2021年9月7日、ポルシェAGが「IAA モビリティ 2021(ドイツ・ミュンヘンで開催)」でコンセプトカー「ミッションR」を発表した。最先端のテクノロジーと天然繊維強化プラスチックなどの持続可能な素材を融合した電動カスタマーレーシングのコンセプトで、ポルシェが持つモータースポーツへの情熱があふれたモデルとなっている。

レースモードで680ps、予選モードでは1088psを発生

31年前にポルシェカレラカップが始まって以来、カスタマーレーシングカーはスポーツカーメーカーであるポルシェにとって重要なジャンルであり、また4400台以上のカップカーが販売されるなどビジネスとしても大きな柱となっている。

今回発表されたコンセプトカー「ミッションR」は、カスタマーレーシングの電動化に向けての提案であり、フル電動マシンによるワンメイクシリーズ開催に向けての指標として注目される。

フル電動レーシングカーであるミッションRは、新開発の2つの電気モーターを搭載。フロントアクスルに最大で320kW(435ps)、リアアクスルに480kW(653ps)のパワーを供給する。

画像: コンセプトカー「ミッションR」は2つのモーターを搭載するフル電動レーシングカーで、全高は1190mmと極めて低い。

コンセプトカー「ミッションR」は2つのモーターを搭載するフル電動レーシングカーで、全高は1190mmと極めて低い。

最高出力はレースモードで500kW(680ps)を発生し、予選モードでは800kW(1088ps)に達する。予選モードでは静止状態から100km/hまで2.5秒未満で加速し、最高速度は300km/hを超え、サーキットでは現行のポルシェ911 GT3カップと同じラップタイムで周回するという。

ダイレクトオイルクーリングを装備したバッテリーセルは約80kWhの容量を持ち、革新的な回生システムによって熱によるバッテリーの出力低下を抑えてパワーを持続する。

また、高度な900Vテクノロジーと充電システムによって、バッテリー残量5%からわずか15分で80%に充電することができる(最大340kWで充電することが可能)。

デザインも進歩的で、全長は4326mmと718ケイマンよりもわずかに短く、全幅はワイドな1990mmで、全高は1190mmと極めて低くなっている。

ボディにはノーズとリアウイングにドラッグリダクションシステム(DRS)を備えたポルシェアクティブエアロダイナミクス(PAA)を装備。エクソスケルトン(exoskeleton)と名付けられた新開発のカーボンルーフは、ドライバーの保護するケージと軽量なルーフパネルを組み合わた安全構造としている。

画像: フロントとリアにドラッグリダクションシステム(DRS)を装備。リアは調整可能な2セクションリアウイングで構成される。

フロントとリアにドラッグリダクションシステム(DRS)を装備。リアは調整可能な2セクションリアウイングで構成される。

また持続可能性にも重点が置かれ、主に天然繊維強化プラスチック(NFRP)でできたエコロジー素材は、フロントスポイラーリップ、ディフューザー、サイドスカートをはじめ、インテリアドアパネル、リアバルクヘッド、シートなどインテリアにも幅広く使用されている。

インパネのディスプレイにはレース中の関連データが表示され、ステアリングコラム上のモニターにはサイドミラーカメラとセンタールームミラーカメラからの画像が表示される。車内にある他の多数のカメラを使用してエキサイティングなシーンを映し出すこともできる。

ポルシェは、すでにミッションE(2015年)とミッションEクロスツーリスモ(2018年)によって示したフル電動スポーツカーのコンセプトを、タイカン(2019年)とタイカンクロスツーリスモ(2021年)で具現化している。このミッションRではフル電動のカスタマーレーシングのコンセプトを示し、近い将来、実現していくことになるだろう。

ポルシェAGのオリバー・ブルーメ取締役会会長は「ポルシェは夢を実現する人々のためのブランドです。これはモータースポーツにも当てはまります。私達はサーキットで革新的な強さを体験し、新しい道を追求する勇気を示し、オーナーにスポーツカー然とした性能で喜びを与えます。フォーミュラE世界選手権への参戦に加えて、私達はここでE-モビリティの次の大きな一歩を踏み出します。このコンセプトモデルは、フル電動カスタマーモータースポーツに対する当社の展望を示します。ミッションRには、ポルシェを強くする全てのもの、つまり性能、デザイン、持続可能性が具現化されています」と語っている。

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