
そもそも“T型フォード”って、なに?
単なる自動車という枠組みを超え、生産技術や労働、経済、文化など各方面に影響を及ぼした存在が、ご存じT型フォード(モデルT)だ。
1903年に設立されたフォードモーターの社長ヘンリー・フォードは、デトロイトの工場で1908年にモデルTをラインオフ、モデルTに絞り込んだ生産を行った。
ベルトコンベア化による大量生産、実用を重視した黒1色のみのボディカラーなど徹底したコスト重視で、登場当初の1台850ドルという車両価格から、最終的には290ドルという価格まで下がったことが爆発的な人気を呼び、1927年までの生産台数は1500万台を超えるメガヒットとなった。
週休2日/8時間労働が始まったのもフォードの工場。社会そのものを変革したクルマとも呼ぶことができる。しかしながらライバル車が高級化するにつれ、モデルTの大衆車然としたデザインや性能がユーザーから飽きられ、19年にも及ぶ生産は1927年に終了した。

▲フォードモデルT センタードアセダン(1915)のインパネはこんな感じでシンプル。余計なものがなく、目の前に箱ガラスがあるので、クルマの運転席という印象はない。ハンドルは大径で、もちろんノンパワステだ。
運転作法その1 エンジン始動〜走行
まずは1915年製フォードモデルT センタードアセダンの運転作法から。
①クランクハンドルを回しエンジン始動。
②右足でブレーキを踏み、左足でクラッチペダルを中ほどまで踏んでニュートラル位置に。
③ハンドレバーを最前方まで倒す。
④クラッチペダルを目いっぱい踏む。
走り出す。

▲クランクハンドルでエンジンを始動する。講習時は手回しではなく専用の機械で始動。

▲ハンドルの右手にあるスロットルレバー。下に下ろすと加速し、上に上げると減速する。

▲ハンドル左手側のレバーはスパークレバー。点火タイミングを決めるもの。下に下ろすと点火時期を早め、上に上げて遅める。

▲左手で操作するハンドレバー。手前に引いて駐車ブレーキ、中間でニュートラル、奥に押すとギアが接続する。

▲ペダルは3ペダル操作。右がブレーキ、中央はバックギア、左はクラッチで、真ん中あたりがニュートラル、奥まで踏むとローギア、足を離すとハイギアになる。
運転作法その2 走行時
⑤時速が10km/h程度になったら左足のクラッチペダルを離しハイギアにする。
⑥右手のスロットルレバーを操作すると速度が調整が可能。下に下ろすと速くなる。

運転作法その3 減速〜停止
⑦右手のスロットルレバーを上げ速度を落とす。
⑧左足のクラッチペダルを中ほどまで踏みニュートラル位置にする。
⑨右足のブレーキペダルを踏み、停止。
⑩ハンドレバーを手前に引き、駐車位置に。
運転作法その4 バック
⑪ハンドレバーをニュートラル位置に。
⑫真ん中のペダルを踏むとバックする。
1927年製モデルTクーペも運転した
もう1台、運転することができるフォード モデルTは、1927年製。先ほど運転した1915年製のセンタードアセダンと比べると、12年の年月が経っていて、T型フォードとしては最晩年のモデルとなる。基本的な運転作法は一緒だが、エンジン始動がセルモーター式となったり、ペダル位置が変更されていたりと、運転のしやすさは1915年製と比べると格段に良くなっている。
このモデルは医者の往診用によく使われたことから、当時「ドクターズクーペ」と呼ばれていたそう。

▲1927年製フォード モデルTクーペ。

▲クーペなので2シーター。

▲ペダルレイアウトは1915年製と一緒だが、3ペダルが離れて運転しやすくなっている。