MC20が搭載するのは、100%マセラティ社内で開発、生産されるネットゥーノエンジンである。ここではそのサーキット試乗とともに、チーフエンジニアやエンジン開発担当者から直接話を聞く機会を得た。(Motor Magazine2022年8月号より)

上質なサルーンを思わせる走り味のスーパースポーツカー

マセラティMC20との出会いは実に衝撃的だった。私が初めてハンドルを握ったのは日本の公道だが、エンジンを始動して発進させたその瞬間に、MC20Cがかつてないタイプのスーパースポーツカーであることが明らかになったのだ。

画像: 他のスーパースポーツカーとは異なり、マセラティらしいグランツーリスモの味わいを盛り込み、快適性を追求したという。

他のスーパースポーツカーとは異なり、マセラティらしいグランツーリスモの味わいを盛り込み、快適性を追求したという。

まず、スタート時の振る舞いが抜群に軽い。ショックを一切感じさせることなく、文字どおり瞬時にして動き出すそのマナーは、まるで車重が半分くらいしかないライトウエイトスポーツカーのようだ。エンジンのピックアップが極めてシャープな上で、そのパワーを伝達する駆動系のレスポンスも鋭くなければ、こういう身のこなしは実現できないだろう。

カーボンモノコックを通じてドライバーに伝えられる路面からのショックがまろやかで、多少の段差であれば何ごともなかったかのように通り過ぎてしまう点にも大いに感銘を受けた。MC20は長いサスペンションストロークを駆使してじわっとショックを受け止めるようで、その点ではスーパースポーツカーというよりも上質なサルーンに近い印象だった。

視界が良好でエンジン音が過大にうるさくないところもマクラーレンとよく似ているが、内外装に認められる華やかなデザインがいかにもイタリア的で、この点はしっとりと落ち着いたマクラーレンとはひと味異なる個性を放っているように思えた。

マセラティらしさがMC20には盛り込まれた

ワインディングロードで示したキャラクターも個性的だった。パワートレーンのピックアップが良好なことは市街地で体験したとおり。ただし、長めのサスペンションストロークは優れたロードホールディングやトラクションを生み出す一方で、ハンドルを切り込んだ瞬間にターンインが始まる最新のスーパースポーツカーとは異なり、ハンドリングのレスポンスはむしろ穏やかに感じられた。

画像: MTC(マセラティ ツイン コンバスチョン)=副燃焼室方式は最新のF1のパワーユニットにも採用される。

MTC(マセラティ ツイン コンバスチョン)=副燃焼室方式は最新のF1のパワーユニットにも採用される。

一般的にいって、こうした「おっとりとしたハンドリング」はサーキット走行を苦手とするはずだが、実際にサーキットを走るとどんな印象が得られるのか?そもそも、サーキット走行時に不利になりかねないハンドリングを選択したエンジニアたちの意図とはどのようなものだったのか?そんな疑問というか好奇心で、胸の内はあふれんばかりだった。

「NC20をもっと深く知りたい」。そうした思いは、意外なほど早く満たされることになった。MC20チェロのワールプレミア後に、モデナ近郊のサーキットでMC20に試乗できるうえ、そこにMC20の開発に携わったエンジニアも同席するという。まさに千載一遇のチャンスである。

アウトドローモ ディ モデナは全長2kmほどのコンパクトなサーキット。さらに今回はインフィールドの一部を使わなかったので、1周の距離はさらに短くなったが、おかげで高い車速域を試すことができた。

このときの印象をひと言で記せば、日本で試乗したときに想像したとおりの走りだった。ハンドリングは、決してウルトラレスポンシブとはいえないけれど、そこはミッドシップのスーパースポーツカー。軽快な身のこなしで狙ったとおりのラインをトレースできる。そこに「待たされる」という感覚は芽生えない。

一方で最新のスーパースポーツカーとしてはやや大きめなピッチングやローリングは、荷重移動の様子を正確に反映してくれるので、むしろ操りやすいともいえる。コントロール性が極めて高いブレーキもフロントの荷重を微妙に調整するのが容易で、足まわりとのマッチングは良好。これはドライビングモードをスポーツ、もしくはさらにスポーティなコルサに切り替えても変わらなかった。

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