日本では2021年5月から発売が開始された新型A3スポーツバックとA3セダンのモデルラインナップ。以前に高性能版モデルとなるS3スポーツバックとS3セダンについてお届けしたが、こちらでは1Lターボエンジンを搭載したA3 30TFSIアドバンスドをベースとする特別仕様車で、その真価を探ってみた。(Motor Magazine2021年12月号より)

大胆な48Vマイルドハイブリッドシステムの介入

「時代が音を立てて変わった」。新型A3のスタイリングを見ていると、そんな感慨を覚える。端的にその印象を表現すれば、「ダイナミックで華やか」となる。

たとえば、ボディサイドの抑揚はこのクラスとは思えないほど彫りが深く、光の当たり方によって大きく表情を変える。1980年に登場したビッグクワトロを彷彿とさせるブリスターフェンダーのような前後タイヤハウスの張り出し方も、力強い走りを連想させる。

それとともに印象的なのがフロントマスクの変貌ぶりである。歴代A3のフロントまわりといえば水平と垂直を基調としたラインで構成され、端正で落ち着きのあるデザインが特徴だった。ところが新型は、幅広になったシングルフレームグリルやその両サイドのエアインテークに斜めのラインを大胆に採り入れており、躍動感や未来感といった表現がしっくりとくる面持ちとなった。

ハードウエア的には先代と同じMQBプラットフォームを基本とするものの1L 直列3気筒ターボエンジン搭載の30TFSI、そして間もなく導入が開始される2L 直列4気筒ターボエンジン搭載の40TFSIクワトロの2本立てで、この他に高性能モデルのS3が用意される。

画像: アウディA3スポーツバック ファーストエディション。軽快そのもののハンドリングが嬉しい。

アウディA3スポーツバック ファーストエディション。軽快そのもののハンドリングが嬉しい。

なお今回の取材車は、A3スポーツバックとA3セダンのどちらも30TFSIアドバンスドをベースに充実した装備が与えられた、日本導入を記念する「ファーストエディション」と呼ばれる限定モデル。スポーツバックは375台、セダンは125台が用意されたうちのそれぞれ1台だ。

ちなみに2Lターボエンジンを搭載する40TFSIクワトロとは48Vマイルドハイブリッドシステムを装備すること、駆動方式が4WDではなくFFであること、リアサスペンションが4リンク式ではなくトーションビーム式となることが機構上での主な相違点だ。

価格設定も新型A3の魅力として挙げていいだろう。今回の試乗車はファーストエディションのためにスポーツバックで453万円、セダンは472万円と値が張るが、標準グレードならばそれぞれ319万円、338万円である。

今回は、フォルクスワーゲン ゴルフとホンダ シビックの2台を引き連れて、新型A3の実力を検証してみることとした。

画像: アウディA3スポーツバック&セダンとの比較にフォルクスワーゲン ゴルフとホンダ シビックを同行。(左からゴルフ、シビック、A3スポーツバック、A3セダン)

アウディA3スポーツバック&セダンとの比較にフォルクスワーゲン ゴルフとホンダ シビックを同行。(左からゴルフ、シビック、A3スポーツバック、A3セダン)

どちらのA3ファーストエディション(=30TFSI)に試乗しても最初に驚くのは、48Vマイルドハイブリッドシステムの介入が大胆なことにある。ヌルッと動き出すその感触は、まぎれもなく電気由来の力だ。しかもその段階では、エンジンよりもモーターの方がずっと大きな駆動力を発揮しているように思えるほど、電気の力の比率を強く感じる。これはハイブリッドというより、むしろピュアEVに近いくらいの感触だ。

車速を上げていくと、モーターとエンジンの感触の比率は徐々に逆転する。2000〜4000rpmでは3気筒エンジンが思いのほか力強いトルクを発揮してくれるが、5000rpmを超えるとさすがに息苦しさが感じられる。

もっとも、排気量を考えればそれも当然のこと。むしろ実用域では1Lエンジンだとは思えない軽快な走りを実現するとともに、高速道路やワインディングロードでもどかしさを感じさせないその優れた動力性能を褒め称えたいくらいに、パワープラントとしてのまとまりは良好。世界のダウンサイジングシーンを牽引してきたフォルクスワーゲン アウディグループの面目躍如、といったところだ。

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