この特集の中では、もっとも排気量が小さい直4エンジンだが、「小さい=つまらない」は当たらない。コンパクトなボディに搭載する直4だからこそ、自分でコントロールする歓びは大きくなるのだ。(Motor Magazine 2021年11月号より)

最高出力421psを富士スピードウェイで試す

私が社会人となって初めて買ったクルマは、日産のS13シルビアK’sだった。搭載されていたエンジンはSR20DETで、2L直4ターボは最高出力205psを発生。当時(1992年)、リッターあたり100psを超えるエンジンは優秀とされていた時代でもあって、そのパワーはまだ運転に自信がなかった自分にとってはちょっと持て余し気味だった。

しかし、FR+5速MTを駆使してワインディング路で走らせると、リアがちょっと流れただけでもドキドキしたものだ。それはそれはとても楽しくて、夜通し走っていたことがあったと記憶している。

昔の思い出話が少し長くなってしまったが、今回、直4エンジンの原稿を書くことになって、このことを振り返らずにはいられなかった。というのも、ここで紹介するメルセデスAMG A45S 4マティック+(以下、A45)の最高出力は、なんと421ps。約20年前のシルビアと比較するのはなんとも不適切かもしれないが、ほぼ同じ排気量で2倍以上のパワーを叩き出すということになる。これは私にとって実に感慨深い。では、このモンスターマシンに試乗した時の印象を報告しよう。

画像: メルセデスAMG A 45 S 4マティック+。鋭いスタートダッシュがドライバーの走り心を刺激する。

メルセデスAMG A 45 S 4マティック+。鋭いスタートダッシュがドライバーの走り心を刺激する。

A45と初めて対面したのは、富士スピードウェイのパドックだった。ベースはメルセデス・ベンツのコンパクトカーであるAクラスだが、その試乗車は並々ならぬ「威圧感」を放っていた。いや、クルマが威圧していたのではなく、ただ私が、400psオーバーのクルマに乗るという緊張感から威圧されていただけなのかもしれない。

この2L直4ターボエンジン「M139」は、コンプレッサーとタービンのシャフトに、AMG GT4に使われているローラーベアリングを採用。またピストンとシリンダーの間に特許技術のナノスライドのコーティングを施し、極力摩擦を低減するなど、F1にも採用されている技術を投入して、2L 4気筒エンジンとしては世界最高の最高出力421ps、最大トルク500Nmを発生する。

いよいよコースインするが、6つあるドライブモードは、もっとも過激(!?)な「レース」をチョイスする。まずは注目の加速だが、野太いエキゾーストノートと共にシートバックに背中をグッと押しつけられ、想像どおりの鋭いスタートダッシュを見せる。しかし、低速域からしっかりとトルクも出ていて、未完成のチューニングエンジンのような扱いにくさはない。

コーナーでは最初、「アンダーステアっぽいかな・・・」と思ったがこれは走らせ方が悪かったようだ。クリッピングポイントに着くちょっと前からアクセルペダルを踏み込むようにすると、4マティック+はグイっと曲がりながら加速してくれることがわかった。

ちなみに富士スピードウェイでの最高速は、1コーナー手前の看板で260km/hをマークした。まさに世界最強の実力を証明してみせたと言っていい結果だ。

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