2008年に登場したジャガーXFは、「新しいジャガー」を象徴するモデルとして注目を集めた。保守的なそれまでの英国高級車的イメージからどう変化したのか。Motor Magazine誌ではジャガーXF 3.0ラグジュアリーと同クラスのライバルであるBMW 530iとの比較を行いつつ、両者が狙う高級サルーンのスポーツ性、プレミアム性について検証している。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年8月号より)

継続的な発展のための「攻め」のクルマづくり

「スポーツカーのスタイルと性能、ラグジュアリーサルーンの洗練性を融合させた、ジャガー新時代の幕開けを告げるモデル」。XFのリリースにあたって、ジャガーはまず自らこう述べた。「クーペのラインを持つ革新的なデザインを採用したミディアムサイズのスポーツサルーン」。これもまた、XFを紹介するのに用いられている一文だ。

ジャガーというブランドを、上品で高級なサルーンのメーカーと捉える人にとっては、こうしたスポーツという言葉の羅列は戸惑いを抱かせる要因かも知れない。が、「そもそもジャガーとはスポーツカーのブランドだった」と、その歴史をこう認識する人にとっては、ジャガーがXFというニューモデルのリリースとともに打ち出したこうしたメッセージは、まさに「わが意を得たり」というところであるだろう。

歴史と伝統に裏打ちされたイギリスが誇る自動車ブランド、ジャガー。なるほどそうした、他メーカーでは得られない時の流れが構築してきた事柄は、もちろんこのブランドならではの無形の財産だ。

しかし、XFはそうした物事の上にあぐらをかいたクルマ作りからは敢えて身を引き、既存の概念を打ち崩してさえも将来への継続的な発展を可能とするための「新時代のジャガー」を造り出そうという意欲に満ちた1台。

そんなモデルに込められた革新への意気込みは、まずはスタイリングで表現されている。XFはジャガーのモデルとしては初めて、「フロント/ロー、リア/ハイ」というドイツ車的なスタンスで、プロポーションが構築されているのだ。

中央部で上向きの凸の弧を描くかのように、前後に低く長いプロポーション、おおよそこれが、これまでのジャガーサルーンに当てはまる常識だった。端的に言えば「尻下がり」のプロポーションが、ジャガーらしさの一端を表してもいたのだ。ところが、XFは長年続いてきたジャガーサルーンへの既成概念を打ち崩している。ヘッドライト上部から始まるベルトラインは、後方に進むにつれて高さを増すウェッジシェイプのラインを描き、ルーフからなだらかに下ってきたラインと交錯する高い位置で、フェードアウトするように終焉を迎えるのだ。

空力抵抗低減に有利な上、大きなトランク容量を確保しやすいために、原則速度無制限を誇るアウトバーンの国で生まれたドイツ車を中心に、世界のクルマがこぞって採り入れた「フロント/ロー、リア/ハイ」のプロポーション。しかし、そうした機能性の高さゆえに、世界の多くのモデルに次々採用されることにむしろ反旗を翻すかのごとく、それを避けてきたのがこれまでのジャガーのサルーンでもあった。

ところが、そうした判断を改めたのがXFのプロポーション。一歩間違えばそれは当然「ドイツ車のよう」とも受け取られかねないだけに、これは相当な覚悟が必要となった決断であったに違いない。

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