マルチリンク化されたリアサスペンション
エクステリアは、より堂々、より洗練、より迫力あるフォルムだ。歴代モデルは唯我独尊なイメージがあったが、新型は他のモデルとの共通性も高められている。
インテリアは、キャデラックの中でももっとも先進性の高いインパネまわりが特徴だ。メーターと左右のディスプレイを合わせて38インチの巨大ディスプレイは業界初の湾曲型で、4Kテレビの2倍という高精細度を誇る。最初は使いこなせるか不安だったが、操作性も高い上にメニュー階層もシンプルなので、すぐに慣れた。
ボディサイズは先代よりアップされて全長は5400mm、全幅は2065mm。左ハンドル仕様なので日本の道路環境で注意が必要となるが、見晴らしの良さと見切りの良さから運転は想像するよりも楽だ。室内は、2列目は当然として3列目、そしてラゲッジルームも、十分以上の広さである。
ディスプレイサイズの大きさもわかるインパネまわり。左ハンドル仕様のみだが運転そのものは容易。
エンジンは6.2Lの自然吸気V8に最新型の10速ATという組み合わせ。シャシはボディオンフレーム構造を踏襲するが、リアサスペンションはついに独立懸架式（マルチリンク）が採用されている。
大排気量NAエンジンならではのドーピング感がない図太いトルクは、燃費は別として電動化の助けは必要ないという印象。 10速化されたATも、エンジンの実力を信じて出しゃばらないのがいい。そのフットワークは巨体ながらも大味な印象はなく、またボディとフレームが別々の動きをすることもほぼない。
操作に対するクルマの動きも2.5トンを超えるフレーム式SUVであることを考えれば優秀だ。さらに22インチタイヤを履きながらもドタバタ感が少ないのは、最新版マグネティックライドの効果も大きいはず、と実感できた。
このように走りはトラック系から乗用車系にかなり近づいているが、各部に心地良いダルさを持つ穏やかな特性は日本車や欧州車とは違うアメリカ車の「味」だろう。誰にでも勧められるクルマではない。しかし個人的には「高級SUVとは何ぞや？」に対する理想形の回答のひとつだと思っている。（文：山本シンヤ／写真：村西一海）
自然吸気で電気モーターのアシストも持たない純ガソリンエンジン。6.2Lの大排気量で実に力強い。
キャデラック エスカレード スポーツ主要諸元
●全長×全幅×全高：5400×2065×1930mm
●ホイールベース：3060mm
●車両重量：2740kg
●エンジン：V8 OHV
●総排気量：6156cc
●最高出力：306kW（416ps）／5800rpm
●最大トルク：624Nm／4000rpm
●トランスミッション：10速AT
●駆動方式：4WD
●燃料・タンク容量：プレミアム・90L
●タイヤサイズ：275／50R22
●車両価格（税込）：1520万円
