2021年も魅力的なニューモデルが日本に導入された。それを振り返りながら、2022年に登場を控える輸入車について、本誌筆者陣(飯田裕子、島下泰久、渡辺敏史)と千葉編集長が語り合った。(Motor Magazine 2022年2月号より)

渡辺「2022年はスポーツモデル系の電動化が楽しみ」

千葉編集長(以下、千葉) 2021年で無視できないのがクルマの電動化です。とくにアウディeトロンシリーズやポルシェタイカンが登場し、2022年にはメルセデスからEQシリーズが相次いで導入予定です。みなさんが印象に残ったBEVはありますか。

画像: 千葉知充(Tomomitsu Chiba) 本誌編集長になって6年目となるがとにかく現場主義。時間の許す限り取材や試乗会、イベントなどに出かけてしまう。最近はWebモーターマガジンの編集長も兼任し、SEOやらPVなどという暗号と戦っている。

千葉知充(Tomomitsu Chiba)
本誌編集長になって6年目となるがとにかく現場主義。時間の許す限り取材や試乗会、イベントなどに出かけてしまう。最近はWebモーターマガジンの編集長も兼任し、SEOやらPVなどという暗号と戦っている。

飯田裕子 氏(以下、飯田) eトロンGTはカッコ良く、BEVに乗るきっかけになる気がします。RS eトロンGTはエモーショナルで走り去る姿や音が他にはない、そういう部分も心得たクルマ造りをしているというのが印象的であり、衝撃的でした。タイカンは乗り心地も骨格感もポルシェらしく、ベースが同じでもそれぞれの個性が出ていて面白い。それぞれブランドらしさが表現され、BEVならではの演出が楽しめる面白さがありますね。

画像: 飯田裕子(Yuko Iida) 免許取得後、クルマやドライビングに目覚め、自動車メーカーに勤めながらモータースポーツにも参戦。ユーザーのニーズを汲んだ感性豊かな表現と、わかりやすい評論が持ち味。

飯田裕子(Yuko Iida)
免許取得後、クルマやドライビングに目覚め、自動車メーカーに勤めながらモータースポーツにも参戦。ユーザーのニーズを汲んだ感性豊かな表現と、わかりやすい評論が持ち味。

島下泰久 氏(以下、島下) 姉妹車のタイカンは、もの凄くガッチリしているんだけど、乗っていてちょっと息苦しいような感じもある。ポルシェの乗り味ってもともと凝縮感が高いから、床一面にバッテリーを敷き詰めて、かつアルミボディという素性としてきわめて高剛性になるこのプラットフォームだと、全部が張り過ぎちゃうのかもしれません。eトロンGTはその按配が絶妙で、デザインも走りも、アウディのやりたかったことって、むしろBEVの方が実現しやすかったのかもしれないと思えるほどでしたね。

画像: 島下泰久(Tomohisa Shimashita) 一般誌やウェブ、マスコミも含めてクルマのあり方と魅力、将来への展望などについて精力的に評論活動を続けている。「2022年版 間違いだらけのクルマ選び」(草思社)も発売中。

島下泰久(Tomohisa Shimashita)
一般誌やウェブ、マスコミも含めてクルマのあり方と魅力、将来への展望などについて精力的に評論活動を続けている。「2022年版 間違いだらけのクルマ選び」(草思社)も発売中。

千葉 EQAはいかがですか。

飯田 EQCと違ってAシリーズらしい若々しさを感じました。

島下 小さく軽いクルマだと重さが際立ちます。大きくて重いクルマがもっと大きく重くなると乗り心地などその良さを引き延ばせるけれど、小さなクルマのBEVは簡単じゃないなと思います。でも売れていますよね。他のクルマはみんな少し大きいので、セカンドカーでBEVを買ってみようかと、興味を持つのはEQA以外にないんじゃないですか。

渡辺敏史 氏(以下、渡辺) ハードウエアの存在意義はあるにしても制御系で味わいを変えていける。その恩恵をBEVは受けていくという気がします。それはタイカンとeトロンGTの乗り味の違いで感じました。EQAは近所でよく見ますが、セールスマンがしっかり面倒を見ているのでしょうね。

画像: 渡辺敏史(Toshifumi Watanabe) 国産車、輸入車問わず、最新のスーパーモデルからビンテージカー、中古車、さらには二輪車への深い造詣を背景に独自の洞察力に満ちた素直な評価を備えた評論で幅広く活躍する。

渡辺敏史(Toshifumi Watanabe)
国産車、輸入車問わず、最新のスーパーモデルからビンテージカー、中古車、さらには二輪車への深い造詣を背景に独自の洞察力に満ちた素直な評価を備えた評論で幅広く活躍する。

飯田 ドライブフィーリングだけではなく、ADASのチューニングもしやすいんでしょうね。でもBEVの販売はセールスマンの教育も大変みたいです。電費や航続距離、補助金も理解していないと。

千葉 ディーラーもインポーターも勉強中みたいです。店舗に急速充電器を用意するところもあります。BMWはiXやiX3の本格的な導入を控えてディーラーにポルシェと同じABB製の150kWの急速充電器を設置しますね。

飯田 一般にも解放して欲しいです。

島下 テスラ同様「並ばない高速充電器があります」というのが1パックだから、それを解放しろというのは彼らには意味がない。本当はインフラでそれを考えなくてはいけない。現在の1〜2%の販売シェアなのに高速道路のSAの充電渋滞を見たら、今はちょっとBEVは買えない。欧州も今の5倍に増えたら足りないのは明らかです。日本はそういう意味で先進国なので、こうした問題にいい答えを見つけられるといいなと思います。

飯田 BEVは戸建ての多い郊外では軽自動車に代わって普及が早いのかなと思います。ホンダeはとても良くて、それがたまたまBEVだったけど、ただ私の周囲には充電設備がなく、どう付き合えばいいのか真剣に考えちゃいました。それでも買いたいBEVがたくさん出てきたら面白くなりますね。

渡辺 ガソリンスタンドの少ない郊外では軽のBEVが確実にゲームチェンジするだろうなと思います。そのトリガーを引くのが2022年の日産になるのか否か。

島下 eトロンGTに乗ると欲しくなるけど無理かな。でも次に引っ越ししようと思った時は充電器のある所・・・、そうやって変わって行く人はいるはず。環境とか利便性とかではなく、この手が流行るのはどれだけ面白いかでしょうね。「カッコいい」と、軽BEVのように実用性からと、両方でくるんだろうな。

千葉 BEVの場合、再生エネルギーにも注目しなければいけない。

島下 それは国が動かないといけない。その昔、ボルボが国に緊急自動ブレーキを認めさせたように、自動車が社会を導く力になるなら僕らはうれしいですね。

千葉 PHEVではプジョーとDS、シトロエンの印象はどうでしょうか。同じシステムを使っているのに、それぞれ個性があって違っていて驚きました。

渡辺 先週C5のPHEVに乗りましたが、シトロエンはぜんぜん違いますね。

島下 3つの中では一番の量販ブランドなのに、こんなに個性が強いのかって思います。2022年は久しぶりのCセグメント車になるC4が入りますが、これにはBEVのE‐C4が用意されるはずですよ。

千葉 それにDS9も入れるみたいで、興味深いブランドです。

島下 この3ブランドには輸入車に乗る喜びが濃い。輸入車を買う人は「良くできていますね」だけじゃない、気の利いた何かが欲しいんですから。

画像: アウディA3スポーツバック/A3セダン。セダンとスポーツバックを用意するアウディの代表的モデルA3も新型に。RS3も発表された。

アウディA3スポーツバック/A3セダン。セダンとスポーツバックを用意するアウディの代表的モデルA3も新型に。RS3も発表された。

千葉 ICEに移りますが、アウディのA3はどうでしたか。

渡辺 インターフェイスがゴルフよりも保守的で、物理的なスイッチも残っていていいなと。ゴルフは微妙なタッチが定まらなくて、僕には使いにくかった。

島下 僕は逆で、ベンチマークと言われるクルマが、新しいインターフェイスを入れてきたのは凄いなと思いました。まだ途上ではあるけれど、より直感的な操作をというのは、クルマとしてあるべき方向かなと。走りに関しては1Lが素晴らしい。走り出した瞬間はゴルフなのに柔らか過ぎじゃない?と思ったけれど、乗り心地が良いうえに、ロードホールディングもインフォメーションも完璧。こんなクルマはそうそうない。やっぱりゴルフは今もちゃんとゴルフでしたね。

飯田 ますます進むダウンサイジング化とデジタル化がやっぱり印象的ですね。ビジュアルを使った設定や操作はユーザーへの配慮が感じられ、フォルクスワーゲンなりのデジタルの市民化を一歩進めたと思います。乗り味としては1Lはよく走る。3気筒なのが気になる人もいると思いますが、モーターアシストの恩恵が大きく、良くできているという印象です。ディーゼルはさらにそこにいい意味の重さも加わって、厚みのある加速感や静粛性があり、燃費も良く、ウエルカムです。

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