2009年、アウディR8に5.2L V10エンジンを搭載したハイパフォーマンスモデル「R8 5.2FSI クワトロ」が登場した。V8エンジン搭載のR8 4.2FSI クワトロも高性能スポーツカーとして高い人気を誇ったが、ついにV10エンジンを手に入れたR8はどこまで迫力を増したのか。その性能を試すために用意されたのは富士スピードウェイ本コース。ここでは日本上陸間もなく行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年9月号より)

エンジンの重量増を抑え絶妙なバランスを実現

2007年にデビューしたR8 4.2FSI クワトロはアウディブランドの頂点となるスポーツモデルだが、2009年に登場したR8 5.2FSI クワトロは、それとは別次元の究極のスポーツカーであった。

画像: バンク角90度の5.2L V10エンジンは258kgという重量を実現、4.2L V8と比べてもわずか31kg増に抑えられた。前後の重量配分は44:56となる。

バンク角90度の5.2L V10エンジンは258kgという重量を実現、4.2L V8と比べてもわずか31kg増に抑えられた。前後の重量配分は44:56となる。

4.2L V8エンジン搭載のR8は、ボディやサスペンションにまだ余裕があった。スポーツモデルでありながら神経質なところはなく、アウディA4と同じように動かすことができるほどのゆとりがあった。簡単に言ってしまえば、これは足がエンジンに勝っていたからだろう。それでも競合車としてポルシェ911カレラ4やメルセデス・ベンツSL550、アストンマーティンV8ヴァンテージ、ジャガーXKRといった高性能車たちを見据えていた。

そして、新たに5.2L V10エンジンを搭載したR8 5.2FSI クワトロのパフォーマンスはロードゴーイングカーとしての頂点を極めたと言っていいだろう。0→100km/h加速は3.9秒、トップスピードはなんと316km/hである。アウディの想定する競合車はポルシェ911ターボに格上げされ、そのほかのライバルとしてフェラーリF430、メルセデス・ベンツSL600など、究極のパフォーマンスを持つモデル名が並ぶ。

ちなみにV10エンジンのパフォーマンスは、525ps/8000rpm、530Nm /6500rpm。V8モデル比では、最高出力が105ps、最大トルクは100Nmアップしている。

V10化でも重量増は最小。動的バランスは変わらず卓越している

エクステリアもR8 4.2FSI とは異なり、デザインに迫力が増した。サイドのエアインテークカバーの形状は、より多くの空気を取り込めるよう外側に膨らみ、エッジが利いた形状になった。さらに、アルミホイールも究極モデルに相応しく個性ある10スポークYデザインに変更された。

画像: 撮影用に用意されたR8 5.2FSI クワトロ。試乗車と同じ仕様。R8の駆動力配分はイニシャルで15:85。路面状況に応じて最大30:70までトルクを前後アクスルに最適配分する。

撮影用に用意されたR8 5.2FSI クワトロ。試乗車と同じ仕様。R8の駆動力配分はイニシャルで15:85。路面状況に応じて最大30:70までトルクを前後アクスルに最適配分する。

R8のクワトロシステムは、V8搭載車もV10搭載車も同じだ。イニシャルで15:85という前後トルク配分だが、リアが滑り始めるとビスカスセンターデフが効いて最大30:70まで配分が変わる。クワトロだからといってセンターデフがロックすれば前後のトルク配分が同じになるわけではない。最後までリア駆動を優先しているのだ。

トランスミッションは、デュアルクラッチ式のSトロニックではなく、V8搭載車と同じシングルクラッチ式のシーケンシャル6速の2ペダルであるRトロニックだ。パワーの伝達効率の良さや軽量化などRトロニックの持つメリットを選んだところも、究極のスポーツカーに徹している。

V型10気筒エンジンを搭載したR8の前後の重量配分は44:56を実現した。ミッドシップスポーツカーとしていいバランスを確保している。これには258kgというエンジン重量も貢献している。V8から2気筒増えてもその重量増は約31kgに抑えられているという。

また、パフォーマンスが向上したことによって、ブレーキ性能も引き上げなくてはならない。試乗車にはオプションのセラミックブレーキ装着車を選んだ。このセラミックブレーキは、高速からの急制動能力向上、スチールディスクの4倍の耐摩耗性、同じく50%の重量軽減を実現している。

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