XC40、60シリーズ、90シリーズとボルボの全ラインナップの電動化が完了した。その中でも今回は、プラグインハイブリッドモデルで雪上を走る機会があり、後輪を電気モーターで駆動するリチャージ プラグインハイブリッド T8の実力を確認した。(Motor Magazine2021年2月号より)

外部から充電できるリチャージモデル

ボルボは、早くから電動化に積極的だった。ここで言う電動化とは電気自動車(ピュアEV)のことだけではなく、エンジンに電気モーターを組み合わせるマイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド(PHEV)などのシステムも含む

画像: Bowers&Wilkinsプレミアムサウンドオーディオを装着。サウンド体験に新たにジャズクラブが加わった。

Bowers&Wilkinsプレミアムサウンドオーディオを装着。サウンド体験に新たにジャズクラブが加わった。

ピュアEVの日本への導入こそ、2021年まで待たなければならないが、それ以外は2017年の宣言どおり、すべてのラインナップに48Vハイブリッドシステム、PHEVを揃えて電動化を完了したのである(このあたりのことはMotor Magazine1月号で詳しく紹介しているのでそちらもご覧いただければ幸甚です)。そして今回は、その中のPHEVに雪上で試乗した。4WD性能を確認するためである。

ところでホルボのPHEVはこれまで、「ツインエンジン」と呼ばれていたが、21年モデルから外部から充電できるモデルは「リチャージ」という名称になり、そこにプラグインハイブリッドが付けられるようになった。そんなPHEVの中で今回試乗したのは、V90リチャージプラグンハイブリッド T8 AWD インスクリプション(以下V90 T8)である。

画像: T8は、フロントに積まれるのは2L直4ターボ+スーパーチャージャー+電気モーター。リアは電気モーターで駆動。

T8は、フロントに積まれるのは2L直4ターボ+スーパーチャージャー+電気モーター。リアは電気モーターで駆動。

名称こそ変わったが、PHEVのシステムに変更はない。フロントに34kW/160Nm、リアに65kW/240Nmを発生する電気モーターを搭載している。これはボルボのPHEVモデルすべてに共通している。ちなみにV60のPHEVにはT6も用意されているが、T8との違いは搭載する2L直4エンジンの最高出力と最大トルクのスペック違いである。

残量ゼロに見えるが後輪の駆動用に電気は残っている

V90だけではなく、XC90、XC60も同様だが、このリチャージプラグインハイブリッド T8のリアは、モーターで駆動するAWDシステムを採用するが、充電がなくなり、メーター内に表示されるEV走行可能距離が「––」 表示(ゼロ)になっていてもしっかりと後輪を駆動するモーター用の電気は確保されているのが特徴である。

画像: ボルボのプラグインハイブリッドは、ツインエンジンからリチャージに名称が変更された。

ボルボのプラグインハイブリッドは、ツインエンジンからリチャージに名称が変更された。

つまりバッテリー残量計がゼロ(のように見えて、よく見ると実は少しだけ残量が残っているようにも見える)になってもそれは見かけだけのこと。しっかりリア駆動するモーター用の充電量は確保されているというわけだ。悪路や今回のような雪道ドライブでも常時、安定した駆動力が確保されているのは、これが理由なのだ。充電がなくなるとフロントだけで駆動すると勘違いしている人もいるが、それは間違いだ。

画像: 今回の雪上試乗会ではヨコハマのスタッドレスタイヤ、ice GUARD6を装着。雪道も安心だった。

今回の雪上試乗会ではヨコハマのスタッドレスタイヤ、ice GUARD6を装着。雪道も安心だった。

そんなAWD性能をテストすべく雪道へ入り込んだが、ドライ路を走っている時と同様にV90 T8は何の変化もなくスムーズに走っている。それならばと、安全を確認しつつ雪道ではタブーとされているアクセルペダルやブレーキペダルを強めに踏んでみたりしたのだが、スタッドレスタイヤの限界を超えない限りクルマが終始安定方向に制御してくれて、ハンドルを切った方向にクルマは向かい、走りV90 T8だが、これは雪道走破性もかなりの実力の持ち主だ。

さてそんなV90、いやボルボの21年モデルに共通する改良点も報告しておきたい。まずは、全モデルの最高速度が180km/hに制限されたことだ。これは、スポーツPHEVであるポールスターエンジニアードでも同様である。

画像: 21年モデルからボルボは通常のキーの他に任意の最高速度を設定できるケアキー(オレンジ)も採用。

21年モデルからボルボは通常のキーの他に任意の最高速度を設定できるケアキー(オレンジ)も採用。

ボルボの安全に対する考え方はとてもわかりやすく、誰が考えても危険な速度を出せないよう、クルマ側で制限する、ということだ。これはボルボ車が関係する重傷事故、死亡事故ゼロへは必要である、ということだ。

さらにもうひとつ、ケアキーが上げられる。これは、新車購入時に通常のキーの他にひとつオレンジ色のキーが付いてくるが、このキーはあらかじめ最高速度を任意で設定できる、というものである。たとえば、免許を取得したばかりの若い人、運転が苦手な人、高齢者にはケアキーで運転してもらえば、120km/hや100km/hといったあらかじめ最高速度をケアキーに設定しておけば、それ以上の速度が出せない。これも危険な速度で事故を起こすリスクをなくす方策である。これほどボルボの安全哲学は徹底しているのだ。(文:千葉知充/写真:小平 寛)

画像: 搭載するのは電圧350V、容量34Ah、96セルのリチウムイオン電池。充電電力使用時の走行距離は42.1kmとなる。

搭載するのは電圧350V、容量34Ah、96セルのリチウムイオン電池。充電電力使用時の走行距離は42.1kmとなる。

V90 リチャージ プラグインハイブリッド T8 AWD インスクリプション 主要諸元
●Engine型式 B420
●種類 直4DOHCターボ+スーパーチャージャー+モーター
●総排気量 1968cc
●最高出力 233kW(318ps)/6000rpm
●最大トルク 400Nm(40.8kgm)/2200-5400rpm
●燃料・タンク容量 プレミアム・60L
●WLTCモード燃費 13.8km/L
●Motor型式・種類 T28(前)、AD2)後・交流同期電動機
●最高出力 34kW/2500rpm(前)、65kW/7000rp(後)
●最大トルク 160Nm/0-2500rpm(前)、240Nm/0-3000rpm(後)
●EV走行換算距離 42.1km
●全長×全幅×全高 4945×1890×1475mm
●ホイールベース 2940mm
●車両重量 1980kg
●最小回転半径 5.9m
●ラゲッジルーム容量 550/1526L
●駆動方式 4WD
●トランスミッション 8速AT 
●サスペンション形式 前ダブルウイッシュボーン/後マルチリンク
●タイヤサイズ 245/40R20
●車両価格 10,140,000円

This article is a sponsored article by
''.