その出会いは1本の電話から
「N(担当)さん、珍しいクルマを手に入れたので乗りに来ませんか?」
旧知の仲であるカーマニアからの1本の電話。聞けば「30年前に限定200台で登場したクルマ」を手に入れたという。「ナンバーも取ってますから、一般道で試乗できますよ。遊びに来てください」。
さらに話を聞けば、それは「BUBUクラシックSSK」というクルマなのだという。あの光岡自動車が、いまから30年前に、初めて作ったレプリカカーとのこと。その後、「オロチ」「ガリュー」などオリジナルカーの製作を行うミツオカの「原点」のような1台なのだという。だが、そう言われてもクルマのカタチが思い浮かべられない。ボクも自動車誌の編集歴は長いほうなのだが、それほどレアなクルマだ。
ちなみに、「ホリデーオート」や「モーターマガジン」など、1987年当時の自動車誌バックナンバーを、目を皿のようにして探したけれど、その情報はまったく載っていない。唯一、光岡自動車のホームページ「生産終了車」の所に2行だけ、紹介があるのみだ。
それでも「あのルパン三世の愛車で、けっこう今でもイベントとかに乗っていくと人だかりができるくらい人気ですよ」と聞けば、もう“乗りたい”という気持ちが高まる。東北新幹線に乗り、宮城県に飛んだ。
BUBUクラシックSSKって?
初めて目にしたBUBUクラシックSSKはクラシカルなデザインで、街を走るとものすごく注目を集める1台。これが「日本車」なんて、たぶん誰も思わないだろう。
驚いたのは車検証を見たとき。車検証記載のこのクルマの車名は「フォルクスワーゲン」。また初年度登録は「昭和63年8月」だが、注記として製造年月が「昭和45年1月」と書かれていることも不思議なこと。
想像するにたぶんこれ、昭和45年製のフォルクスワーゲン車をベースにした「キットカー」だということなのだろう。「オロチ」などフルオリジナルカーではなく、当時のBUBUがコーチビルダーを目指していた証拠とも言えそうだ。
日本に「たぶん20台くらいしか残ってないんじゃないでしょうか」というレアモデル。まずはエクステリアを写真で詳しくみていこう。
→後編に続く
■文と写真:ネギシマコト
BUBUクラシックSSK 主要諸元
●全長×全幅×全高=3920×1695×1220mm ●ホイールベース=2400mm ●トレッド前/後=1415/1425mm ●車両重量=740kg ●乗車定員=4名 ●エンジン=空冷対向4気筒・1584cc ●最高出力=50ps ●最大トルク=10.8kgm ●トランスミッション=4速MT ●タイヤサイズ=175SR14 ●車両価格(当時)=295万円