クサラの後継車として2005年に登場したシトロエンC4は、2009年2月に大掛かりなマイナーチェンジを行っている。C4はどんなクルマだったのか、この時、どんな進化を遂げたのか。国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年4月号より)

実はシトロエンはポピュラーなブランド

シトロエンは乗るほどに身体になじみ、その良さがわかってくるクルマだと思う。逆に言えば、ちょっと乗っただけでは、その本当の良さはなかなかわからないとも言える。しかしその味を一度知ってしまった人は、熱狂的に愛し、その後も乗り続けることが多い。

日本におけるシトロエンのイメージとはどういったものだろう。「独創的でアクが強い、一部のマニアックなファンのためのクルマ」というところだろうか。しかし実際は2007年の世界販売台数146万台という数字からもわかるとおりポピュラーなブランド。プジョーが199万台だから、マニアックなブランドでないことはわかっていただけるだろう。

ハイドロニューマチックサスペンションに代表される、先進的で凝ったメカニズムで知られるからか、「高価なクルマ」というイメージがあるようだが、これも少し違う。シトロエンの基本思想は「クルマは一般大衆のための便利な道具であり、クルマがあることで多くの人々の生活はより豊かなものとなる」というもの。

クルマがまだ一部の富裕層の贅沢な玩具だった時代、低価格で先進的かつ高品質なクルマの供給を実現したという歴史を持つ。日本での車両価格を見ても、むしろプジョーよりもコストパフォーマンスに優れるくらいだ。豪華ではないが、しっかりとした味があり、安っぽくないところがポイント。価格がどれくらいなのか、想像しにくいクルマでもある。

画像: 2009年2月、シトロエンC4のマイナーチェンジが発表された。その内容は内外装の変更にとどまらず、エンジンラインアップをすっかり変えるという大がかりなものだった。

2009年2月、シトロエンC4のマイナーチェンジが発表された。その内容は内外装の変更にとどまらず、エンジンラインアップをすっかり変えるという大がかりなものだった。

こともなげにコーナーをクリア、拍子抜けするほどに滑らか

今回紹介するC4はシトロエンの販売の中心的存在となるモデル。2004年に発売が開始されて以来、世界中で90万台以上が販売された人気モデルだ。独創的なスタイリングと装備で、フォルクスワーゲン ゴルフ、プジョー 308、ルノー メガーヌなど強豪がひしめくCセグメント市場で確固たる地位を築いてきた。

そのC4が2月27日にマイナーチェンジされて日本市場に投入された。最大の変更点はエンジン。シトロエン製の2Lと1.6Lエンジンを、PSAプジョー・シトロエングループとBMWグループ共同開発による1.6L直噴ターボ/1.6Lに変更した。

これにより、プラットフォーム、サスペンション、そしてエンジンといった基本メカニズムはプジョー308とほぼ同じになったわけだが、乗ってみると、そのフィーリングがまったく異なることに驚かされた。

試乗したのは、5ドア 1.6T エクスクルーシブ。1.6L直噴ターボとAL4型4速ATを組み合わせたシリーズのメイン車種だ。

画像: 今回の注目点はエンジンラインアップの変更。従来のシトロエン製の2L/1.6Lを、PSAプジョーシトロエングループとBMWグループ共同開発による1.6L直噴ターボ/1.6Lに変更。新世代エンジンで燃費とCO2排出量を削減しながら、パワフルで滑らかな走りを実現している。

今回の注目点はエンジンラインアップの変更。従来のシトロエン製の2L/1.6Lを、PSAプジョーシトロエングループとBMWグループ共同開発による1.6L直噴ターボ/1.6Lに変更。新世代エンジンで燃費とCO2排出量を削減しながら、パワフルで滑らかな走りを実現している。

プジョー308がたっぷりとしたサスペンションストロークを武器にコーナーでじわりとよく粘り、路面の悪い所ではふんわりと衝撃を吸収する感じとすれば、シトロエンC4はこともなげにコーナーをクリアするといった具合。実際はかなりロールしているようだが、じんわりと粘るでもなく、運転者にロールをほとんど感じさせない。拍子抜けするほど、あっさりとしていて、ソフトな乗り心地だ。

同じメカニズムでありながら、どうしてこんな走り味になるのか不思議になる。通常のコイルスプリングによるサスペンションだが、まるでハイドロのようなフィーリングだ。

かつてのシトロエンをよく知る人は、最近のシトロエンは毒がなくなったという。「ちょっと変わっているからシトロエンなのであって、普通のシトロエンなんて」という人もいる。たしかに以前ほどの強烈なクセはないかもしれないが、今でも十分に個性的だ。路面からの情報に乏しいわけではないが、まるで魔法の絨毯に乗っているかのような感覚、「卵が割れない」というソフトな乗り心地は健在だ。

エンジンの変更は大成功だろう。1.6L直噴ターボは緻密な回転フィールがあって軽快。C4の軽やかなドライブフィールに合っている。C4のために開発したものではないが、ちゃんとシトロエンらしく仕上がっているし、燃費の向上が期待できるのもうれしいところだ。

シトロエンというと、素っ気ないエンジンフィールがどこか頼りなく、しかしそれでいてスピードメーターを見ると結構な速度が出ているということも多い。エンジンにこだわる様子を見せず、加速感覚がないのに、きっちりと速いのだ。エンジンの存在を強く感じさせないのが特徴であり、また美点であると言ってもいい。

シトロエンの魅力のひとつが前衛的であることだとすれば、インテリアはまさにそれだ。パノラミックサンルーフによる異次元の室内空間も、なんとも不思議な開放感を醸し出している。また、アルカンターラとベロアのコンビとなるベージュのインテリアもいい雰囲気で、外装色のルージュルシフェールとよく合っている。ただ、シトロエンC4の本当の良さがわかるのは、もっと走り込んでから。この先にもっと深い味わいがありそうだ。(文:Motor Magazine編集部 松本雅弘/写真:永元秀和)

画像: 前衛的なインパネはさらに進化。センターメーターのデザインを見やすいものに変更している。

前衛的なインパネはさらに進化。センターメーターのデザインを見やすいものに変更している。

シトロエン C4 5ドア 1.6Tエクスクルーシブ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4295×1775×1480mm
●ホイールベース:2610mm
●車両重量:1340kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:103kW(140ps)/5800rpm
●最大トルク:240Nm/1400-3500rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●10・15モード燃費:10.5km/L
●タイヤサイズ:205/50ZR17
●車両価格:324万円(2009年当時)

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