スポーツカーとマニュアルトランスミッションの組み合わせは最高に楽しい。けれど時にはのんびりとクルマまかせでスポーツ性能を楽しみたい。新たに設定されたPDKという選択肢は、そんなわがままに応えてくれた。(Motor Magazine2021年2月号より)

最高のパフォーマンスを提供する「スポーツレスポンスボタン」

鮮やかなグリーンのボクスターGTS 4.0 PDK仕様・・・乗り込んですぐに気付いたのはGT3デザインのシフトレバーだった。911系に採用されている小さなスイッチ状のギアセレクターではなく、長くてたくましいシフトレバーは確かにDCT(PDK)の技術とは直接関係ない。

だが、レポーターにとってはDTMやWRCの1シーンを思い起こすシンボリックな存在だ。GTS 4.0に搭載されたPDKは7速だがオーバーオールギア比は6速マニュアルトランスミッションと同一。1速から5速までが低く設定されている。残念ながらサーキット試乗はできなかったが、ドイツにはそれに代わる制限解除区間のアウトバーンや交通量の少ないワインディングロードはたくさんある。

改めてPDK仕様ボクスターGTS 4.0のスペックを紹介すると、搭載されているエンジンは6気筒ボクサーで3995ccの排気量から最高出力400ps、最大トルク430Nmを発生する。EU規格の空車重量は1510kgで、この7速PDKモデルはマニュアルトランスミッション搭載車よりも重い。

カタログ上の走行性能は0→100km/hは加速マニュアルトランスミッションよりもコンマ5秒速い4秒フラット、0→200km/hはマイナス0.4秒の13.7秒で、最高速度は288km/hに達する。さらに100km走行あたりの燃費はマニュアルの10.8Lから、9.6Lへと、およそ12%向上している。

一方、GTS 4.0に搭載されているPDKのシフトプログラムは標準装備のスポーツクロノパッケージと共に用意されている4種類のドライブプログラム(ノーマル、スポーツ、スポーツプラス、そしてインディビジュアル)に合わせて特性が変化するようにセットされ、スポーツプラスではローンチコントロールを含む最大のパフォーマンスを発揮できるようにプログラムされている。

さらにモードダイヤルの中央に新たに「スポーツレスポンスボタン」が用意されているが、このボタンを押すとプリセットされているドライブプログラムに関係なく、エンジンとトランスミッションは最高のパフォーマンスを発揮するモードに突入する。20秒間継続するこの間にドライバーは瞬時に追い越しを遂行することができる。F1に見られるようなこのブースト効果は非常に気持ちの良いものであった。しかもこれはBEVとは違って何度もトライすることができるのである。

さて、今回の試乗は911ターボの時とは違ってアウトバーンを南下してシュベービッシュ・アルプと呼ばれる丘陵地帯へ向かうことにする。そこには箱根を思い起こさせるコーナーに富んだ比較的広く見通しの良い山間路があり、地元の自動車雑誌がテストを行うことでも知られている。まずはシュツットガルト空港の脇を走る直線路の長いアウトバーンでハイスピードスタビリティを確認しながら、目的地に到着した。

画像: PASM(ポルシェアクティブサスペンションマネージメント)を標準装備。シャシは約20mmローダウンされている。

PASM(ポルシェアクティブサスペンションマネージメント)を標準装備。シャシは約20mmローダウンされている。

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