2008年月、3代目インプレッサに4ドアセダン「インプレッサ アネシス」が設定された。北米市場ではすでに発売され人気を博していたが、1年半遅れで日本試乗にも投入された。3代目では主力がハッチバックに移行する中、セダンはどのように位置づけれらたのか。ここでは国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年12月号より)

あえて「若さ」とか「スポーツ」を打ち出さない理由

インプレッサの新しいバリエーション、4ドアセダンの「Anesis(アネシス)」はギリシャ語で「安心」「快適」「信頼」を意味する。河口湖周辺で行われた試乗会に行き、実車を眺めた第一印象は「ずいぶん立派な姿になったな」 ということ。傍らにあったレガシィよりボリューム感があり、高級に見えたほどだ。全長はレガシィの方が長いが、全幅、全高のサイズが上回っているからだろう。

先代までのインプレッサはWRXのイメージが強すぎて、標準車はなんとなく「華奢」なイメージが拭い切れず、地味な存在だった。しかし今回のアネシスはまったく趣をかえ、見栄えのするセダンに生まれ変わっている。

競合車は日産ブルーバードシルフィ、トヨタ カローラアクシオといったところ。手ごろなサイズのオーソドックスな3ボックスセダンの需要は現在でも根強くあるのだ。そういったライバル車と比べると、アネシスはかなり若々しい雰囲気がある。しかしながらアネシスはあえて「若さ」とか「スポーツ」をセールストークに打ち出していない。

かつてメーカーは鉦(かね)や太鼓で「スポーツ」、あるいは「レース&ラリー」イメージを訴求し、若いユーザーにクルマを売ろうとした。しかし近代になると、それがかえって販売面でマイナス効果を生み出したことをスバルは身を持って知っているからだろう。もはやうわべだけのスポーツタイプが通用する時代ではない。日常の使い勝手に優れた、「良質なクルマ」こそが生き残れる時代なのだ。アネシスの搭載エンジンラインアップは1.5L DOHC(110ps)と2L SOHC(140ps)の2種のみ。それぞれにFF、4WD(スバルは2WD、AWDと呼称する)を用意する。

試乗会では2.0i-SというトップグレードのFFモデルを迷わず選択した。これまでインプレッサのFFは廉価版の1.5Lのみに設定されていたが、今回の細部改良にともない、2LのFFモデルがデビューしたのだ。スバルといえばシンメトリカルAWDが「お家芸」であり、その評価はもはや確固たるものがある。ならばフツーのFFモデルはどうなの、と興味が湧いたからだ。

2.0i-Sは専用のLEDストップランプ内蔵リアスポイラーや205/50R17インチタイヤ、リアスタビライザーを備えた、いわばスポーツグレードなのだが、前述したようにメーカー資料やカタログにはそれらを仰々しく大書していない。

画像: 太いCピラーと独立した明確なトランクがアネシスの特徴。落ち着いた雰囲気だが、ウエッジの効いたサイドラインとトランクリッドスポイラー、大きなリアバンパーで若々しさを感じさせるものになっている。

太いCピラーと独立した明確なトランクがアネシスの特徴。落ち着いた雰囲気だが、ウエッジの効いたサイドラインとトランクリッドスポイラー、大きなリアバンパーで若々しさを感じさせるものになっている。

さて、ドアを開け運転席に座る。2.0i-Sに標準装備されるパールスエードというシート表皮の感触が気に入った。インテリアの質感も200万円ちょっとという価格でよく頑張ったと思う。

スタートすると独特の水平対向(ボクサー)エンジンのサウンドが遠くの方で聞こえ、ロードノイズの侵入も少ない。エンジニアによると室内騒音はレクサスIS 、先代クラウン(ゼロクラウン)並み(69dB)のレベルに達したというから立派なものだ。

アネシスのトランスミッションはマニュアルモード付きの4速ATだが、積極的に操作すればけっこう楽しい。140psの2Lエンジンはトルクが少々細く、連続したアップヒルでは高回転域を多用せざるを得ないが、けっこういいペースで走ってくれる。また、4WD車比で車重が50kg軽量なこともあり、ハンドリングは軽快かつ落ち着きがある。

長い直線路で、WRX STIに乗って感じたことを思い出した。それは優れた直進安定性だ。「まっすぐ走るクルマはいいクルマ」である。このFFの2.0i-Sも、スバルがSIシャシと呼ぶプラットフォームは基本的に共通だから長所は同じ。あたりまえのことがきちんとできているのだ。そして特筆すべきは乗り心地。ストローク感があり、すこぶる快適である。エンジニアに聞けば、2.0i-Sのダンパーは欧州仕様のSHOWA製という。

結論。アネシス2.0i-Sはおくゆかしい「隠れスポーツセダン」。おすすめです。(文:Motor Magazine編集部 /写真:村西一海)

スバル インプレッサ アネシス 2.0i-s(FF) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4580×1740×1475mm
●ホイールベース:2620mm
●車両重量:1290kg
●エンジン:水平対向4SOHC
●排気量:1994cc
●最高出力:103kW(140ps)/5600rpm
●最大トルク:186Nm/4400rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:FF
●車両価格(税込):201万6000円(2008年当時)

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