発売間もない新型エルグランドが、受注累計9000台を突破した。好調な立ち上がりと言えるなか、オーテック系の受注比率が異例なほど高い。そこにはどんなユーザーの本音が隠されているのだろうか。

文: 小林 淳
▶▶▶写真はこちら|日産 新型エルグランド「G e-4ORCE」「AUTECH e-4ORCE」(画像7枚)

新型エルグランドでオーテックが爆売れする理由

日本の高級ミニバンというジャンルを切り拓いた先駆者、日産エルグランド。1997年の初代誕生から脈々と受け継がれてきた「走りの楽しさ」と「圧倒的な存在感」を、最新技術で再創出した新型エルグランドは、受注累計が早くも9000台を突破するなど好調な立ち上がりを見せている。

画像: 受注累計9000台を突破し好調な立ち上がりを見せる4代目新型エルグランド。先代から全幅・全高を拡大し、フラッグシップにふさわしい「威風堂々」としたプロポーションと存在感を獲得している。

受注累計9000台を突破し好調な立ち上がりを見せる4代目新型エルグランド。先代から全幅・全高を拡大し、フラッグシップにふさわしい「威風堂々」としたプロポーションと存在感を獲得している。

その中でも特に興味深いのが、日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)が手掛けるオーテック系モデル群の受注比率だ。

ベース車の最上級グレードである「G e-4ORCE」(57%)が最量販を占める一方で、オーテック仕様となる「AUTECH e-4ORCE」(15%)や「AUTECH LINE e-4ORCE」(9%)、そして最高峰ショーファーモデルの「VIP e-4ORCE」(10%)を合わせると、実に全体の約34%(3台に1台以上)をオーテック系モデルが占めている。

画像: 受注全体の57%と過半数を占める「G e-4ORCE」。第3世代e-POWERや進化したe-4ORCE、電子制御サスペンションを標準装備し、走りのポテンシャルを極限まで高めた1台。

受注全体の57%と過半数を占める「G e-4ORCE」。第3世代e-POWERや進化したe-4ORCE、電子制御サスペンションを標準装備し、走りのポテンシャルを極限まで高めた1台。

新型エルグランドにおいて、これほどオーテック仕立てが熱い視線を注がれるのか、といえばその理由は、新時代を切り拓こうとしたベースモデルのインテリアデザインにおける「先鋭さ」と、そこから生じるユーザーの心理を紐解くことで自ずと見えてくる。

新型エルグランドの開発コンセプトは「LIMITLESS GRAND TOURER(リミットレス グランド ツアラー)」。ボディサイズも先代比で全幅を+45mm(1895mm)、全高を+160mm(1975mm)と拡大し、威風堂々としたプロポーションとクラストップレベルの広大な室内空間を手に入れた。

標準モデルとなる「X e-4ORCE(689万7000円)」や最上級の「G e-4ORCE(757万9000円)」のコックピットには、大型統合インターフェースディスプレイが2画面並び、モダンプライベートラウンジを体現した先進的なデザインが広がる。特にGグレードでは、日本の伝統工芸や美意識を取り入れた「紫檀(シタン)」や「銀雪(ギンセツ)」といった独自のインテリアカラーが与えられ、職人技を彷彿とさせる生地やシームレススイッチ、64色のアンビエントライティングなど、ハイテクと仕立ての良さが融合した上質な空間を作り上げている。

先進的すぎる内装と独自の世界観は、ユーザーを選ぶのも事実

画像: アイポイントが高く見晴らしの良い運転席周り。先進的なインターフェースが光る一方で、テーマ性の強い配色やデザインは、落ち着いた王道ラグジュアリーを求めるユーザーにはやや尖って映る場面も。

アイポイントが高く見晴らしの良い運転席周り。先進的なインターフェースが光る一方で、テーマ性の強い配色やデザインは、落ち着いた王道ラグジュアリーを求めるユーザーにはやや尖って映る場面も。

しかし、このインテリア表現は非常に「尖っている」のも事実だ。

従来のこのクラスで定番だった木目調や重厚なレザー感とは一線を画す、テーマ性の強いカラーリングや近未来的なアプローチは、落ち着いた伝統的ラグジュアリーを求めるユーザー層にとっては、少々先進的すぎて好みが分かれるポイントでもある。

画像: 受注全体の15%を占める「AUTECH e-4ORCE」の専用インテリア。初開発の専用プレミアムナッパレザーシートやさざなみ柄キルティングを採用するなど、ベースモデルの先進的な雰囲気とは違った世界観を確立している。

受注全体の15%を占める「AUTECH e-4ORCE」の専用インテリア。初開発の専用プレミアムナッパレザーシートやさざなみ柄キルティングを採用するなど、ベースモデルの先進的な雰囲気とは違った世界観を確立している。

さらに、ミニバンの要となる2列目シートのキャラクターにも特徴がある。Gグレードの2列目には、身体を沿わせるように支える新設計の「ゼログラビティシート」や、電動デュアルリクライニング、オットマン、シートベンチレーションなどが奢られている。ドライバーズミニバンとして走りの楽しさと後席の快適性を高い次元で融合させているが、純粋なおもてなしや送迎用途に特化したライバルのトヨタ・アルファードの上級グレード「エグゼクティブラウンジ」の贅沢な内装加飾&装備群と比べると、雰囲気に軽さや物足りなさを覚えるユーザーもいるはずだ。

「オーテック」投入で選択肢を拡大。小さな違和感をさり気なくカバー

こうしたベースモデルの弱みをカバーしているのが、オーテック系モデルになる。

受注全体の15%を占める「AUTECH e-4ORCE(824万7800円)」は、湘南の海にインスパイアされた「プレミアムスポーティ」をコンセプトに掲げており、ブラックを基調にブルーステッチを効かせた専用インテリアを採用。AUTECHのために開発された専用プレミアムナッパレザーシートを筆頭に、さざなみをモチーフにした専用キルティングやダーククローム加飾をドアトリムやインストパネルに施すことで、ベースモデルとは違った世界観を確立している。

画像: 受注の9%を占める「AUTECH LINE」。オーセンティックでスポーティなエクステリアと、専用のブラックシートやダーククローム加飾を組み合わせ、クールなスタイリッシュさを追求したモデルだ。

受注の9%を占める「AUTECH LINE」。オーセンティックでスポーティなエクステリアと、専用のブラックシートやダーククローム加飾を組み合わせ、クールなスタイリッシュさを追求したモデルだ。

ちなみに9%を占める「AUTECH LINE e-4ORCE(717万9700円)」は、オーセンティックでスポーティな外観と専用シート&上質なダーククロームの仕立てが特徴で、10%占める「VIP(869万8800円)」は、贅沢な加飾がプラスされた法人ニーズも意識したショーファー色の強いモデルになる。

日産自動車は近年、ブランド全体の価値向上と多様なニーズへ応える柱として、オーテック&ニスモの強化を明確に公言している。VIPまで含めると全体の3台に1台以上(約34%)が付加価値が高いオーテックモデルを選んでいるということは、日産にとってはまさに狙い通りだろう。

新型エルグランドは、中心価格帯が700万〜800万円台という高価格帯の高級ミニバンだけに、今後の市場動向がどう推移していくかはまだ未知数な部分もあるが、走りの楽しさも、最高のもてなしも妥協したくないというユーザーにとっては、クルマ選びの選択肢の幅を広げてくれるオーテック系モデルは、ちょうどいい存在だろう。日産のプレミアム戦略と昨今のユーザーニーズが噛み合った新型エルグランド。その勢いは、さらに加速していきそうだ。

画像: 受注の10%を占める最高峰モデル「VIP」。プレミアムナッパレザーや15.6インチ後席モニター、読書灯などを標準装備し、法人ニーズや社長車としての贅沢なおもてなし空間を実現している。

受注の10%を占める最高峰モデル「VIP」。プレミアムナッパレザーや15.6インチ後席モニター、読書灯などを標準装備し、法人ニーズや社長車としての贅沢なおもてなし空間を実現している。

日産 エルグランド AUTECH e-4ORCE 主要諸元

●全長×全幅×全高:5045×1910×1975mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2440kg
●エンジン:直3 DOHC+モーター
●総排気量:1498cc
●最高出力:103kW(104ps)/5000rpm
●最大トルク:228Nm(23.2kgm)/3600rpm
●フロントモーター最高出力:151kW(205ps)/4400-8500rpm
●フロントモーター最大トルク:330Nm(33.7kgm)/0-4300rpm
●リヤモーター最高出力:100kW(136ps)/5500-10900rpm
●リヤモーター最大トルク:195Nm(19.9kgm)/0-3000rpm
●トランスミッション:なし
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・67L
●WLTCモード燃費:未発表
●タイヤサイズ:235/60R18
●車両価格(税込):824万7800円

おすすめ関連記事

This article is a sponsored article by
''.