2008年12月、ダイハツ ブーン ルミナス/トヨタ パッソ セッテが登場した。文字どおり「ブーン/パッソ」のホイールベースを延長して3列7人乗車を実現したコンパクトカーは、ダイハツが独自に暖めていたコンセプトで、ミニバンっぽくないのがポイントだった。ここでは登場後まもなく開催された国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年3月号より)

ミニバンっぽさのない、気軽に乗れる7人乗りコンパクト

ダイハツ ブーン ルミナスとトヨタ パッソ セッテ。この2車は基本的に同じクルマ。開発と生産担当はダイハツである。

4年ほど前、ダイハツはスペース系軽自動車ユーザーの上級移行に備え、コンパクトサイズの3列シート車を企画していた。それがトヨタのニーズに一致したことでOEM(相手先ブランド製造)が決まり、開発が急ピッチで進んだ。

細部のデザインや性能評価など親会社であるトヨタの要望を取り入れつつ完成に向かったが、主導はあくまでダイハツ。この図式はダイハツ COO(クー)、トヨタ bB、スバル デックスと同じ。ベースは「ダイハツ製」のCOOであり、それをトヨタ、スバルに供給するシステムだ。

ダイハツはムーヴやミラ、タントの大ヒットで「軽自動車メーカー」というイメージが強いが、実は昔からコンパクトカー作りに長けていて、ライバルメーカーを驚かすクルマを作っている。その代表作は1977年にデビューしたシャレードだ。コンパクトなボディに1L 3気筒エンジンを搭載、ヨーロッパ的合理主義をセールスポイントとして成功を収めた。近年ではストーリア(トヨタにデュエットとしてOEM)も専門家筋から評価が高かった。ダイハツは小さいクルマをうまく作るノウハウの蓄積があるのだ。トヨタにとって、その「得意技」を持つダイハツはグループ内の頼れるパートナーなのだ。

画像: ダイハツ ブーン ルミナスCXのインテリア。インストルメントパネルは左右に大きく広がるラウンド形状。スッキリまとまった中央のセンタークラスターは操作性に優れる。長いホイールベースを持つが、最小回転半径は5.2mで狭い道でも小回りが効く。

ダイハツ ブーン ルミナスCXのインテリア。インストルメントパネルは左右に大きく広がるラウンド形状。スッキリまとまった中央のセンタークラスターは操作性に優れる。長いホイールベースを持つが、最小回転半径は5.2mで狭い道でも小回りが効く。

さて、ルミナス(英語の「輝き、広々」からの造語)とセッテ(イタリア語の「7」=7人乗りの意)だが、広報資料に「ミニバン」という表記は見当たらない。そう、このモデルはいざという時に「7人乗れるコンパクトカー」というポジションなのだ。

よって重量の嵩むスライドドアはない。競合するのは同じ排気量(1.5L)のホンダ フリードだろう。こちらはスライドドアを持ち、全高も高くミニバンテイストを訴求する。それに比べるとセッテ/ルミナスは大人しいというか、スッキリしたエクステリアだ。没個性的で地味と見るか、クセがなく親しみやすいスタイルと見るか意見が分かれそうだが、私はこのシンプルな「普段着ルック」が好ましいと思う。どことなくプリウス顔なのもいいではないか。

インテリアもまた余計なお飾りはなく、スイッチ類の操作性も良好。シートはソファ感覚のベンチシート(セパレートの設定もあり)が寛げる。インパネやドアトリムの樹脂に表面処理が施され、アンダー200万円クラスとしてはよく頑張った内装といえる。

画像: コンパクトカーらしからぬ余裕を満喫できる室内。とくに2列目は最大150mmのスライドと20度のリクライニングが可能。ただし3列目はたまにだけ使うものという設定。

コンパクトカーらしからぬ余裕を満喫できる室内。とくに2列目は最大150mmのスライドと20度のリクライニングが可能。ただし3列目はたまにだけ使うものという設定。

試乗会は幕張メッセ周辺で行われた。選択したモデルはダイハツ ブーン ルミナスCX。これはトヨタ パッソ セッテGに該当する販売の主力グレードで、ともに価格は173.5万円。運転席のヒップポイントは630mm。この高さはトヨタとスズキがとてもこだわっている寸法で、標準体型の女性が自然な姿勢で乗降できる高さなのだという。ドアミラーが三角窓の後方にセットされているので斜め前方の視界もいい。

エンジンは1.5L(109ps)で数値上は平凡だが、ロングストローク型ゆえ中低速域のトルクが豊か。そのわりには高回転域まで頑張って回ってくれる実直なエンジンだ。トランスミッションは4速AT(シーケンシャルシフトマチック付き)のみの設定。

一般道を走り出してしばらくすると、なんだかひとクラス上(2L級)のモデルに乗っているような感じがした。それは2750mmというロングホイールベースの恩恵。一般論だが、長い方が直進性に優れ、乗り心地がよくなる。

一方、ロングホイールベースでは、旋回性能、きびきび感は薄れる。ちなみにこのホイールベースの数値はマークXジオに30mm、輸入車ではBMW 3シリーズに10mm足りないだけ、というとわかりやすいだろう。乗り心地はおだやかで室内騒音も抑えられ、まことに平和な乗り味だ。電動パワーステアリングは一連のトヨタ車よりいい意味でやや重く、手応え感があっていい。

「小さな7人乗り」は若夫婦のみならず、高齢者の複数いる家族でもなにかと便利だ。結論。ルミナス/セッテはよくまとまったリーズナブルな実用車である。(文:Motor Magazine編集部/写真:保坂 明)

ダイハツ ブーン ルミナス CX 主要諸元

●全長×全幅×全高:4180×1695×1620mm
●ホイールベース:2750mm
●車両重量:1190kg
●エンジン:直4 DOHC
●排気量:1495cc
●最高出力:80kW(109ps)/6000rpm
●最大トルク:141Nm/4400rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:FF
●10・15モード燃費:15.6km/L
●車両価格:173万5000円(2009年当時)

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