OZホイールは10年先のクルマに見合ったホイール作りをすでに始めている
OZホイールがモータースポーツで活躍しているのは別項で触れたとおりで、これまで4回にわたり「OZの華麗なる変遷」で紹介してきた。そして最後のコラムとなる今回は、OZと市販車との関係や、電動化への対応など今後の動きを追ってみたいと思う。
こと市販車に関しては、スーパーカーがOZホイールをチョイスするケースが多い。そのためフェラーリ、ランボルギーニ、マセラティ、アストンマーティン、ロータス、マクラーレン、アバルトなどのブランドと提携している。代表的なモデルで見ればフェラーリ テスタロッサ、ランボルギーニ カウンタック、ロータス エスプリ、マクラーレン F1 LMに加え、ブガッティ ヴェイロン、メルセデス・ベンツ SLR、パガーニ ゾンタと言ったウルトラスーパーカー、そして日産 GT-R50 by Italdesignなど、そうそうたるモデルがリストアップされる。
一方でOZはカロッツェリアやチューナーとの付き合いも深い。ピニンファリーナ、ベルトーネ、イタルデザインと言ったイタリアンデザインブランドをはじめ、ダラーラ、パガーニ、フィッティバルディ、チゼータと言ったスペシャルブランド。そしてAMG、ハルトゲ、シュトロゼック、ケーニッヒ、カールソンなどのチューナー系と、高性能マシンはOZを求めている。こうした展開はレースやラリーで培ってきた「ウイニングホイール」としての信頼性ゆえである。
現在のOZはヴェネト州パドバ県サンマルティーノ・ディルパリに本社を置き、メインの製造拠点もそこに構えている。ヴェネト州の州都はヴェネチアだ。かつてのF1ドライバー、リカルド・パトレーゼはパドバ県出身。そんなこともあり、OZレーシング初のドライバーに彼が起用されたことは納得ができる。
このパドバでイタリア職人の丁寧な作業によってOZホイールは作られている。OZ製品のアフターマーケット用は、25色以上のカラーバリエーションと70種類以上のモデル展開、そして14~22インチまでのサイズを製造している。OZブランドとしてはOZレーシングの他に、スパルコ、MSWも展開することで幅広いユーザーに対応している。50年前に片田舎のガソリンスタンド裏で始めたアルミホイールの製造は、今や世界72カ国で販売されにまで成長した。
今後求められるサステイナブルな社会にもOZはいち早く対応している。2016年からはハイブリッド車と電気自動車向けのホイール開発を進めている。一方でフォーミュラEレースにおいてワンメイクサプライヤーとしてホイールを供給。ここで得たノウハウを注入した新製品「スーパーツーリズモ エアロe」が、間もなくリリースされる。
ちなみにフォーミュラEは18インチを採用しており、2022年からF1も現在の13インチから18インチへ変更される。パワーユニットの違いはあれど、OZがホイールサイズの基準を先取りしているのは間違いない。
またOZは、折り畳み式の電動アシスト自転車をEUで販売している(日本でも間もなく発売予定)。一方で年々熱を帯びているスチューデントフォーミュラへも10年にわたりホイールを供給している。こちらはマグネシウム鋳造と言う新しい技術を用いて、比較的安価で軽量化と高強度を両立し、将来のエンジニア育成にも注力している。電動化への対応と合わせてOZはしっかりと10年先を見据えて歩を進めているのだ。