かつてドイツ車といえば、高性能車であることの代名詞という捉え方をされていた。それを象徴する存在だったのが、ポルシェの各モデルたちである。その認識はいまも変わらない。築かれた価値観は、すべてのモデルに宿っているのだ。(Motor Magazine2022年8月号より)

ブランディングの重要性。技術と歴史への多大な敬意

2030年には新車販売の80%をxEV、つまり何らかの電動化されたパワートレーンに置き換えることを目標に掲げるポルシェ。

画像: カイエン ターボGT。用意周到にして負けず嫌いにもほどがある。

カイエン ターボGT。用意周到にして負けず嫌いにもほどがある。

BEVではすでにタイカンを販売、パナメーラとカイエンにはPHEVが設定されるほか、マカンは23年に、718シリーズは25年にBEV化されることが公言されている。ドイツのスクープ情報などを見ていると、聖域の911もいよいよハイブリッド化されたモデルがスタンバイとなっているようだ。これらの流れから見れば、30年目標は決して大風呂敷ではなく、むしろそこに向けて順調に駒を進めているという感すらある。

その一方で、内燃機関への執着を失ったのかと言えば、そんなことはない。エンジニアやエグゼクティブは機会あるごとに、世界で最後まで燃焼エンジンを搭載し続けるのは911だと断言しているし、自動車メーカーの中でも率先してeフューエル(合成燃料)の開発に力を入れている。

自社製品を愛する多くのカスタマーに、末永く走り続けられる環境を提供するというのがその理由だが、未来がどう振れてもポルシェの世界観は守り続ける、その布石とも見て取れなくはない。技術で未来を切り開くことも、執拗に過去を顧みることのどちらも、ポルシェにとっては重要なブランディングということなのだろう。

カイエン&パナメーラシリーズは、21世紀以降、市場での存在感を飛躍的に高めたポルシェの金看板だ。ここにマカンも加わることで、年間30万台体制を実現した。

現在の販売構成は、マカンとカイエンとで全販売台数の半分以上、そこにパナメーラも加わることで2/3以上と、数的貢献はもはや無視することなどできない。ちなみにシリーズと記したのは、各々2つのボディバリエーションを持つためで、カイエンにはプロポーションをファストバック寄りにしたクーペが、パナメーラにはシューティングブレーク風の4ドアワゴンであるスポーツツーリズモが用意されている。

並みではない速さも実現。電動車の戦略的な位置づけ

この両モデルはパワートレーンにいち早くPHEVを採用、今回試乗したパナメーラ4Eハイブリッド プラチナエディションは2.9Lツインターボエンジンと8速PDKの間に2つのクラッチを介して、システム総合出力462ps、総合トルク700Nmのアウトプットを実現している。

画像: パナメーラ 4 Eハイブリッド プラチナエディション。完熟期を迎えたモデルに登場するプラチナエディション。その進化度には驚いた。

パナメーラ 4 Eハイブリッド プラチナエディション。完熟期を迎えたモデルに登場するプラチナエディション。その進化度には驚いた。

一方で搭載する17.9kWhのリチウムイオンバッテリーによって、欧州計測値で最長64kmのEV走行が可能だ。ちなみにカイエンにも同等のハイブリッドシステムが搭載されたグレード(ただしエンジンは異なる)が設定される。

さらに象徴的なのは、ポルシェの頂点を示すグレードのターボSがすでにPHEV化されていることだ。ポルシェとしては商業的にもっとも成功したモデルのトップグレードを電動化することで、その意思を明確に示そう、という狙いだろう。

ちなみにパナメーラのターボS Eハイブリッドはシステム総合出力700ps、総合トルク870Nm、0→1100km/h加速は3.2秒とまさにフラッグシップに相応しい怒涛のスペックが並ぶ。そして日本での価格は3000万円超えと、こちらもフラッグシップたるインパクトだ。

こと速さという点においては、パナメーラ4 Eハイブリッドとてポルシェの看板に相応しいものを持っている。0→100km/h加速は4.4秒と911カレラのわずか0.2秒落ち。それだけ見ても、世のスポーツセダンの中でもかなり上位につけていることがわかるだろう。

僕自身、パナメーラ4 Eハイブリッドに乗るのは久しぶりのことだったが、以前とはレベルが違う低中速域の洗練ぶりにまず驚かされた。バネ下の精緻で軽やかな転がりと上屋の丸くフラットな動きは、ランニングチェンジの範疇とは思えないほどの熟成ぶりだ。同じMSBモジュールを用いるベントレーのフライングスパーと比べても、乗り心地は大きく劣るものではない、そんな印象だった。

洗練されたという点では、モーターとエンジンの連携のスムーズネスも一層磨きがかかっていた。充電状況によっては低負荷域でモーター走行モードを頻用するが、その際のエンジンとの再連携のマナーは上質という言葉で評しても差し支えないほどだ。

ポルシェがクラッチ式のハイブリッドシステムを採用し始めてからは10年以上の時が経つが、その間に改善がたゆまず続いていたことがここからも感じられる。ただしエンジンとモーターの双方から一気にフルパワーを持ち出すような全開状況のレスポンスには、相変わらずわずかなラグがあるようだ。

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