日本のモータリゼーションとともに月刊モーターマガジンは発行を重ね、今号で800号を迎えた。その間、約67年。自動車業界は今、100年に1度という大変革期を迎えている。そこで、この特集では日本を代表するメーカーやインポーターのキーマンにインタビューし、近未来の展望やカーボンニュートラルへの取り組みなどを訊くことにした。訊き手:Motor Magazine編集長 千葉知充(Motor Magazine2022年3月号より)

Wi-Fi機能の活用にいち早く着目したパイオニア/カロッツェリア。サーバーとつながることで可能になるカーナビゲーションの新たな時代の姿、そして2022年に描く将来への展望を、パイオニア株式会社 モビリティ プロダクト カンパニー市販事業統括グループ 商品企画部部長 田原一司 氏に、訊いた。

画像: 【Profile】田原一司 :1991年入社、川越技術研究所R&D部門にてデジタル受信機開発を担当。その後、 Zypr事業推進室、c.Pioneer戦略室、モビリティプロダクトカンパニー技術統括G製品開発部 市販スペシャリストなどを経て、2020年より現職。

【Profile】田原一司 :1991年入社、川越技術研究所R&D部門にてデジタル受信機開発を担当。その後、 Zypr事業推進室、c.Pioneer戦略室、モビリティプロダクトカンパニー技術統括G製品開発部 市販スペシャリストなどを経て、2020年より現職。

Wi-Fi機能の活用で広がる可能性。道案内だけで終わらない時代へ

本誌 千葉知充(以下、MM) SDGsに注目が集まっていますが、カーナビゲーションではどのような取り組みが可能なのでしょうか。

田原一司氏(以下、田原) たとえばパイオニアでは、生産工程の見直しや、部品点数を減らすなどに取り組んでいます。これまでのカーナビゲーション機器は、ハードウエアとして提供できることがすなわちお客さまに提供できる価値のすべてでした。今後は通信を活用する、つまりサーバーにアクセスして機能を実現する形にシフトする必要があると考えています。それにより車載のハードウエアを身軽にすることができ、部品の削減にもつながります。

MM その足がかりとして取り組んだのが、ドコモと提携してデータ通信できるネットワークスティックの採用ですね。

田原 「サイバーナビ」シリーズで採用しています(同梱または別売)。通信の活用への第一歩ですね。2020年に発売した車載用Wi-Fiルーターも同様で、さまざまな製品やサービスと組み合わせることを想定しています。通信機能を活用することで、カーナビゲーション本体の機能や部品を削減することができるようになります。

MM 通信機能を拡充することで、我々が直接得られるメリットは何でしょう。

田原 たとえばサイバーナビで使っている「スーパールート探索」ですね。サーバー上でルート探索をするもので、弊社が蓄積しているプローブデータ(「スマートループ渋滞情報」)を活用して、リアルタイムで渋滞を回避します。

画像: サイバーナビの9インチモデル「AVICーCQ912-DC」。同梱のネットワークスティックを使って常時オンライン接続が可能。

サイバーナビの9インチモデル「AVICーCQ912-DC」。同梱のネットワークスティックを使って常時オンライン接続が可能。

MM なるほど。ところで、カーナビゲーションの役割に変化はありますか。

田原 本質的な役割は変わりません。いかに短時間で目的地に到着できるか案内するという点で、まだできることはあります。たとえば、サーバー接続機能が進むと、個々のニーズや嗜好にマッチしたルート案内ができるようになります。

MM 具体的にはどんなルート案内ができるようになるのでしょうか。

田原 あくまでイメージの範疇ですが、たとえば、日頃の運転の傾向や軌跡を分析して、このお客さまは右折が少ないのでなるべく左折が多いルートを案内しようなど、ドライバーの癖や傾向を分析して行うストレスの少ないルート案内です。

MM それはユーザーが任意に選べるようにするのでしょうか。

田原 カーナビゲーション側が自動で設定する形が良いと思います。気付いたら、ルート案内中のストレスが少なくなった、といったイメージです。単に目的地に到着できるだけでなく、よりドライバーの気持ちに寄り添った感じです。あとはスマートフォンとの関係ですね。それによって、今後の方向性に変化はあるかも知れません。

MM スマートフォンとの連携はどのあたりまで進んでいるのですか。

田原 車載のカーナビゲーションだけで完結していては、情報量に限界があります。そういった点でスマートフォン経由での情報のやりとりは、これからもっと増えていくでしょう。リアルタイム情報など、これからはスマートフォンとの補完関係が重要になってきます。

MM すでにスマートフォンは日常ツールとして定着しています。初めて使うナビゲーションがスマートフォンという若いユーザーも増えているかも知れません。

田原 北米などは、すでにその傾向が顕著になっています。確かにリアルタイムの情報という点では、スマートフォンのほうが速く反映されます。一方で、情報を処理してドライバーにわかりやすい形で提示する能力はやはり車載カーナビゲーションのほうが優れています。両方の良いところを採り入れ、バランスを考えながら次世代機の開発を進めていきます。

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