メーカーやその本拠とする国によって、パドルシフトの固定位置が違うのはいったいなぜだろうか。モータージャーナリストのこもだきよし氏に聞いてみた。

モータースポーツの世界でも競技によって違う

2ペダルでもMTのようにドライバーの意思でシフトアップ/ダウンできるのがパドルシフトだ。ハンドルの裏側に操作レバー(パドル)を設けられている。

これは2ペダルスポーツカーの増加にともなって広く採用され、プレミアムカーでは標準装備されるようにもなった。さらに近年ではコンパクトカーでもパドルシフトを選べるようになった。そして最近になって、シフトアップは右側、シフトダウンは左側に統一されてきた。

しかし、ひと口にパドルシフトと言っても種類がある。操舵するとハンドルと一緒にパドルも動く「ハンドル固定式」と、パドルがコラム側に付いていて操舵してもその位置の変わらない「コラム固定式」だ。

国産車を見るとメーカーにより異なりが、スバルのようにコラム固定式からハンドル固定式に転向したところもある。世界的に見るとラテン系(イタリアやフランスなど)のブランドがコラム固定式を、ゲルマン系(ドイツなど)がハンドル固定式を採用する傾向にある。

ハンドル固定式のメリットは、ハンドルを微修正しながらでもパドルに指をかけておけるので、ドライバーがシフト操作のタイミングを計りやすいということだ。ただ、1‌8‌0度以上操舵すると左右どちらを操作すべきか考える時間が瞬間的にでも生じてしまうというデメリットもある。そんなときはセレクターレバーで操作するのがいいだろう。

画像: ブランドによって採用するパドルシフトが異なる理由は、その国の国民性とハンドル操作方法が関連していそうだ。

ブランドによって採用するパドルシフトが異なる理由は、その国の国民性とハンドル操作方法が関連していそうだ。

逆にコラム固定式だと操舵量に関係なくパドル位置は同じなので大舵角まで切るドライビングのときにはわかりやすい。デメリットを挙げるとすれば、指をパドルにかけながらの舵角微修正がしにくくなることくらいだろう。

モータースポーツの舞台に目を向けてみると、F1をはじめとする操舵角の比較的小さいレース車両にハンドル固定式が、カウンターを当てながら走るようなラリーやダートラなどの競技車両の多くにコラム固定式が採用されている。

筆者の好みはハンドル固定式だが、これはハンドルの操作方法に関係する。筆者は手を持ち替えずそのまま切るので、右手はシフトアップ、左手はシフトダウンと単純明快でわかりやすい。またパドルを小さくできるため、使わないときに邪魔にならないというメリットもある。コーナリング中に手をクロスさせない「送りハンドル」の操作ではコラム固定が合っている。

このふたつがどちらかに統一されることは、当分ないだろう。愛車選びのときは自分のドライビングスタイル(ハンドル操作方法)との相性を考えることが必要だろう。もっともクルマに合わせてドライビングスタイルを変えるという手もあるが・・・。

画像: コラム固定式パドルシフトの場合、レバーが大きくなりがち。どちらがいいかは、個人の好み。

コラム固定式パドルシフトの場合、レバーが大きくなりがち。どちらがいいかは、個人の好み。

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