日産自動車(以下、日産)のZ31型フェアレディZは1983年に登場した。初代のS30型は名車の誉れが高かったが、2代目のS130型は、ラグジュアリーさが増したことに加え、排出ガス規制の狭閒で牙を抜かれた感がぬぐえなかった。続く3代目として大きな期待を受けて登場したのがZ31型といえる。ここでは2月15日に発売したムック【GTmemories8 Z31フェアレディZ】から抜粋して、その魅力をお届けしよう

VG30ETユニットは200psオーバーの強心臓

画像: VG30ETは、グロス230psを発生。トヨタが推し進めていたDOHC路線とは違った方向で存在感を示した。

VG30ETは、グロス230psを発生。トヨタが推し進めていたDOHC路線とは違った方向で存在感を示した。

日産が長年使ったL20Eという直6 SOHCエンジンを廃し、VG30EというV6を開発した。その背景には北米市場の排出ガス規制への対応や、日産のライバルであるトヨタが2L直6エンジンの1Gを開発して日産の一歩先を行くとともに、マーケットでも優位に立つことになったことなどを挙げられる。日産は、それを逆転する意味でもV6エンジンが必要だったと言える。

V6エンジンを設計する場合、バンク角は一般的に60度か90度のどちらかを採用される。VG系は60度を採用したが、その理由は振動特性に優れているためだ。この場合クランク角が120度回転するごとに1回の燃焼行程、つまり等間隔燃焼することによってトルク変動を少なく、しかもスムーズで強力な吹け上がりと静かな回転特性を得られるのだ。

画像: 北米の排出ガス規制や、時代が求めるコンパクトさ、トヨタの1G系直6に対抗する意味から開発されたVG36ET。

北米の排出ガス規制や、時代が求めるコンパクトさ、トヨタの1G系直6に対抗する意味から開発されたVG36ET。

V型エンジンとしたことで、ボアの設定を比較的大きくできることもメリットとなった。これにより高回転・高出力型のオーバースクエア設計となったからだ。ただ、オーバースクエアではカバーできない低中速回転域のトルクを増大させるために、インテークマニホールドを左右3本ずつにまとめ、それを一体化したサイアミーズコレクターを採用している。

軽量設計も時代に求められていた。そのためにシリンダーブロックはアルミ製ハーフスカートとし、従来からのタイミングチェーン駆動をタイミングベルト駆動へとスイッチした。さらにメンテナンスフリー化のためにバルブクリアランス調整の不要な油圧バルブリフターも採用された。

バンク間に設けられたシリンダーヘッドカバー風のエンジンカバー。TURBO3000というのは見た目でもインパクトがある。

燃焼室は、現代的なペントルーフ形でコンパクトなものとし、点火プラグがボアセンター近くに配置されることで、燃焼速度を速めた。吸排気バルブ挟角は50度とし、混合気のスワール効果を高めて燃焼効率を上げている。

開発当初VG30Eはセドリック/グロリアに搭載される予定だったが、スポーツカーであるフェアレディZへの採用を考えてターボチャージャーによる過給が必要となった。それがVG30ETだ。当時のターボエンジンとしては、7.8:1という比較的高めの圧縮比を採用することで、フレキシビリティと好燃費を目指したのも注目される点だ。

画像: バンク角は等間隔燃焼となる60度となっている。シリンダーブロックはハーフスカートとして軽量化にも重点が置かれた。

バンク角は等間隔燃焼となる60度となっている。シリンダーブロックはハーフスカートとして軽量化にも重点が置かれた。

インタークーラーレスながら、最大過給圧は350mmHgに設定。インターセプトポイントは1700rpmあたりだが、エンジン性能曲線は、1600rpm付近から力強く立ち上がる。このあたりから体感できるターボ独特の加速感が300ZXの魅力だった。

日産 VG30ETエンジン 主要諸元

●エンジン型式:VG30ET
●種類・シリンダー数:V型6気筒SOHC+ターボ
●内径✕行程:87.0✕83.0mm
●総排気量:2960
●圧縮比:7.8:1
●最高出力:230ps/5200rpm(グロス)
●最大トルク:34.0kgm/3600(グロス)
●燃料供給装置:ECCS
●使用燃料・タンク容量:レギュラー・72L

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