フォーミュラ1は13インチ、フォーミュラEは18インチのホイールを採用する
さて、F1の2018年シーズンが開幕しました。新車のテスト走行は2月末から開始されており、その頃からすでに胸躍らせるファンの方も多いかもしれません。
ところで、もう見慣れたものではありますが、F1のタイヤは分厚くホイール径が小さい。13インチというホイールは、およそいまの市販車レベルとはかけ離れたものです。市販のスポーツモデルのイメージからすると大径ホイール+超偏平タイヤがお約束ですが、なぜF1にはその採用がないのでしょう?
ひとつ、昔から言われているのはホイールをインチアップすると、支持部のアップライトも大径化してしまうことです。
F1のブレーキには、カーボン製ディスクが使用されています。ハイスピードからのハードブレーキングによって発生する高い熱にも、性能や信頼性が損なわれないようにするための素材です。このカーボンディスク、当然ながら制動力も高い。
アップライトが大きければ、ブレーキディスクの大径化が可能。すなわち、ブレーキ性能がより高まります。制動距離がもっと短くなる。そうなるとコーナーの入り口で操る側のドライバーがブレーキングを遅らすことで、さらに追い抜きは困難となる。エンターテインメントとしては大きな痛手です。またドライバーがブレーキングを我慢しすぎることで、高速クラッシュ頻発の恐れも出てきます。
そんなスポーツ的な観点と、もうひとつがF1の競争原理です。何によって、ライバルとの差をもっとも生み出せるのか。
車体性能としては空力が一番です。その空力の追求に、嫌われるのが走行中の姿勢変化。それゆえ、いまのF1のサスペンションというのは、ほとんどストロークしないように開発されています。ドライバーにとってハンドリングがシビアとなるわけですが、実はこれをカバーしているのがタイヤなのです。タイヤが分厚ければたわみの量が大きく、これがサスペンションに代わる役目を果たす。偏平タイヤはそれが小さく、設計思想を一新せざるを得ません。
実は4年ほど前、ピレリが18インチホイールと偏平タイヤの導入を提案し、プロトタイプを製作したことがありました。実車を使ってのデモランも行われましたが、さほど関心は示されず採用には至りませんでした。
電気自動車のフォーミュラEのような歴史の浅い選手権では18インチの採用もありますが、F1でそれをやるには多くのハードルが待っているのです。