開発担当者が情報発信する「うんちく」とは?
日産では「開発以外の社員にも、技術のポイントを理解してもらいたい」との思いから、ニューモデルの発表前に、社内向けに「技術発表会 うんちく編」を開催している。
新型リーフでも、そこで注目の高かった技術を「開発秘話」として、開発メンバーがメディアに向けて語ってくれるという説明会が開催された。
主な内容は、以下の4項目。
1)パワートレイン
2)シャシ制御
3)空力/燃費性能
4)自動運転技術
私大文系出身の身には、わかりやすく説明されても「???」な部分もあるのだが、提供された図版などもまじえながら紹介していくことにしよう。
<1>高級車の静粛性とストレスフリーな加速性能 〜 パワートレイン開発
もともとEV(電気自動車)はエンジン車より静粛性は高いが、新型リーフではさらに静かでスッキリした音質を目指した。具体的には、モーターなどパワートレインの取り付け部にアルミ支柱を加えて剛性をコントロールし、モーター上部のアルミ製カバーは裏側にウレタン製のインシュレーターを装着して、ヨーロッパのプレミアムセダン並みの静粛性を実現した。
また、インバータの冷却性能向上や電流の制御方式を改善することにより、CPUの処理能力が倍になった。これらにより、モーターを変更することなく最高出力を80kWから110kWに、最大トルクも254Nmから320Nmにアップした。0-100km/h加速では先代より15%速くなり、また高速合流などの中間加速のような60-100km/h加速では30%も速くなっている。
<2>アクセルで止まる? 摩擦ブレーキと回生ブレーキのバトンリレー 〜 シャシ制御開発
ノートやセレナのe-POWER同様、新型リーフもアクセルペダルのみの操作で発進・減速・停止が可能な「e-ペダル」を採用している。さらにリーフでは停止保持も可能になり、停車時もブレーキを踏まなくて済む。アクセルペダルだけで加減速を操作できれば、加減速はリニアに、つまり「意のまま」にクルマが反応してくれる。これは利便性だけでなく、ファンtoドライブにもつながる。
そのために、新型リーフではアクセルペダルを戻すとモーターによる回生ブレーキに加え、摩擦ブレーキ(いわゆるメカニカルブレーキ)も状況によっては作動させている。ちなみに減速Gが0.07G以上発生するとブレーキランプが点灯するので、ワンペダルで普通に走行していても後続車が気づくことは少ないという。
滑りやすい路面などでは、従来のモーターによる回生だけではフロントにしかブレーキが利かないが、新型リーフでは後輪も含め4輪で制動力を発揮するので、より確実な減速〜停止が可能になる。
<3>横風を味方に! “リアルワールド”でのこだわり 〜 空力/燃費性能開発
新型リーフでは先代より航続距離を40%以上も向上させた。とくに高速での航続距離を向上させるため、空力性能開発にこだわった。なぜなら、EVではガソリン車に比べ、熱エネルギー損失や引きずり損失による高速でのエネルギー損失量は少ない。そのぶん、空気抵抗損失が占める割合が大きくなるからだ。
そこで、新形状のアンダーカバーで床下の風速を高めて風の流れを整えるなどして、先代よりも空気抵抗を約4%改善した。日産社内でのテスト値だが、Cdは先代が0.29、新型が0.28となっている。
さらに、直進状態のみでなく横風を受けた際の空気抵抗を検討に加え、リアサイドスポイラーの形状を改善するなどにより、実用航続距離を横風のみで約2.5km向上している。ちなみに、さまざまな走行車速データや気象データを用いて、横風の最頻値は4°と導き出している。
<4>駐車を楽しく! カメラと超音波センサのフュージョン技術 〜 自動運転技術開発
新型リーフには、「プロパイロットパーキング」が搭載されている。これは、アクセル、ブレーキ、ハンドル、シフト、さらに電動パーキングブレーキまで自動で作動する、国産車初の本格的自動駐車システムだ。駐車の方式も、いわゆる車庫入れ駐車から縦列駐車や前向き駐車まで対応する。
システムは、アラウンドビューモニターにも採用されている4つのカメラと、前後のバンパーに取り付けられた12個の超音波センサとのフュージョン技術からなる。カメラ画像と解析と超音波センサの情報から、駐車枠だけでなく移動可能なスペースを認識し、周辺障害物の位置を把握して最適な経路を計算して走行する。
今回、実際に駐車場でシステムを体験することができた。システムが駐車可能なワクを自動検出し、モニターに表示される指示に従いながらボタンを押し続ければ、切り返しまでして駐車スペースの中央にピタリと止めてくれる。駐車に要する時間も、さほど遅くない。駐車が苦手で運転を敬遠がちな人には、最高の福音となるだろう。