2021年9月5日、ザントフォールト・サーキットで開催されたF1第13戦オランダGPで、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが母国GP優勝を飾った。ポールポジションから危なげのないレース運びでの快勝だったが、実はその戦いは「メルセデスのプレッシャーを受け、簡単ではなかった」(フェルスタッペン)という。そのレースを振り返ってみよう。

次々と揺さぶりをかけてくるメルセデスに孤軍奮闘

ザントフォールトはオーバーテイクの難しいサーキットと言われ、予選でポールポジションを獲得したフェルスタッペンはまず大きなアドバンテージを手に入れていた。しかもスタートダッシュに定評のあるフェルスタッペンにとって、1コーナーまでの距離が短いコースで主導権を握るのは難しいことではなかった。

レース前の予想では予選2番手のルイス・ハミルトン(メルセデス)との一騎討ちになるのではないかと言われていたが、問題は3番グリッドにいるハミルトンのチームメイト、バルテリ・ボッタスだった。

一方でフェルスタッペンのチームメイト、セルジオ・ペレスは予選で16番手に沈んだ上に新しいパワーユニットのコンポーネンツを投入してピットスタートとなっていた。つまりそれは、フェルスタッペンが「1対2」の戦いを強いられることを意味していた。

案の定、会心のスタートを決めてレースの主導権を握ったフェルスタッペン。これに対して激しく応戦するメルセデスの作戦は、ハミルトンをフェルスタッペンの前に送り出すことだった。まずハミルトンをピットに入れてアンダーカットを仕掛ける一方で、ボッタスをステイアウトさせてコース上でブロックする巧妙な作戦に出る。しかし、フェルスタッペンは1回目のピットストップ後もハミルトンの先行を許さず、前を塞ぐボッタスをコース上で難なくオーバーテイク。ライバル2台による作戦を1台で凌いでみせたのだ。

2回目のピットストップでも、フェルスタッペンはハミルトンにアンダーカットを許すことなく首位のままキープ。ハミルトンは優勝を諦めて最速ラップ狙いで3回目のタイヤ交換するしかなかった。

画像: 1回目のタイヤ交換ではステイアウトしていたボッタス(右)が立ちはだかる。これでハミルトン(後)が急接近してきたが、追いつかれるまでにボッタスをパス。

1回目のタイヤ交換ではステイアウトしていたボッタス(右)が立ちはだかる。これでハミルトン(後)が急接近してきたが、追いつかれるまでにボッタスをパス。

フェルスタッペンにとって幸運だったのは、セーフティカーも出動するような大きなアクシデントによりレースが台無しにならなかったことだ。今季7勝目をあげたフェルスタッペンはレース後、次のように語っている。

「ホームコースで勝利できたことは本当に素晴らしいことですし、ドライバーズチャンピオンシップでのリードもとてもいい気分です。レースウイークへ入るときには期待がとても高かったので、それを満たすのは決して簡単ではありませんでしたが、観衆の皆さんはとてつもない雰囲気だったので、ここで勝ててとてもうれしいです。レースはかなりタフでした。ルイス(ハミルトン)がすごくプレッシャーをかけてきましたし、メルセデスは2台ともとてもいいペースでしたが、必要な時に確実に3秒の差を確保できていたことが、とても重要だったと思います。チーム全体のパフォーマンスにすごく満足しています。正しいタイミングでピットインして、レースをしっかりとマネージすることができました。このコースでの72ラップはとても面白かったですし、これだけのファンの前なら尚更です。レース中ずっと凄まじい歓声で、これまでこんな経験をしたことはありません。今夜は自宅に帰りますが、モンツァはすぐですし、チャンピオンシップ争いは僅差なので、最高のパフォーマンスを発揮したいと思います」

画像: オランダGPの表彰台。フェルスタッペンの優勝は今季7度目。フェルスタッペンとハミルトンの戦いはまだまだ続く。

オランダGPの表彰台。フェルスタッペンの優勝は今季7度目。フェルスタッペンとハミルトンの戦いはまだまだ続く。

ホンダ勢ではガスリー はフェラーリを相手に堂々の4位

ピットレーンスタートとなったペレスは、フェルスタッペンを援護することはできなかったものの、素晴らしいレースを見せた。最後尾からオーバーテイクの難しいサーキットでいくつもの追い抜きを見せて8位に入賞。ペレスはレース後、「終盤にランド(ノリス)と接触したのは残念で、マシンの右側に大きなダメージを負ってしまいました。彼に僕が見えなかったとは思いませんし、十分なスペースが残されていなかったので、レーシングインシデントだと考えています。そこからは大きくグリップが低下しましたが、それがなければ6位まで狙えたはずです」と語っている。

アルファタウリ・ホンダはどうだったのか。4番手からスタートしたピエール・ガスリー は、フェラーリの2台を相手に素晴らしいパフォーマンスで周回を重ねて4位入賞。一方、15番手からスタートした角田裕毅はパワーユニットのデータに異常が見られたためにリタイアを選択している。

画像: このところ好調なガスリー。予選4番手、決勝4位は見事。

このところ好調なガスリー。予選4番手、決勝4位は見事。

ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは「フェルスタッペン選手の母国GPということで、大きなプレッシャーを感じながらのレースでしたが、優勝を飾れてホッとしました。我々Hondaにとっては一度きりのオランダGPになってしまいましたが、皆さんに喜んでもらえる結果を出せたことと、その温かい大声援は我々の思い出のひとつになりました。来週はイタリアGP、またその後もまだまだシーズンは続きますので、ここからも2つのチームとともにプッシュを続けていきます」とコメント。

タイヤを供給するピレリは「レースでは3つのコンパウンドすべてが重要な役割を果たし、さまざまな戦略が見られました。レッドブルのフェルスタッペンは、3つのコンパウンドすべてを完璧に使用して優勝を飾りました。一方、2位でフィニッシュしたメルセデスのハミルトンは、ソフトタイヤでスタートして、ミディアムタイヤで2スティントを走り、レースの最後に予定外の3番目のストップを追加して、ソフトタイヤでファステストラップポイントを獲得しました。中団の第2グループは1ストップを選択、レッドブルのペレスは、ピットレーンからハードタイヤでスタート、ミディアム、ソフトと繋いで8位でフィニッシュしました。前日と比べて温暖な気候でしたが、タイヤの劣化は想定通りで、非常にエキサイティングなレースになりました」と分析している。

画像: オランダGPのタイヤ戦略。トップ3が2ストップを選択したが、1ストップのドライバーが多かった。

オランダGPのタイヤ戦略。トップ3が2ストップを選択したが、1ストップのドライバーが多かった。

次戦第14戦イタリアGPは、2020年にガスリーが初優勝を飾った、エキサイティングな超高速グランプリ。イタリアGPは9月10日、ミラノ近郊のモンツァ・サーキットで開幕する。

2021年F1第13戦オランダGP決勝 結果

1位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)72周
2位 44 L.ハミルトン(メルセデス)+20.932s
3位 77 V.ボッタス(メルセデス)+56.460s
4位 10 P.ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)+1周
5位 16 C.ルクレール(フェラーリ)+1周
6位 14 F.アロンソ(アルピーヌ・ルノー)+1周
7位 55 C.サインツ(フェラーリ)+1周
8位 11 S.ペレス(レッドブル・ホンダ)+1周
9位 31 E.オコン (アルピーヌ・ルノー) +1周
10位 4 L.ノリス(マクラーレン・メル セデス)+1周
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リタイア 22 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

2021年F1ドライバーズランキング(第13戦終了時)

1位 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)224.5
2位 L.ハミルトン(メルセデス)221.5
3位 V.ボッタス(メルセデス)123
4位 L.ノリス(マクラーレン・メル セデス)114
5位 S.ペレス(レッドブル・ホンダ)108
6位 C.ルクレール(フェラーリ)92
7位 C.サインツ(フェラーリ)89.5
8位 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)66
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13位 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)18

2021年コンストラクターズランキング(第13戦終了時)

1位 メルセデス 344.5
2位 レッドブル・ホンダ 332.5
3位 フェラーリ 181.5
4位 マクラーレン・メルセデス 170
5位 アルピーヌ・ルノー 90
6位 アルファタウリ・ホンダ 84

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