カングーのMT率は、なんと30%以上
日本においてカングーのマニュアルトランスミッション率は、なんと30%にも達するという。ミニバンのカングーが、どうしてこれほどMT比率が高いのか? その最大の理由は、今まで2ペダルは4速ATしか選べなかったことにあると思う。
105ps/148Nmを発生する従来の1.6Lエンジンは決して非力ではないものの、思いのまま操るために、4速ATよりも5速MTのほうを選ぶユーザーも一定数いるというわけだ。
2014年に、念願の1.2Lダウンサイジングターボが搭載されたときも、トランスミッションは6速MTのみだった。だからカングー好きにとって、ゼンEDCは「待ちに待った1台」ということになる。おそらく日本では、このモデルがカングー販売の主流になっていくだろう。
ルノーおなじみの1.2L直噴ターボ「H5F」を搭載
新たに登場したこのゼンEDC。搭載されるエンジンは、ルーテシアやキャプチャーなど、最新ルノー車に多く搭載される「H5F」と呼ばれる1.2L直噴ターボ。これに6速ツインクラッチDCT(ルノーの呼び方ではEDC)を組み合わせる。
JC08モード燃費は14.7km/Lと、最新モデルとして数値的に大したことはないが、これは1450kgという重いボディのせいだろう。
高速で流れをリードできる
いざ走り出す。この6速DCTは、フォルクスワーゲンモデルのTSIのような直結感は少ないが、変速ショックもなく、ATのようなフィーリングでスルスルと速度を上げていく。ちなみに6速MTにはアイドリングストップ機能があるが、6速DCTモデルには付いていない。
115ps/190Nmのスペックだから、パワフル&トルクフルという印象はないが、それでも不足感はなく、クルマを前に進める。とくに80km/hくらいからの中間加速が小気味いい。
走り方によっては高速での流れをリードすることだってできる。この走りをAT限定免許の人も味わえるのだから、やっぱり大歓迎のことなのだ。
装備や乗り味においては、従来と変わらないのが逆に嬉しいところ。たっぷりとしていながらコシがあり、長距離でもまるで疲れ知らずのシートや、アタリ感が少なく、それでいてよく粘る足という、カングーにしかない魅力はそのままに、より「普通の走り」を手に入れた…という表現が適切だろう。
こうなると、アクティブのクルコンや自動ブレーキなど、最新技術を搭載してほしい…などと、今まで思いもしなかったゼイタクまで言いたくなってしまうのが唯一の難点か。それほど魅力的な1台に仕上がった。
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ちなみに。近年ルーテシアやトゥインゴなど、ニューモデルが続々日本にやってくるルノーにおいて、2016年のベストセラーモデルは、やはりカングーだった。根強い人気を誇るミニバンだ。
主要諸元
車種&グレード:カングー ゼン EDC
●サイズ:4280×1830×1810mm
●車重:1450kg
●エンジン・排気量:直4DOHCターボ・1197cc
●最高出力:84kW(115ps)/4500rpm
●最大トルク:190Nm(19.4kgm)/1750rpm
●価格:259万円