現在はディスクブレーキが広く使われているが、昭和のクルマではドラムブレーキが当たり前だった。4輪ドラムの時代もあったが、多くはリアブレーキにリーディングトレーリング式が使われてきた。

ドラムブレーキでもリーディングトレーリングは、後輪用として健在

クルマのブレーキシステムには大きく分けてディスクブレーキとドラムブレーキがある。現在は4輪ディスクブレーキを採用するモデルが大半を占めるようになってきたが、過去の乗用車は4輪ドラムブレーキの時代を経てフロントディスク/リアドラムという時代が続いてきた。そしてリアドラムはまだまだ健在なシステムだ。

画像1: 「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載

「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載

ドラムブレーキは、タイヤと一緒に回転するドラムと、ブレーキシューとホイールシリンダーから構成されている。ドラム以外はサスペンション側となるバックプレートに固定されており回転はしない。ドライバーがブレーキペダルを踏み込むことによってホイールシリンダー内にブレーキ液圧を伝え、シリンダーの左右からピストンが押し出されて制動力を発生させるシステムだ。ブレーキシューには、ディスクブレーキで言うところのパッドにあたる「ライニング」が貼り付けられている。

ドラムブレーキはディスクブレーキに比べると、ブレーキシューの圧着面積が広いために強い制動力を得られることが特徴だ。さらにブレーキシューに支点があるために、その反対側(非固定側)が引っ張られることによって、ブレーキの倍力効果を期待できることもある。

画像2: 「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載

「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載

画像: 写真はリーディングトレーリング式のドラムブレーキの内部。上にホイールシリンダーが見える。前後のライニングの下側に支点があり、前進方向では右側のリーディングシューに倍力効果が発生する。

写真はリーディングトレーリング式のドラムブレーキの内部。上にホイールシリンダーが見える。前後のライニングの下側に支点があり、前進方向では右側のリーディングシューに倍力効果が発生する。

ドラムブレーキには大きく分けてツーリーディング式とリーディングトレーリング式となる。とくにフロントに採用される場合には主にツーリーディング式が主だった。これはブレーキング時に2つのブレーキシューを進行方向へ引っ張られるために大きな制動力を得られる特徴を持つ。しかし、後退時は支点によって固定されてしまうため、シューによる倍力効果を得られず十分な制動力も得られない。

画像: EP71スターレットのリアブレーキはリーディングトレーリング式。ジムカーナなどではサイドブレーキターンなどが気持ちよくできる制動力を発生した。

EP71スターレットのリアブレーキはリーディングトレーリング式。ジムカーナなどではサイドブレーキターンなどが気持ちよくできる制動力を発生した。

リアに用いられる場合にはリーディングトレーリング式が用いられる。これは支点がシューの下側にあるリーディングシューとトレーリングシューによって構成されている。回転(進行)方向に対する制動力はリーディングシュー側が主に受け持つために、絶対的な効きはツーリーディングに劣るが、バックの際はトレーリングシューが効くために、リアに用いられる。

ドラムブレーキは絶対的な効きだけを比較すればディスクブレーキよりも優れる。とくにジムカーナ競技でサイドブレーキターンをする場合に重宝する。しかし、コントロール性や密閉された機構となるために熱を持ちやすくベーパーロックやフェード現象を起こしやすいというデメリットがある。そのため、ディスクブレーキが普及するにつれメインの機構から外れていった。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治)

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