ベントレーというブランドには、大陸を横断するような長距離移動を快適に走ることができるグランドツーリング思想が、宿っている。今回はそれを実際に体験するためベンテイガ V8(Bentley Bentayga V8)で大阪までロングドライブに出かけた。しかし直行してはつまらない。紀伊半島をぐるりと大きく寄り道して日本の素晴らしさを味わうコースを選んだ。

ベンテイガV8で、春を探して南紀へのロングドライブ

「春を探しに南紀の方に出かけませんか?」そんな素敵な誘いの言葉を千葉編集長にかけてもらった記憶は残っていないが、3月を目前に控えたこの季節であれば南紀あたりは多少暖かいだろうという漠然とした思いは抱いていた。

今回のルートは、東京を出発して名古屋付近で南に大きく逸れ、紀伊半島をぐるりと回って大阪に至る1000kmほどの道のりである。そのうち、伊勢志摩から先のルートはこれまで走ったことがない。おまけに旅の友は先ごろ大規模なフェイスリフトを受けたベントレー ベンテイガ V8である。

2020年3月のパンデミック直前にイギリスでそのプレビューを取材し、Motor Magazine誌10月号に寄稿したクローズドコースでの試乗を除けば、まだ新型ベンテイガのハンドルを握ったことがない。新型コロナウイルス感染症は心配だが、そこは万全の対策を施すことにしよう。そう考えると、旅の誘いを断る理由はどこにもなかった。私はベンテイガ V8で南紀を目指すことにした。

試乗車のボディカラーはホールマークと呼ばれる品のいいグレイメタリックである。ここに燦めくようなクロームのメッシュグリルが組み合わされていて、控えめな中にもほのかな華やかさが感じられる。足下を引き締めているのは、オプションで用意されるマリナーの22インチホイールだ。

走り出しから軽やかで、活き活き走るV8エンジン

ベントレーお勧めの「B」モードで走り始めてすぐに感じたのは、そのやや硬めな乗り心地だった。もっとも、細かな振動などはていねいに取り払われているので質感は高い。そして「B」モードでは多少気になったハーシュネスも、「コンフォート」モードにすればきれいさっぱり消え去る。

それでも私は、この時点では「B」モードの引き締まった乗り心地に違和感を完全には拭いきれないでいた。実は、この認識が旅の途中でがらりと変わるのだが、これについては後述させていただこう。

画像: 走行モード「B(ベントレー)」にすれば、クルマ任せで気持ちよく走ることができる。

走行モード「B(ベントレー)」にすれば、クルマ任せで気持ちよく走ることができる。

新型ベンテイガでは主役の座がW12からV8エンジンに移ったが、これはもうデビュー当時から感じていたとおり、パフォーマンスに関してはまったく不満を抱かない。

それどころか、アクセルペダルを踏み込んだ直後の反応が軽やかで、むしろW12モデルより活き活きと走るような感触がある。さすがにトップエンドまで回すとW12のパワー感には及ばないものの、実際にそこまで回す機会がどれほどあるのか。W12はハイパフォーマンス版の「スピード」だけとし、標準モデルにV8を選んだベントレーの判断を私は支持する。

旅の初日はどんよりとした曇り空だったが、翌朝、亀山のホテルで目覚めると空はきれいに晴れ上がっていた。朝の空気はキリリと冷たいが、強い陽射しが肌に暖かさを運んでくれる。気持ちいい1日になりそうだ。

伊勢神宮近くの赤福本店で「手入れ」の赤福餅とほうじ茶を味わった私たちは、続いて伊勢志摩スカイラインでベンテイガ V8のハンドリングを味わうことにした。

タイトなコーナーが多い伊勢志摩スカイラインでも、ベンテイガ V8の大柄なボディをまったく持て余さずに済んだのは、洗練された感触のステアリングホイールが思いのほかクイックだからだろう。保舵力は従来より少し重くなったような気もするが、ワインディング路ではむしろしっかりとした手応えを伝えてくれて安心感がある。

もうひとつ、コーナリング中に強い安心感をもたらしてくれたのがダイナミックライドシステムと呼ばれるアクティブアンチロールバーシステムである。

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