2022年7月8日、F1第11戦オーストリアGPがシュタイアマルク州シュピールベルグのレッドブルリンクで開幕する。ホストグランプリとなるレッドブルが得意のコースで圧倒するのか、フェラーリがストップをかけるのか。今週末はスプリントレースフォーマットで開催される。

フェラーリとレッドブルの2強対決はまだ混沌

7月3日に行われた前戦イギリスGPではカルロス・サインツが優勝、レッドブルの連勝を6で止めたフェラーリだが、ここまで今シーズン10戦を終えて、フェラーリ3勝、レッドブル7勝と、フェラーリにとって厳しい状況であることに変わりはない。(ちなみに、ポールポジションはフェラーリ7回、レッドブル3回)

画像1: 昨年のオーストリアGP。シュタイアGPから連戦で周回数も同じだが、設定されたタイヤコンパウンドはシュタイアGPが違っていた。ここでもフェルスタッペンが快勝。

昨年のオーストリアGP。シュタイアGPから連戦で周回数も同じだが、設定されたタイヤコンパウンドはシュタイアGPが違っていた。ここでもフェルスタッペンが快勝。

しかも、イギリスGPでのマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)の7位失速はデブリによるフロアの損傷という不運に見舞われたもので、セルジオ・ペレスもスタート直後の接触により後退したものの終盤に猛然と追い上げて2位に食い込んでいる。

一方のレッドブルにとってはオーストリアGPはホストグランプリであり、絶対に負けられないところ。当然ここでは1-2フィニッシュを狙っている。

またメルセデスも速さを取り戻しつつあり、イギリスGPではハミルトンがフェラーリの一角を崩して3位の座を奪っている。

2022年F1ドライバーズランキング(第10戦終了時)

1位 M.フェルスタッペン(レッドブル)181
2位 S.ペレス(レッドブル)147
3位 C.ルクレール(フェラーリ)138
4位 C.サインツ(フェラーリ)127
5位 G.ラッセル(メルセデス)111
6位 L.ハミルトン(メルセデス)93

2022年コンストラクターズランキング(第10戦終了時)

1位 レッドブル 328
2位 フェラーリ 265
3位 メルセデス 204
4位 マクラーレン・メルセデス 73
5位 アルピーヌ・ルノー 67
6位 アルファロメオ・フェラーリ 51 
7位 アルファタウリ・レッドブル 27

そんな状況で迎える第11戦オーストリアGPはどんなレースとなるのだろうか。

アップダウンの激しいジェットコースターコース

オーストリアGPの舞台となるレッドブルリンク(Red Bull Ring)は、緑あふれるのどかな丘の中にあるサーキットで、山間部にあるため起伏に富み、エンジンパワーが重要なファクターとなる。

全長は4318mと短く、コーナーは10カ所しかないが、ターン2とターン5、ターン8はエンジン全開で駆け抜けるため、実質的なコーナー数はわずか7カ所。しかも、低速コーナーはターン3とターン4のみで、エンジン全開率は66%、平均速度は230km/hと高い。

画像: レッドブルリンクは、緑あふれるのどかな丘の中にあるサーキットで、山間部にあるため起伏に富んでいる。前戦イギリスGPが行われたシルバーストンとは大きく異なる。

レッドブルリンクは、緑あふれるのどかな丘の中にあるサーキットで、山間部にあるため起伏に富んでいる。前戦イギリスGPが行われたシルバーストンとは大きく異なる。

最大のオーバーテイクポイントは上り坂のストレートからのブレーキング勝負となる3コーナー。また、森の中を駆け抜けた後の9コーナー、逆バンク気味の最終コーナーもトリッキーで、オーバーテイクがしばしば見られる。

標高が高いため酸素濃度が低いのも特徴で、マシンにとってはエアロダイナミクス、冷却、過給効率が課題となる。また、エンジン全開率が高くブレーキング時間が短いので運動エネルギー回生(MGU-K)は大きくないのも悩ましい。

タイヤ戦略は、摩耗や劣化が比較的低小さいためワンストップとなることが多いが、変わりやすい天候がしばしばチームを悩ませる。ウエットコンディションになれば、レース展開はまったく違うものになってくるからだ。タイヤにとっては、大部分のコーナーは右ターンだが、最もタイヤに厳しい2つのコーナーが左ターンというところもポイントとなる。

なお、今年のオーストリアGPは、第4戦エミリア ロマーニャGPに続いて、「スプリント」が行われるレースフォーマットとなる。これは、金曜日の「予選」の結果をもとに、土曜日に100kmのスプリントレースを開催し、決勝レースのスターティンググリッドを争うもので、「スプリント」の上位8位までに8-7-6-5-4-3-2-1という大きなポイントも付与される。ただし、ポールポジションは予選の最速ドライバーに与えられる。

オーストリアGPではスプリントと決勝、決勝ファステストラップポイントを合わせて最大34ポイント獲得可能となり、チャンピオン争いという意味でもきわめて重要なものとなる。ちなみに今季スプリントが初めて行われた第4戦エミリア ロマーニャGPでは、フェルスタッペンがスプリント優勝8点、レース優勝25点、最速ラップ1点のフルポイント34点を獲得している。

レッドブルのホームコースということもあって、伝統的にレッドブルが得意としているサーキットだが、今年はどんな展開となるだろう。

画像: レッドブルリンクのコース図。全長は4318mと短く、コーナーは10箇所しかなくエンジン全開率は高いが、高低差があり1周をまとめるのがむずかしい。

レッドブルリンクのコース図。全長は4318mと短く、コーナーは10箇所しかなくエンジン全開率は高いが、高低差があり1周をまとめるのがむずかしい。

2021年は2週連続開催でフェルスタッペンが連勝

昨年2021年、レッドブルリンク(シュピールベルグ)でのグランプリは、第8戦シュタイアマルクGP、第9戦オーストリアGPと2週連続で行われ、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが完璧な走りで連勝している。

第8戦シュタイアマルクGP(2021年6月27日決勝)は、ポールポシジョンから無難に首位をキープしたフェルスタッペンが、瞬く間に2番手のハミルトンをDRS圏外に突き放し、タイヤもうまくマネージメントしてレースをコントロール。ハミルトンが先にタイヤ交換を行ったが、フェルスタッペンも次の周にピットに入り、アンダーカットされることなく危なげなく快勝した。

続く第9戦オーストリアGP(2021年7月4日決勝)でも、フェルスタッペンはポールポジションから難なく首位をキープし、直後に後方のアクシデントが原因でセーフティカーが出ても慌てず騒がず。再スタートも完璧に決めてファステストラップを連発して大量マージンを築き、そのアドバンテージを活かして、念のためにレース終盤の60周目に素早くタイヤを交換。この2度目のタイヤ交換後にファステストラップを記録して、そのままチェッカーに飛び込んだ。

当時、ポイントランキング首位を走るフェルスタッペンは絶好調で、同じサーキットでの連続開催とあって、その勢いを誰も止められなかった。

【参考】2021年F1第8戦シュタイアマルクGP決勝 結果

1位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)71周
2位 44 L.ハミルトン(メルセデス)+35.743s
3位 77 V.ボッタス(メルセデス)+46.907s
4位11 S.ペレス(レッドブル・ホンダ)+47.434s
5位 4 L.ノリス(マクラーレン・メルセデス)+1周
6位 55 C.サインツ(フェラーリ)+1周
7位 16 C.ルクレール(フェラーリ)+1周
8位 18 L.ストロール(アストンマーティン・メルセデス)+1周
9位 14 F.アロンソ(アルピーヌ・ルノー)+1周
10位 22 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)+1周
・・・・・・・・・・
リタイア P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)

画像: 昨年のシュタイアGPのタイヤ戦略。フェルスタッペンはワンストップで走り切った。

昨年のシュタイアGPのタイヤ戦略。フェルスタッペンはワンストップで走り切った。

【参考】2021年F1第9戦オーストリアGP決勝 結果

1位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)71周
2位 77 V.ボッタス(メルセデス)+17.973s
3位 4 L.ノリス(マクラーレン・メルセデス)+20.019s
4位 44 L.ハミルトン(メルセデス)+46.452s
5位 55 C.サインツ(フェラーリ)+57.144s
6位 11 S.ペレス(レッドブル・ホンダ)+57.915s
7位 3 D.リカルド(マクラーレン・メルセデス)+60.935s
8位 16 C.ルクレール(フェラーリ)+61.195s
9位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)+61.844s
10位 14 F.アロンソ(アルピーヌ・ルノー)+1周
・・・・・・・・・・
12位 22 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)+1周

画像2: 昨年のオーストリアGP。シュタイアGPから連戦で周回数も同じだが、設定されたタイヤコンパウンドはシュタイアGPが違っていた。ここでもフェルスタッペンが快勝。

昨年のオーストリアGP。シュタイアGPから連戦で周回数も同じだが、設定されたタイヤコンパウンドはシュタイアGPが違っていた。ここでもフェルスタッペンが快勝。

オーストリアGP開幕に向けて、タイヤを供給するピレリは次のように分析している。

「レッドブルリンクはコーナーはわずか10しかありませんが、アップダウンの激しいジェットコースターのようなコースです。ピレリは最も柔らかい3つのタイヤを用意しました。昨年、レッドブルリンクで2つのレースが連続して開催されましたが、今週末のセットは2回目のレースと同じ組み合わせで、追い越しの機会が多い一方でマネージメントが難しいスリリングな戦いが見られるはずです。またイモラに続いて今季2回目のスプリントが行われるのもポイントになります。タイヤは2セットのハード、4セットのミディアム、6セットのソフトを供給します。これをどう使うかですが、昨年2回目のレースの勝利戦略は2ストップ(ミディアム→ハード→ハード)でした。今年は18インチになって構造もコンパウンドも異なりますが、どうなるでしょう。ここではトラクションとブレーキングが重要です。トリッキーな下り坂のブレーキングエリアでは、ロックアップのリスクが特に高くなります。 ラップ全体でリアタイヤのパフォーマンスを維持することもトラクションを確保するために不可欠となります」

画像: オーストリアGP開幕に向けて、ピレリが公開したコース分析データ。

オーストリアGP開幕に向けて、ピレリが公開したコース分析データ。

第11戦オーストリアGPは7月8日金曜日、日本時間20時30分(現地13時30分)のフリー走行で開幕する。

2022年F1第11戦オーストリアGP タイムスケジュール

フリー走行1回目:7月8日13時30分〜14時30分(日本時間20時30分〜21時30分)
予選:7月8日17時〜18時(日本時間24時〜25時)
フリー走行2回目:7月9日12時30分〜13時30分(日本時間19時30分〜20時30分)
スプリント(24周):7月9日16時30分〜17時30分(日本時間23時30分〜24時30分)
決勝(71周):7月10日15時〜(日本時間22時〜)

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