知っている人も多いと思うが、ラベリング制度は「性能を示したラベルをタイヤに貼る」制度だ。当初は業界の自主基準として日本自動車タイヤ協会(JATMA)が2010年に開始したが、現在は消費者庁が定める「景品表示法に基づく公正競争規則」により厳しく規制され、法律面で信頼度を高めた。
ラベリング制度の元々の発端は2008年に行われた洞爺湖サミット。先進国首脳会議に合わせ、国際エネルギー機関(IEA)がエネルギー効率化と低炭素化社会の実現という世界的な課題に対し、25の施策を発表。運輸部門への勧告のひとつが低燃費タイヤの普及促進だった。
クルマを買うときは燃費の優劣がわかる。履き替え用のリプレイスタイヤも、試験方法を統一して燃費のいいタイヤを表示すれば、ユーザーが積極的にそのタイヤを選び、クルマ社会全体として二酸化炭素の削減に役立つ、といった内容だ。
さっそく世界各国で検討が開始された。一般的にタイヤの転がり抵抗を抑制するとウエットグリップがダウンする。燃費を追求して雨の日にスリップしやすいタイヤが増えては困るので、転がり抵抗とウエットグリップを同時に表示。日本では転がり抵抗をAAA〜Cの5段階、ウエットグリップをa〜dの4段階で示し、転がり抵抗AAA〜Aかつウエットグリップa〜dのタイヤだけ「低燃費タイヤ」と表示できる仕組みを確立した。
ちなみに各国の状況は、欧州では2012年に法制化を実施。表示は転がり抵抗とウエットグリップだけでなく、スイスなどで以前から厳しく求められてきた通過騒音を表示項目として追加した。転がり抵抗は5段階、ウエットグリップは4段階で日本と同じだが、たとえば転がり抵抗とウエットグリップがともに最高グレードの表示は、日本ではAAA-a、欧州ではA‐Aになり誤解しやすい。
アメリカでは2010年に検討を開始したが、いまだ法制化に至らず。転がり抵抗とウエットグリップ、さらに1970年代から表示を義務化した摩耗寿命の3項目で、最高値を100としてわかりやすい。摩耗寿命や通過騒音は各国でも導入を巡って検討が開始されている。
日本の他に導入が早かったのは、隣の韓国で2011年。石油を輸入に頼る国は資源の節約意識が高いわけだ。他にはブラジルが2016年導入、中国やインドでも法制化の検討を進めている。
文:竹内龍男