電動機構を持たない、今や希少な大排気量のV8自然吸気エンジンという伝統を踏襲した第8世代のシボレー コルベット。一方でMR化や8速DCTの初採用など先進的な面も持つ、新旧のテクノロジーを融合した存在でもある。(Motor Magazine2021年11月号より)

心臓部は伝統のスモールブロックV8 OHV

1953年のデビューから継承してきたFRレイアウトからミッドシップへ転換したことで大きな話題となっているC8コルベット。さらなるパフォーマンスアップを図るにはFRでは限界があり、またル マン時間などレースでライバルに打ち勝つにも必須だったのだろう。

LMGTEの常勝マシン、フェラーリ488GTEはもちろんのこと、あのRRが代名詞のポルシェ911でさえレース用のRSRだけは2017年からミッドシップ化しているのである。それに比べれば、ロードカーとレーシングカーでミッドシップの新しいアーキテクチャーを共有し、並行して開発されたC8コルベットのほうが筋は通っていると言える。アメリカ国内でのライバルであるフォードGTがミッドシップで高い評価を得ていることも強く意識しているのだろう。

画像: 排気口は左右2本出し。その上にはボディサイドのエアインテークから取り込まれ温まった空気を抜くための排熱口が設けられている。

排気口は左右2本出し。その上にはボディサイドのエアインテークから取り込まれ温まった空気を抜くための排熱口が設けられている。

ラインナップはベーシックなクーペ2LT、装備が充実したクーペ3LT、そして今回の試乗したコンバーチブルの3種類となる。車体は先代C7から始まったアルミニウム構造で、もともと軽量だったので従来比では同等の車両重量。車体中央に配置されるエンジンはV8の次世代型だ。

アメリカで人気の高いV8だが、コルベットは伝統的にスモールブロックのOHVを採用している。機構的にはOHCやDOHCの方が進んでいるが重心が高くなり、運動性能に影響を与えるのを嫌ってOHVにこだわり続けている。

スモールブロックとは気筒間のピッチを狭くするなどして、排気量の割にはエンジン全体の容積がコンパクトであることを示している。これに対してピックアップトラックなどに搭載されるV8はビッグブロックと呼ばれるものもあり、やはりOHVが主流だが、これは運動性能追求よりもメンテナンス性を考えてのことだ。

画像: 今や貴重な自然吸気V8OHVエンジン。排気量は6.2Lでこれがリアミッドに縦置きされる。

今や貴重な自然吸気V8OHVエンジン。排気量は6.2Lでこれがリアミッドに縦置きされる。

排気量は先代のC7コルベットと同じ6.2Lだがミッドシップ化にあたって潤滑系は大きくアップデートされた。ドライサンプオイルシステムと3基のスカベンジポンプが初採用され、より低重心が追求された。また、ヨー慣性モーメント低減によって高まるコーナリングGに対しても強みがあり、1Gを超える横方向加速度に耐えられるという。

C7ではLT1と呼ばれていたエンジンだが、C8用はLT2を名乗る。セグメント唯一のNAで、パワーとトルクはC7の466ps/630Nmから502ps/637Nmへとスープアップ。組み合わされるトランスミッションがATではなくDCTとなったのもトピックだ。

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