妖艶な演出のもと、マセラティのスーパースポーツモデル「MC20チェロ」のワールドプレミアが行われた。ここでは当日、イタリアまで出かけ現地で取材した大谷氏がその模様とMC20チェロの詳細を報告する。(Motor Magazine2022年8月号より)

チェロとはイタリア語で「空」。スパイダーにお似合いのネーミングだ

「ああ、その手があったか!」

イタリアモデナのマセラティ本社で行われたワールドプレミアでは、まるでギリシャ神殿のように荘厳な作りの会場に現れたMC20チェロの真っ白なボディが、四方八方に投影される神秘的な映像の放つ光を受けてなんとも妖艶な雰囲気を醸し出していた。

しかし、私がそれ以上に感心したのは、MC20チェロのグラスルーフにエレクトロクロミック素材が用いられていると知ったときのことだった。

イタリア語で「空」を意味するチェロは、MC20のスパイダーモデル。最近のミッドシップスポーツは、スパイダー化に際してリトラクタブルハードトップ方式を採用するのが定番化している。布製のソフトトップよりも耐候性が高いリトラクタブルハードトップは、ルーフを閉じればクーペと変わらない静粛性や快適性を味わえる。いたずらや盗難に遭いにくいという意味でセキュリティ性が高いことも同方式のメリットだ。

ただし、いまや常識と化したリトラクタブルハードトップに目新しさがなくなってきたのも事実。MC20にニューモデルが追加されるとのニュースに触れたとき、「きっとリトラクタブルハードトップを付けるだけでしょう」と高をくくっていたが、格段の期待を抱かなかったのは、こんな背景があったからだ。

画像: 写真のボディカラーは新色のアクアマリン。マットのグレー、アクアマリン、クリアの3層を塗装して仕上げている。

写真のボディカラーは新色のアクアマリン。マットのグレー、アクアマリン、クリアの3層を塗装して仕上げている。

そこに届いたのが、エレクトロクロミックをグラスルーフに応用したというニュースだった。エレクトロクロミックとは、電圧をかけると色が変化する特殊な素材がもたらす効果のこと。これをグラスルーフに用いると、ルーフの色を透明から不透明へ、そして不透明から透明へと瞬時に変化させられる。

MC20チェロの場合は、ほぼ光を透過しない真っ黒な状態と、光をうっすらと通す磨りガラス状態のふたつを選べるが、これであれば①真夏の強い陽射しのときはルーフをクローズにして「真っ黒」、②気候がよくて雨が降っていないときはオープン、③暑い、もしくは寒い日に陽射しを感じたいときにはルーフをクローズにして「磨りガラス」と、3種類の使い方が可能。つまり、これまで以上に幅広いシーンでリトラクタブルハードトップを楽しめるようになるのだ。

ちなみに、同じ方式はマクラーレン720Sスパイダーにも採用されているが、オプション設定だった720Sに対し、MC20チェロはこれを標準装備とすることで、その喜びをさらに広げたといえるだろう。そのほかにも、MC20チェロにはいくつもの「新たな特徴」が用意されていた。

たとえば、発表会に登場したアクアマリンというパールホワイトのボディカラーは、上品な色合いでマセラティのブランドイメージにぴったりだが、実は強い光を受けたハイライト部分のみ、ほのかにブルーが浮き上がる特殊な加工が施されている。これは、まずマット調のグレーを塗装した後でパールホワイト系の塗料をペイントし、その上からクリアを吹くという手間のかかる作業によって実現したという。

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