安定感と軽快さを両立させたその走り
8年ぶりにフルモデルチェンジを行った新型ポロの目玉は、フォルクスワーゲンが進めているモジュラー戦略「MQB」を初めて採用した点にある。
ゴルフやパサートなどとともにシャシコンポーネンツを共有し、設計の標準化を行うことによって、性能を均一化。高い量産メリットを見込めることに加えて、ポロにとってはコンパクトボディながら、上級モデル同様の高い質感や走りの性能が与えられ、そのメリットはメーカー、ユーザーともに大きい。
今回はその基本シャシの設計自由度の高さを生かして、先代モデルに対して、ホイールベースで80㎜、全長と全幅でともに65㎜拡大。6ライトのサイドフォルムや、先代譲りの顔つきなどから、一見すると大きな違いは感じられないものの、乗り込んでみるとその差は明らかだ。
なかでもリアシート回りは開放感があって、足元も前後にゆとりがある。71L拡大されたラゲッジスペースは、深さもあって実用性が高い。兄貴分のゴルフ譲りの使い勝手の良さが与えられたと同時に、室内の質感も同様に高められ、上位モデルへとグッと接近した印象だ。
インパネ回りも従来は黒一色で機能優先だったイメージから、VWの最新モデル同様にツヤツヤしたナビパネルが特徴的なインフォテイメントシステムの採用や、光りものを適度にあしらうことで質感も向上。エントリーカテゴリーといったイメージは、すっかり影を潜めている。
もっともパワーユニットに関しては上下関係がはっきりとしていて、VWモデルとしては初めて3気筒1Lエンジンを搭載。ボディはMQBの採用で3ナンバー化されたのに対して、エンジンはダウンサイジングされた。
直噴ターボユニットは、小排気量ならではの軽い吹け上がりによって、パワーを引き出してくれていて、リッターエンジンというサイズに不満はない。サウンド的にもトクトクトクッと3気筒特有の音も他のメーカーほど主張することなく、小気味良さが心地よいほど。なるほどこれなら先代の1.2Lターボエンジンを積まなかった理由が良くわかる。このサイズならではの切れ味と軽さが何よりおいしい。
スペック的にも同じ直噴ターボながら、1.2Lユニットがパワー90psに対して95ps、トルク160Nmに対し175Nmと、ともに上回っている。ひと回りボディが大きくなっていることで車重的には30㎏程度重くはなっているものの、その差を補ってくれていることは確かだ。
7速DSGもサクサクシフトアップしていき、パワーに不足がないことがよくわかる。
安定感と軽快さを両立させたその走り
乗り味そのものに関しては、固まり感があった先代モデルに対して、意外にもフロアからの細かな動きが感じられて、従来のコンパクトカー離れした重厚さから、軽快さが顔をのぞかせてくる。路面からの入力に対しても上下の動きを素直に反映させて、荷重移動も積極的。ヒョコヒョコと動くあたりは少々極端すぎるものの、アクセルのオンオフでフロントに荷重を乗せて行ったり、リアを踏んばらせるなど柔軟な走りを見せる。
高速領域になってくるとスッキリと穏やかな動きに転じるあたりに基本性能の高さを感じるものの、低速域ではサイズ感を活かした軽いフットワークを演出している点は少々意外だった。日本のユーザーには馴染みやすい乗り味と言っていい。
MQBによって柔軟なシャシ設計ができることで、新型ポロは明らかに次世代に向けて質感の高さや使い勝手の良いパッケージングを両立させるなど魅力は満載。その一方で上にゴルフ、下にup!が控えているポジショニングから、個性づくりにもこだわりを感じる。エントリーモデルから上位グレードへの橋渡しとして安定感と軽快さを両立させたハイブリッドな乗り味こそがポロの持ち味といえるだろう。
VWポロ TSIハイライン 諸元
●サイズ=4060×1750×1450mm ●ホイールベース=2550mm ●車両重量=1160kg ●エンジン=直3DOHCターボ 999cc ●エンジン最高出力=95ps/5000-5500rpm ●エンジン最大トルク=175Nm/2000-3500rpm ●トランスミッション=7速DCT ●265万円