環境性能=優しさが優先される時代に、強さを謳う「RS」が生き残るすべは果たしてあるのだろうか。その答えが、このアウディRS eトロンGT プロトタイプ。アウディにとって電動化は、高性能を極める選択肢だ。(Motor Magazine2021年3月号より)

電動化こそが最強のアイコンの未来を拓く

2021年1月現在、アウディジャパンの公式HPを覗いてみると、eトロンが1種類、eトロンスポーツバックが2種類、ラインナップとして並んでいる。ブランド史上初の電気自動車だが、そのデザインはどちらもあまり「電気自動車らしく」はない。

初めて実際にトロンスポーツバックを見た時に感じたのは、先進性、というより先鋭性だった。エフィシエントなモデルに乗る・・・という優越感をくすぐるだけでは飽き足らず、エモーショナルなときめきまでガツガツと刺激してくるカタチだ。

そのダイナミックな存在感はエコカーというよりも、アウディスポーツが手掛けるモデルたちに近いように思えた。これはそう遠くないタイミングで、電動化されたRSモデルが誕生するに違いない・・・そんな予感は、ほどなく当たる。2020年11月、4ドア EVスポーツモデル eトロン GTをベースとした、初めてのアウディスポーツラインナップが量産プロトタイプとして登場した。

画像: 新開発エアサスペンションで高速走行時などは車高を22mmダウン。空力特性を高める。

新開発エアサスペンションで高速走行時などは車高を22mmダウン。空力特性を高める。

以前に海外試乗というカタチで紹介されているが、仮想ライバルはポルシェ初の電動スポーツカー「タイカン」だという。そのパフォーマンスの高さは、推して知るべしだ。なにより、アウディスポーツGmbHでマネージングディレクターを務めるジュリアス・シーバッハ氏自身がこのRSトロンGTを「アウディの電動化戦略における技術的なフラッグシップ」として捉えている。そして、電動化そのものをハイパフォーマンスモデルの進化の一環として力強く進める戦略を明言している。

シーバッハ氏はアウディラインナップ全体の中で、RSモデルを「もっとも強力なエンジン、最高のダイナミクスと最大のドライビングの歓びを持つ、もっともエモーショナルなモデル」だと、定義する。それは電気自動車の時代が来ても、変わることはない。だからこそ彼は、そんな時代の到来を「私たち(アウディスポーツ)にとっての革命だ」と歓迎する。

0→100km/h加速を3秒台半ばでこなす俊足車だ。同時に、快適性だけでなく空力特性まで考慮した3チャンバーのエアサスペンションや、従来のメカニカルタイプに比べて約5倍も速いレスポンスで作動するというクワトロシステムなど「速さ一辺倒」ではない進化を遂げているところは、いかにもアウディスポーツらしい。

新世代のグランドツーリングカーとして誕生するRS eトロンGTは、アウディの電動化戦略の行方と潜在するポテンシャルを占う、試金石となりそうだ。(文:Motor Magazine編集部 神原 久/写真:アウディAG)

画像: 床下にフラットに配されたリチウムイオン電池は総容量93.4kWh。最大航続距離は約400kmとのこと。

床下にフラットに配されたリチウムイオン電池は総容量93.4kWh。最大航続距離は約400kmとのこと。

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