アウディのRS Q3/RS Q3スポーツバックのデビューによってRSモデルのラインナップはさらに充実したが、RS 3セダンとRS 3スポーツバックの販売再開もホットな話題だ。サーキットで健在ぶりを実感した。(Motor Magazine2021年3月号より)

ノーズは素直にイン側を向き高いトラクション能力で加速

念のため申し上げておくと、今回試乗したRS3は、本国ですでに次世代にモデルチェンジした新型A3ベースではなく、2018年にマイナーチェンジを受けた従来型を基本とするモデル。日本ではここ2年ほど販売されていなかったが、今回改めてマトリクスLEDヘッドライト、フロントダイナミックターンインディケーター、マットアルミニウムスタイリングパッケージなどの特別装備を携えて発売されることになったという。

とはいえ、ていねいに作り込まれたデザインはまだ新鮮さを失ってない。試乗当日は清々しい青空に恵まれたが、再発売に伴って追加された新色のキャラミグリーンが、冬の陽射しを受けて美しい輝きを放っていたのも印象的だった。

RS3の運転席に収まる。目の前に置かれたフルデジタルメーターのバーチャルコックピットは2年前のマイナーチェンジの際に採用されたもの。これだけでも私が知るA3とはずいぶん異なるが、RS3はさらにグリップ部分がアルカンターラのハンドルを備え、カーボン素材や赤いステッチでスポーティなイメージを強調しており、いかにも特別なモデルという雰囲気がプンプンと漂っている。

画像: フラットボトム形状のハンドルは左右グリップ部がアルカンターラレザー巻き。メーターパネルはバーチャルコックピットを採用。

フラットボトム形状のハンドルは左右グリップ部がアルカンターラレザー巻き。メーターパネルはバーチャルコックピットを採用。

7速DCTのSトロニックで1速を選び、ピットレーンを加速していくと、独特のエンジン音がキャビンに響き渡った。初代クワトロに搭載されて以来、アウディのハイパフォーマンスモデルにはなくてはならない存在の直5ユニットだが、現行型にモデルチェンジする際にゼロから設計し直され、アルミ製エンジンブロックが与えられた。最新エンジン同様に軽くシャープな回転フィールを手に入れたほか、5気筒のビート感もいくぶん控えめになっている。多くのファンに受け入れてもらえる味つけだろう。

RS3のクワトロ(4WD)システムは、ハイドロリックマルチプレートクラッチを用いた電子制御式で前後のトルク配分は前:後=100:0〜50:50で調整可能。もっとも後車軸には常に数%程度のトルクが伝達されているので、完全に前:100となる状況はないらしい。

それでもRS3は「4WDはサーキットで鈍重」という先入観を覆すような軽快さで富士スピードウェイを駆け巡った。ターンインは自然で、ハンドルを切れば切っただけノーズは素直にイン側を向く。ドライビングモードをダイナミックにしておけばサスペンションの減衰力が高まってロールがぐっと押さえられ、コーナリング中の姿勢もより安定する。

そしてコーナー脱出ではクワトロが威力を発揮。乱暴にアクセルペダルを踏み込んでも駆動輪がスキッドすることはなく、安定した姿勢を保ったまま脱兎のごとく加速していく。このトラクション能力の高さこそクワトロの真髄だが、それとともに駆動輪のグリップ状態によってハンドリング特性が変わらない安定感も魅力的。RS3の真の実力は、サーキットを走って初めて理解できるものなのだ。(文:大谷達也/写真:小平 寛・井上雅行)

画像: 直列5気筒ターボエンジンには名車“アウディクワトロ”のDNAが脈付いている。

直列5気筒ターボエンジンには名車“アウディクワトロ”のDNAが脈付いている。

アウディRS3セダン主要諸元

●全長×全幅×全高:4480×1800×1380mm
●ホイールベース:2630mm
●車両重量:1600kg
●エンジン:直5DOHCターボ
●総排気量:2480cc
●最高出力:294kW(400ps)/5850-7000rpm
●最大トルク:480Nm/1700-5850rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・55L
●LC08モード燃費:11.0km/L
●タイヤサイズ:235/35R19
●車両価格(税込):869万円
*RS スポーツパック車両価格850万円

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