2021年12月10日、スズキは軽自動車「アルト」のフルモデルチェンジを発表した。今回のモデルで9代目となるアルトだが、これを機にアルトを軸にした軽自動車の流れをふり返ってみたい。(タイトル画像は新型アルト オンライン発表会での鈴木俊宏社長)

ハッチバックなのに「セダンタイプ」?

アルトのような、いわゆる2ボックス型をしたハッチバックタイプの軽乗用車は、なぜか「セダンタイプ」と呼ばれている。ふつうはセダンというとトランクのある3ボックス型のクルマを思い浮かべるだろう。だが、全国軽自動車協会連合会(全軽自協)では軽乗用車の分類を、全高が1550mm以下のクルマは「セダンタイプ」、1550mm超は「ミニバンタイプ」、1750mm超は「キャブワゴン」、それ以外に「スポーツカー」と「オフロードタイプ」をカテゴライズしている。

画像: 1979年に発売されて大ヒット作となった、初代アルト。

1979年に発売されて大ヒット作となった、初代アルト。

軽自動車が日本の自動車市場に普及し始めたのは、1958年(昭和33年)にスバル 360が登場してからだろう。そして昭和も40年代に入ると、ホンダ N360をはじめ、スズキ フロンテやダイハツ フェロー、三菱 ミニカなど、さまざまなメーカーから多くのモデルが登場し、ホンダ Zミニカ スキッパーといった軽自動車のスペシャルティ的なモデルもラインナップされる。駆動方式も、FFやRR、そしてFRもあり、まだFFは主流ではなかった。

1976年、排ガス対策で出力の落ちた軽自動車を救済すべく、排気量は360ccから550ccに引き上げられた。このころから軽自動車はFF2ボックス型が主流になる。そんな時代に初代のアルトが誕生するが、これについてはあとで語ろう。当時、登録車でブームとなったターボ化の波は軽自動車にも押し寄せ、ターボ+4WDといったアグレッシブな三菱のミニカ ダンガンやスズキのアルト ワークスなども登場。このときの最高出力64psという数値が、いまも軽自動車の自主規制値となっている。

1990年、安全対策のため全長の規格が10cm拡大され、それに伴う車重増加に対応させるため、排気量は660ccに拡大された。オートザム(マツダ)AZ-1ホンダ ビートスズキ カプチーノといった、いまもオマージュされている軽スポーツの「ABC」が登場したのも、このころだ。さらに1998年、全長は10cm、全幅も8cm広げられた新規格となった。全長は3.4m以下、全幅は1.48m以下、全高は2.0m以下という規格は、現在まで継続されている。

軽自動車の主流はボンネットバンからハイトワゴンへ

画像: 1993年に登場し、軽自動車の新たなジャンルを切り拓いた初代ワゴンR。

1993年に登場し、軽自動車の新たなジャンルを切り拓いた初代ワゴンR。

さて、1979年に誕生した初代アルトは、軽自動車本来の特長である経済性と実用性を徹底的に追求して、快適・機敏・安全に走行できる軽ボンネットバン(当時のアルトは商用車登録だったので、こう呼ばれた)として登場し、大ヒット商品となる。47万円からという車両価格は、当時としてもセンセーショナルなものだった。いまもなお「初代アルトは47万円」と覚えている人も多いくらいなのだから。

税金面で有利だった軽ボンネットバンというアルトの手法に、多くのライバルメーカーも追従する。だが、1989年の税制改正を機に、ブームはフェードアウトしていく。

1993年、スズキはミニバンを小さくしたような、まったく新しいボディタイプの軽自動車「ワゴンR」を登場させる。車高を高くしてヘッドスペースを増やしたトールワゴンは、大ヒット作となる。やがて、さらに車高を高め、後席スライドドアを採用した通称「ハイトワゴン」と呼ばれるモデルが主流となって、いまにいたっている。

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