石川芳雄氏がレポートするメルセデス・ベンツGLC 220d 4マティック クーぺ スポーツの試乗記、後編ではその走りを中心に紹介しましよう。

走りの味付けはオンロード志向素早い身のこなしを見せる

ハンドル左側のダッシュパネル上にあるスタートボタンを押してエンジンを始動させると、ディーゼルエンジンとは思えない静粛性と低振動に驚かされた。

搭載されるOM651ユニットは10年ほど前から搭載が始まった2.2Lの直列4気筒ブルーテックディーゼルで、すでにこの後継となるOM654という新ユニットも控えているが、さすがに熟成の進んだ感があり、静かでスムーズな上に吹け上がりも非常に素直。レブリミットも5000rpmとディーゼルエンジンとしてはかなり高めで、4500rpmあたりまでストレスなく回る。

画像: 乗り味は硬めで、ワインディングではクイックな動きを見せる一方、高速走行時には高い操縦安定性を見せる。

乗り味は硬めで、ワインディングではクイックな動きを見せる一方、高速走行時には高い操縦安定性を見せる。

スチールブロックのディーゼルエンジンのため重さもそれなりにあるようで、GLC220d 4MATICクーペスポーツの車重は1960kgと結構重い。しかし最大トルクが400Nmもあるため走行フィールに重量感はない。むしろ重めの車体に対してちょうど良いトルク感という感じで、強引に引っ張られるような感覚が少なく、回転の上昇とともに素直に車速が上がって行く感覚が好ましい。

画像: 試乗車の2.2L ディーゼルターボほか、2種類の2Lターボ、プラグインハイブリッド、3L V6ターボも用意。

試乗車の2.2L ディーゼルターボほか、2種類の2Lターボ、プラグインハイブリッド、3L V6ターボも用意。

GLCクーペはその性格上、エアサスペンションを装備する上級モデルを除き、硬めの固定減衰力ダンパーを備えた足まわりが採用されている。そんなこともあって乗り味は結構硬めだ。それゆえ荒れた路面では相応の突き上げを感じることもあったが、シャキッとソリッドなライドフィールは悪くない。

しかも、可変レシオのギア比を持つパワーステアリングの効能もあって、ワインディングでの身のこなしはかなりクイック、操舵に対してノーズがキビキビと反応するし、旋回時もあまりロールせず姿勢はフラット。最近のSUVはこうしたオンロード向けの味付けが多いが、その中でもGLCクーペの腰の座り方、安定感はかなりレベルが高いと感じた。

画像: 4WDではあるが、後輪へのトルク配分が大きく、タイヤは前後でサイズが濃なる19インチを装着する。

4WDではあるが、後輪へのトルク配分が大きく、タイヤは前後でサイズが濃なる19インチを装着する。

これには4MATICの効能もあるようだ。GLC以上のFRベースの4MATICは、前後輪の回転差を吸収し、トルク配分も受け持つセンターデフを有する4WDだ。GLSなどの大型SUVが採用するのは前50:後50の等比率トルク配分が基本だが、GLCの4MATICは後輪の駆動力配分を前輪よりも増やしスムーズな回頭性を得られるようにしている。その駆動力配分は、これまで45:55が多かったのだが、このGLCクーペでは前33:後67まで後輪の配分を上げて来ている。

センターデフ式フルタイム4WDは、横風など外乱が入った時にもピシッと直進する安定性の高さが魅力。一方の旋回時は、前述の前後駆動力配分の効能で、フロントタイヤが十分な横力を発生させるとともに、後輪を中心とした強大なトラクションで強烈な安定感とともに力強くコーナーから脱出できる。通常4WDであることを意識することはないが、その安定感と運動性能の高さに4MATICはしっかり貢献しているのである。

SUVらしい機能性とSUVらしからぬ高い運動性能を、流麗なスタイリングの手頃なサイズ感のボディで楽しめるGLCクーペは、強力なニューカマーと言っていいだろう。 
(文:石川芳雄/写真:永元秀和)


主要諸元 <GLC220d 4MATIC クーぺスポーツ[本革仕様]> 全長×全幅×全高=4735×1930×1605mm ホイールベース=2875mm 車両重量=1960kg エンジン=直4DOHCディーゼルターボ 2142cc 最高出力=125kW(170ps)/3000-4200rpm 最大トルク=400Nm(40.8kgm)/1400-2800rpm トランスミッション=9速AT 駆動方式=4WD JC08モード燃費=16.2km/L タイヤサイズ=前235/55R19:後255/50R19 車両価格=7,750,000円

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