フェラーリが得意とするコースだが、波乱の要素も多い
1950年のF1発足当初から途絶えることなく続く伝統のイタリアGP。開催されるモンツァ・サーキットは、エンジン全開率80%、最高速は370km/hにも達する1周5793mの超高速コースで、昨年2018年にフェラーリのキミ・ライコネンが記録したコースレコードは1分19秒119。その平均速度は263.587km/hにもなる。
コース形態は4本のストレートをコーナーでつないだシンプルなもの。長いストレートからのブレーキング、立ち上がってフル加速という繰り返しで、オーバーテイクは難しく、予選順位が重要となる。また、ブレーキ使用率は低いものの負荷が大きいのも特徴で、マシンは低ダウンフォース仕様を使う。
シンプルなコースレイアウトであるからこそ迫力満点で、アスカリシケインから最終高速コーナーのパラボリカを抜けた後、1.12kmのホームストレートで最高速370km/hに達し、1コーナーのレティフィロシケインで70km/hまで一気に減速する。伝統的に地元フェラーリがこのコースを得意としている。
そのフェラーリはこのレースからパワーユニットのアップグレードを行う。セバスチャン・ヴェッテルとシャルル・ルクレールはグリッド降格のペナルティを受けない形でエレメント交換されるようだが、前戦ベルギーGPでこのパワーユニットを先行して使用したアルファロメオのアントニオ・ジョビナッツィはエンジンブローを起こしている。対策はとっているはずだが少々心配だ。
一方、ホンダ勢もレッドブルの マックス・フェルスタッペンとトロロッソのピエール・ガスリーのマシンに新しいスペック4のパワーユニットを搭載する。この新エンジンはアレクサンダー・アルボンとダニール・クビアトがベルギーGPで好結果を出しているだけに期待が高まるが、こちらはグリッド降格ペナルティを受けることになりそうだ。
ちなみに、昨年のイタリアGPはフェラーリがフロンロウを独占したが、セバスチャン・ヴェッテルはルイス・ハミルトンと接触して後退、タイヤ交換を遅らせるメルセデス勢の巧みな戦術にポールのキミ・ライコネンもはまり、ハミルトンに逆転優勝を許した。
タイヤを供給するピレリは、今回のイタリアGPについて「モンツァではどのマシンも低ダウンフォース仕様となるため、タイヤは最大限のメカニカルグリップを必要とします。ドライバーはリアタイヤのグリップ低下、縁石をケアしなければなりません。モンツァは伝統的に追い越しにくいコースとして知られていて、昨年はルイス・ハミルトンは3番グリッドからワンストップ戦略で優勝しましたが、タイヤ戦略の違いがレースに大きな影響を与えることも示しました。また、モンツァの天気は通常乾燥して暖かいですが、過去2年間、雨が降っています 」とレースのポイントを分析している。
一方、ホンダの田辺豊治 F1テクニカルディレクターは「イタリアGPではスペック4のパワーユニットをフェルスタッペン選手とガスリー選手にも投入します。ふたりともそれによるペナルティで後方からのスタートになりますが、力強いレースを期待しています。先日のベルギーGPで収集したデータを分析し、セッティングを煮つめていきます。スペック4のパフォーマンスを最大限引き出し、ベルギーGPでの3台入賞といういい勢いを維持しながら、いいレースができればと思います」とコメント。ホンダ勢4人のドライバーは次のように語っている。
マックス・フェルスタッペン
「スパではさまざまな感情が去来する週末となりましたし、色々考えてしまう部分はありましたが、2週連戦でそのままレースウイークに入っていけることはうれしく思います。モンツァは超高速コースで、ドライブするのは楽しいですが、僕らにとっては、スパ同様にチャレンジングで相性のよくないサーキットになります。モンツァには長い歴史があり、集まるファンも年間で一番といえるほど情熱的です。グランドスタンドは赤で染まると思いますが、オレンジ軍団もサーキットで僕らを目一杯応援してくれればうれしいです」
アレクサンダー・アルボン
「スパではペナルティが決まっていて決勝レースでの走りに重きを置いていましたが、今回は予選での走りにフォーカスしていくことになると思います。我々にとってモンツァは相性がいいとは言えませんが、今回はマシンの経験があるのでスムーズに進められるはずです。スパで5位というのは素晴らしい結果でしたが、まだ課題と改善点があるので、今週末に向けた宿題をきちんとこなして、マシンの理解を深められるようにしていきます」
ピエール・ガスリー
「モンツァは歴史があり、好きなサーキットです。とくにレズモ、アスカリ、パラボリカはマシンがスライドしやすく、ドライバーにとっては挑戦しがいがあって楽しいコーナーです。高速サーキットで、F1マシンで走るとアドレナリンが吹き出します。僕が得意としているサーキットで、昨シーズンの予選では競争力がないと思われている中でトップ10に入ることができました(予選9位)。レースは苦しい展開になってしまいましたが(決勝14位)、ともかく今週末を迎えるのが楽しみです。今回はパワーユニットをアップデートするため、ペナルティにより後方スタートになりますが、決勝に照準を合わせてセッティングを進め、そこから上位を目指します」
ダニール・クビアト
「スパでは後方スタートから7位でフィニッシュできました。モンツァはスパと同じパワーサーキットなので、期待を持っています。F1ではモンツァでいい成績を収められていませんが、ジュニア時代には何度も優勝していますし、走りがいのあるコーナーがあって好きなサーキットです。スパを走り終えて、まだまだ上位で戦えると確信していますし、新しいパワーユニットがそれを手助けしてくれるでしょう。シケイン、そしてレズモやパラボリカの高速コーナーの攻略がいいラップタイムのカギになりますが、コーナー数が少ないのですべてが重要です」
F1第14戦イタリアGPは、9月6日金曜日11時(日本時間18時)からのフリー走行1回目で開幕、予選は9月7日15時(日本時間22時)、決勝は9月8日15時10分(日本時間22時10分)に開始される。
2018年 イタリアGP 予選結果(参考)
順位 | ゼッケン | ドライバー | チーム | タイム |
---|---|---|---|---|
1位 | 7 | K.ライコネン | フェラーリ | 1:19.119 |
2位 | 5 | S.ヴェッテル | フェラーリ | 1:19.280 |
3位 | 44 | L.ハミルトン | メルセデスAMG | 1:19.294 |
4位 | 77 | V.ボッタス | メルセデスAMG | 1:19.656 |
5位 | 33 | M.フェルスタッペン | レッドブル | 120.615 |
2018年 イタリアGP 決勝結果(参考)
順位 | ゼッケン | ドライバー | チーム |
---|---|---|---|
優勝 | 44 | L.ハミルトン | メルセデスAMG |
2位 | 7 | K.ライコネン | フェラーリ |
3位 | 77 | V.ボッタス | メルセデスAMG |
4位 | 5 | S.ヴェッテル | フェラーリ |
5位 | 33 | M.フェルスタッペン | レッドブル |