フロントタイヤで操舵して、リアタイヤで駆動する。役割を分担することで前後輪の限界性能を高めることができる。同じ後輪駆動でもFR、MR、RRといくつか種類があるが、FRはなかでも万人向けと言われている。なぜだろうか。

大きなエンジンを積めるFRは、基本的な素性にはすぐれた万人向けの操縦性

FRはシンプルな構造ゆえ、技術的なハードルが低かったというのがもともとのメリット。発展途上だった時代の自動車にとっては重要なことだ。

FRは縦方向にスペースは取るし、トランスミッションからリアデフまでつなげるプロペラシャフトがあるために、パーツ点数が多く重くなり、安くはないのだが、量産効果でコスト安だった面もある。逆にFFは、“その3”で解説するように技術的ハードルが高かった。

さらにFRは、クルマ全体のサイズさえ気にしなければ、大きなエンジンが搭載できるというのもメリットだ。クルマがパワーで人々を魅了し始めると、V8やV12などの大きなエンジンが開発されていった。そうした長いエンジンをボンネット内に縦置きしつつ、余裕のあるキャビンを確保できたのだ。

前が重いとはいっても、走り出してからパワーをかければリアタイヤで受け止めるから、駆動という面でも悪くない。ただし低μ路ではきつい。

画像: 操縦性とトラクション性能を両立させることのできるFR方式。

操縦性とトラクション性能を両立させることのできるFR方式。

操縦性の面でも、扱いやすさは他の駆動方式に比べて軍配が上がる。フロントにエンジンがあり、そこにステアリング機構があることで、先のパナール・エ・ルヴァッソールがそうだったように、常にある程度の荷重がフロントに乗っていてステアリングの効きがいい。基本的にはアンダーステア傾向だが、アクセルでリアをコントロールできるからオーバーステアにも移行しやすい。

逆にMRやRRはしっかり荷重を乗せる技量が必要となるが、その必要性が少ないわけだ。MRは重量バランスに優れるが、限界を超えるとピーキーで乗り手を選ぶ。RRはトラクション性能には優れる面もあるが、リアが重いから、テールを振り出すと、やはりその後の対処が難しく乗り手を選ぶ。その点FRは万人向けだ。

ではFRのデメリットはというと、プロペラシャフトがキャビンのセンターを通り抜けること。どうしてもセンタートンネルの空間が大きくなるからスペース的に不利となる。とくに小型車では居住性に難ありとなってしまう。

文:飯嶋洋治

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