオレに採用されるDKG(デュアルクラッチトランスミッション)。一方のクラッチが1、3、5、7速を、もう一方が2、4、6速を受け持つ。エンジンの回転数や速度から次に選択されるギアを予測、常にスタンバイ状態となることで、瞬時のシフトチェンジを可能にする。

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