2008年、5代目F01型BMW7シリーズがデビューした。クリス・バングルの手による革新的なスタイルで話題となった4代目E65型からどう変わったのか。今回は国際試乗会の前に南フランスのテストコースで行われた先行試乗ドライブとワークショップの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年9月号より)

レクサスLSの登場で市場に変化が起こる中での進化

世界のラグジュアリーリムジンの市場は、長い間、ドイツの2大ブランドであるメルセデス・ベンツSクラスとBMW 7シリーズでほぼ独占されていた。もちろん、アウディA8が伸びてきたし、またジャガーやベントレーなどのブリテッシュ勢にもある程度の支持者はいたが、数の上ではそう大きなものではなかった。

ところがアメリカで異変が起きた。レクサスだ。1989年に現れたトヨタの高級車ブランドであるレクサスLSは、既知の価値観を覆す「静けさ」で北米を中心に世界市場を席巻していった。昨年2007年のラグジュアリーリムジンの販売台数を見ると、メルセデス・ベンツSクラス:8万5000台、レクサスLS:7万4760台、BMW 7シリーズ:4万4400台、アウディA8:2万1300台となっている。

さて、これらリムジンの販売台数はアメリカの経済状況の悪化を受けて、今年2008年に入って伸び悩んでいる。こうした状況下で、BMWは7シリーズのフルモデルチェンジを行った。果たして、BMWは7シリーズに何を託しているのだろうか。

まずは、注目のデザインから話を始めよう。すでにご承知のように、旧7シリーズ(E65型)は、はっきり言って決して美しいとは言えない難解なデザインで市場にショックを与えた。しかし、この7シリーズは1977年にデビューした初代7シリーズ(E23型)、2代目(E32型)、そして3代目(E38型)と比較して、34万台ともっとも多く販売されたモデルでもある。それゆえに決して失敗作とは言えない。

こうした背景で登場したニュー7シリーズ(F01型)は、フロントに旧シリーズの面影を残すクルマとなっている。すなわち垂直に立ち上がった大きなキドニーグリルと、旧型を彷彿とさせるヘッドライトユニットを持っている。一方、批判が厳しく集中したリアエンドは大きく変化している。トランクの段付きは消え失せ、テールライトも厚みを増し、この部位はまるで日本車のような雰囲気を漂わせている。

またボディのプロフィールはプレスラインがドアハンドルの高さになり、また凹面と凸面を組み合わせた緊張感のあるものに変わっている。少なくともエクステリアデザインは、先代の名誉を挽回するものと思われる。

さて、今回の7シリーズでもっとも画期的な技術の一つが軽量化だ。それも適材適所に異なる素材を使ったコンセプトである。

まず軽量なアルミ材を比較的ストレスの少ないルーフ、ドア、そしてフェンダーやボンネットに使用する。ここですでに30kg以上の軽量化に成功している。続いて軽量スチール材を通常の骨格にあたる部分に、そして高張力鋼板はBピラーやサイドシルなどストレスが大きくかかる箇所に使用している。

さらにインテリアにも大きな変化がある。まずはトランスミッションのセレクトレバーは、タケノコのようにレバーが密集していたステリングコラムから、センターコンソールへと移動した。これは正しい。しかも操作は簡単で、間違ってリバースに入れるような失敗はなくなるだろう。

続く大きな変化はiDriveである。これまでスイッチの簡素化のシンボルのようであったコントロールダイヤルは小型化され、周辺には7個ものサブスイッチがレイアウトされている。開発担当によれば、日本を含む各国での実物を使った調査の結果、このシステムが選ばれたと説明された。しかしスイッチの簡素化という目標はどこへ行ってしまったのだろうか。

カーインフォテインメントに関しても、7シリーズは最高のものを用意している。まずは10.2インチという大きなモニターを用意した。インターネットへのアクセスが可能で、そうした時にこのモニターの有り難みを感じる。また道路速度標識確認システムやレーンキーピング、後方接近車ウォーニングなど、数々のドライバーアシストもオプションで用意される。

画像: ホイールベースは従来モデルの2990mmから3070mmとなり80mm長くなっているが、全長はプラス33mmの5072mmとなる。写真はロングボディのLiで、全長×全幅×全高=5212×1902×1478mm、ホイールベース=3210mm。

ホイールベースは従来モデルの2990mmから3070mmとなり80mm長くなっているが、全長はプラス33mmの5072mmとなる。写真はロングボディのLiで、全長×全幅×全高=5212×1902×1478mm、ホイールベース=3210mm。

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