2009年9月、初代アウディQ7がマイナーチェンジを受けて登場している。デビューから約3年、Q7はこの時、内外装のリフレッシュや燃費向上など大掛かりな変更が施されている。ここでは発表まもなく行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年12月号より)

フェイスリフトの目玉はスタイリングのリファイン

アウディにとって初のSUVは、このQ7である。アウディ自身は、その前からあるオールロードクワトロもSUVのジャンルであると言うが、これはA6アバントがベースなので、デザインという観点から見れば、Q7がアウディが手がけた初のSUVであるということに異論はないだろう。

画像: 3.6 FSI クワトロ。Sーlineパッケージ装着車は、リアビューもなかなか精悍だ。

3.6 FSI クワトロ。Sーlineパッケージ装着車は、リアビューもなかなか精悍だ。

さて、今回のフェイスリフトの目玉は、そのスタイリングのリファインだ。これまでのQ7には、アウディらしい上品さは十分に感じられたのだが、フルサイズSUVらしい迫力、スパルタンなところはあまり感じられなかった。そもそも、従来からの固定観念である「SUV=迫力」という等式にとらわれないということで、敢えて試みたスタイリングなのだろうが、もの足りなさを感じた人もいたように思う。

そして今回、実現したのがこのスタイリングで、仕上がりはなかなかよい。アウディらしい上品さとSUVに不可欠な迫力を見事に融合して見せている。まずシングルフレームグリルだが、黒地に縦のクロームバーを並べて、その存在感、迫力を増している。その下のバンパーもデザインを一新、アンダーボディガードの形状も含めて、腰高な印象を受けた従来型より安定感を増すことに成功している。

さらにフロントエンドでの目玉となる演出は、アウディのアイデンティティとして今や欠かせないLEDのポジショニングランプを装備したことだ。アウディはシングルフレームグリルでブランドを表現し、LEDポジショニングランプでモデルを表現していると説明するが、Q7がこれを採用したことで、残すはTTのみとなった。

リアエンドではナンバープレートを装着する部分をリデザイン。ユニバーサルタイプとなり、左右一直線に伸びるラインが強調された。また、テールランプにLEDが採用され、三次元的な点灯パターンを見せる。

またSラインパッケージ装着車は、フロント&リアエプロン、サイドシルがボディ同色となり、ノーマルモデルよりさらに安定感があり、力強さが感じられるものになっている。その他、エクステリアではドアミラーが小型化され、Q5と同じサイズになった。これにより空力性能が向上したという。

ブレーキエネルギー回生システムなどで大幅に燃費が向上

さて、メカニズム面の注目はブレーキエネルギー回生システムが搭載されたことだろう。これはブレーキング時、および一定速度での走行時に運動エネルギーの一部を電気エネルギーに交換してバッテリーを充電、これによりオルタネーターの作動を減らし、燃費向上を果たすというものだ。

画像: 落ち着いたボディ色の4.2FSIエアサス装着車(左)と、ホワイトの3.6FSIのS-lineパッケージ装着車(右)。

落ち着いたボディ色の4.2FSIエアサス装着車(左)と、ホワイトの3.6FSIのS-lineパッケージ装着車(右)。

回生したエネルギーを動力としては使わないので、ハイブリッドカーとは言わないが、このシステムのコストパフォーマンスは高い。これで2%前後、燃費が向上するそうだ。ニューQ7はさらにエンジンのリファインも行われているので、従来モデルより10・15モードで3.6FSIが7%、4.2FSIが7.5%、燃費が向上している。

試乗は3.6FSIのSラインパッケージから行った。スポーツサスペンションを装着しているので、路面の凹凸には敏感に反応する。低速で石が露出したようなオフロードを走るときなどは突き上げが顕著だが、そのぶん路面のいいワインディングロードでは快適だ。もちろん、過剰に飛ばそうとせず、50km/hほどで走るという前提だ。

そもそも2270kgもある大型SUVだから、Sラインパッケージとはいえ、ワインディングロードが得意ではないことは言うまでもないだろう。

次に試乗したのは4.2FSIのエアサス装着車だ。さすがにこれは全般に快適な乗り心地であったし、また車高を4段階に調整できることもSUVとしては大きなプラスポイントだ。

この2車はもちろん乗り味に違いはあるが、パワー感に大きな差は感じられなかった。それに本来は高速道路などをゆったりと走るのに適したクルマだから、そういう状況ではさらにその差は気にならないレベルになるはずだ。230万円も違うならば、3.6FSIを選ぶ方が賢明だろう。

さて、このフェイスリフトで全般的に魅力を増したQ7、これでまた、ライバルと対等以上に戦えるだろう。さらにフラッグシップとして1000Nmを発揮するV12 TDI ディーゼル搭載モデルが日本へも導入されれば、ラインナップは完璧なのだが、それは叶わぬことのようだ。(文:Motor Magazine編集部 荒川雅之/写真:永元秀和)

アウディQ7 4.2 FSI クワトロ 主要諸元

●全長×全幅×全高:5090×1985×1740mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2350kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4163cc
●最高出力:257kW(350ps)/6800rpm
●最大トルク:440Nm/3500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●10・15モード燃費:7.2km/L
●タイヤサイズ:255/55R18
●車両価格:970万円 (2009年当時)

アウディQ7 3.6 FSI クワトロ 主要諸元

●全長×全幅×全高:5090×1985×1740mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2270kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3594cc
●最高出力:206kW(280ps)/6200rpm
●最大トルク:360Nm/2500-5000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●10・15モード燃費:7.6km/L
●タイヤサイズ:255/55R18
●車両価格:740万円 (2009年当時)

This article is a sponsored article by
''.