一見奇抜なデザインだったり、そこまでしなくてもと思うほどの走行性能だったり、使い切れないほど多機能だったり・・・こうした強い個性を持つクルマはこれまで数え切れないほど登場し、数年で消えていくこともあった。ここでは数ある星の中から1990年代〜2000年代に登場した「個性が強すぎる」国産車にスポットライトを当てて解説していこう。今回は、1997年4月に登場したいすゞのクロスオーバー「ビークロス」だ。

いすゞ ビークロス(1997年〜1999年)

いすゞといえば今やトラック専門メーカーのイメージだが、かつて1960年代あたりまではトヨタ、プリンスと並んで「3大乗用車メーカー」と呼ばれていた。そんな中、1967年にはユニキャブをリリースする。カッコはジープっぽくフルオープンを可能としながら、その実、フツーのFRだったりした。だが、こんな「なんちゃって」は昔から人気で、工事関係者に加え、まだマイナーだった湘南のサーファー族に受けたりしていたのだ。

その後、1980年代になるとクロカン4WDのブームが到来する。いすゞは商用車のロデオを1981年にリリース。その人気を受けて1984年に延長線上となる乗用車のビッグホーンを投入する。この英国車風の佇まいも好評を得ることになる。その勢いを駆って遊び心を加味したのが1989年のミュー&ミューウィザードで、こちらも多くのファンを取り込んだ。

画像: そのスタイリングは、21世紀に入って20年過ぎたいま見ても斬新だ。海外での評判は高かったのだが…。

そのスタイリングは、21世紀に入って20年過ぎたいま見ても斬新だ。海外での評判は高かったのだが…。

そんな流れの中、1993年の東京モーターショーに登場したのが「ヴィークロス」だった。この時点ではジェミニ4WDをベースとした2ドアクーペのクロスオーバーだった。デザインしたのは当時、いすゞのデザインを牽引していた中村史郎氏。彼が手掛けたFFジェミニやアスカにはG.ジウジアーロ的なヨーロピアンテイストが感じられた。その後、1999年に日産にヘッドハンティングされ、マーチやキューブなどの成功作を手がけている。

1997年4月に車名を「ビークロス」として市販される。「悪路も走破可能な全天候型スポーツカー」を謳っていた。そのシャシはセパレートフレームを持ったビッグホーンのショート版だったが、見事だったのがプロトタイプを忠実に具現化したスタイリングだった。かつての117クーペピアッツァから続く、いすゞの真面目なクルマ造りである。フロントからリアにかけて曲線を用いながらも抑揚を持たせることで躍動感を演出して、止まっていても動きを感じさせていたのだ。このデザインの良さはその後、世界的に大いに評価されることとなる。

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