「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、トヨタ カムリ(9代目)だ。

トヨタ カムリ(2011年:9代目フルモデルチェンジ)

トヨタの世界戦略車であり、北米を中心に絶大な人気を誇っているカムリ。アメリカでは9年連続ベストセラーカーの座にあり、老若男女、幅広い年代の人たちに愛されている。生産拠点は8カ国に及び、生産台数は多い年には90万台を超える「超」のつく人気モデルなのだ。(編集部註:データは2011年当時)

画像: 北米などでも人気の高いカムリだが、国内仕様は内外装ともに日本専用のオリジナルデザインを採用した。

北米などでも人気の高いカムリだが、国内仕様は内外装ともに日本専用のオリジナルデザインを採用した。

だが、日本では販売台数も少量にとどまっていた。そこで気合の入ったモデルチェンジを断行した。先代で存在感が薄いと言われたエクステリアは、知性を感じさせる上質なデザインに生まれ変わった。これは各国の意見を聞きながら日本のデザイン部門がまとめたジャパン オリジナルだ。居住性だけでなく空力性能を磨きながら躍動感あふれるデザインとしている。ラインナップもハイブリッドモデルのみで、グレードは3タイプだけというシンプルな設定とした。

パワーユニットは、新設計の2.5Lのアトキンソンサイクル(高膨張比)エンジンにTHS IIとニッケル水素の駆動バッテリーを組み合わせた。これにより、3Lエンジン並みの高性能を実現している。しかも従来型比で約100kgの軽量化と相まって、1.3Lエンジンと同等の低燃費を達成した。

システム最高出力は205psに達する。それでいながら10・15モード燃費は、ヴィッツのアイドリングストップ機構搭載車と同じ26.5km/L、JC08モードでも23.4km/Lを達成した。プリウスなどと同じように、ちょっとだけEV気分に浸れるEVドライブモードも備えている。

1ランク上に匹敵する静粛性の高さ

まずは省燃費なエコドライブモードでスタート。発進はモーター駆動だ。低回転からモーターならではの力強いトルク感を味わえる。エンジンが始動すると、一瞬、身震いしてエンジン音を発するが、気になるほど大きくはない。ノーマルモードと比べると瞬発力とトルクの盛り上がりは今ひとつだが、街中の走りなら文句はない。

画像: 乗り心地は先代モデルより上質になった。高速でも足まわりはしなやかに動いてくれる。

乗り心地は先代モデルより上質になった。高速でも足まわりはしなやかに動いてくれる。

ノーマルモードはパワフルで、全域にわたって余裕が感じられる。今までの2.4Lエンジンより滑らかでパワフルだ。低回転域のトルクも大幅に増えていた。したがって加速は鋭いし、ドライバビリティも向上している。制御も絶妙で、多くのシーンで扱いやすく疲れも少ない。

静粛性の高さも特筆できるところだ。クルージング時はもちろん、一気に加速した時でもノイズが急に高まることはない。遮音が行き届いていることもあり、V6エンジン搭載車と遜色ない静粛性を手に入れている。バランスシャフトの採用や空力性能を徹底追及したボディ、ロードノイズを減らしたタイヤ、遮音材と吸音材の採用など、多くのノイズ対策が実を結んでいるようだ。

サスペンションは前後ともにストラットと、先代と同形式だが、取り付け剛性を高め、ショックアブソーバーの減衰力なども北米仕様より引き締めて、スポーティ度を高めた。タイヤは16インチの60と17インチの55偏平を設定する。試乗車は17インチだったが、走行安定性はファミリーカーの域を超えたものだった。

狙ったラインに乗せやすく、コントローラブルだ。ボディ剛性も高い。電動パワーステアリングはちょっと軽めだが、リニアな操舵フィールだった。乗り心地は、低速や荒れた路面では突き上げを感じる場面もあるが、先代のカムリより上質だ。飛ばしたときでも足がしなやかに動く。

インターフェースは中央に大径のスピードメーターとマルチインフォメーションディスプレイを配置した、視認性に優れたものだ。左側はハイブリッドシステムのインジケーター、右側には燃料計に加え、平均燃費計と瞬間燃費計を組み込んだ。走行しているときに瞬時に燃費がわかるから、エコドライブに大いに役に立つ。

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