「電動化」という記号性が生んだスポーツカーの新たな可能性
2022年、ルノー5(サンク)生誕50周年を祝う特別なモデルがまた1台、現れた。
それがこちらの「R5 ターボ 3E」。80年代、WRCのホモロゲーションモデルとして世界中のコンパクトスポーツファンを熱狂させた「5ターボ」と「5ターボ2」をオマージュする、フルバッテリースポーツEVだ。2022年9月25日開催のショーでワールドプレミアされた後、10月17日から始まるパリモーターショー2022にも出品される。
「R5 ターボ 3E」という車名は、ターボ2の伝統を受け継ぐことを示す「3」と、全モデル電動化の未来へとつながる「E」を組み合わせている。伝統ある名車の歴史に電動化という記号性を加えることで、ルノー流コンパクトホットハッチの新たな理想形を作り上げた。
実車が初めてお披露目されるのは、CHANTILLY ARTS &ELEGANCE (シャンティイ・アーツ&エレガンス)というイベント。「クルマの未来とファッション、ライフスタイル」をテーマに、パリ郊外にあるシャンティイ城の敷地で開催される。エレガントな雰囲気が漂うコンテストだけに、プレミアの演出もそうとう凝ったものになるようだ。
A HIGH PERFORMER DESIGNED TO DRIFTとは、なんとも刺激的
直訳すれば「ドリフトするためにデザインされた高性能モデル」といった意味合いだろうか。左右の後輪にはそれぞれ電気モーターがビルトインされ、バッテリーはフロアの中心に位置する。パワートレーンのレイアウトは、リアミッドに強力なターボユニットを搭載し後輪を駆動したご先祖様たちと同様となる。
それにしても1トンに満たない全長4mほどの小さなボディを、最高出力380ps、最大トルク700Nmで「押し出す」というのだから、遅いハズはない。
公表されているポテンシャルは、停止状態から100メートルの加速がわずか3.5秒(ドリフトモードでは3.9秒)、最高速度は200 km / hに達するという。バッテリー容量は42kWh。トラックを数周攻め込んだり、ジムカーナ競技を全開で楽しむには十二分な余裕を確保している。
ボディはチューブラーシャシーで構成され、フラットな床面とFIA規定に合致したロールバーによって守られる。あえてターボ2ライクにデザインされたボンネット、ドアなどは、カーボンファイバーを採用した。リアフェンダーのエアインレットもまたある意味、伝統を象徴するデザインモチーフと言えるだろう。しっかり2シーターとされているのもまた、こだわりというところか。
そこかしこにノスタルジーを感じさせながらも、細部の機能性はしっかり現代のものであり、遊び心に富んでいる。たとえばボンネット上のエアインテークには、バッテリーを純電するためのソケットが設定されている。またテールライト上部などのシースルー化された部分は、あえて電動パワートレーンを「見せる」ためのアレンジだ。
リアルでありながら同時に、NFTを介してバーチャルゲーム向けにもリリースを予定しているというあたりも、これからのスポーツカーのありようを象徴している。実車を手に入れるのはなかなか難しいけれど、バーチャルなら・・・と、ひそかに妄想を巡らせるのも、まさに「今どきの楽しみ方」と言えるだろう。
■R5 TURBO 3E 主要諸元
全長:4006mm(リアスポイラー含む)
全幅:2020mm
全高:1320mm
ホイールベース:2540mm
オーバーハング 前・後/625・740mm
車両重量:980kg(うちバッテリー重量は520kg)
パワートレーン:電気モーター
最高出力:280kW(380hp)
最大トルク:700Nm
バッテリー種類・容量:リチウムイオン・42kWh
最高速度:200km/h
タイヤサイズ前・後:225/35R19・3255/25R20
0→100km/h加速:3.5秒(ドリフトモード時:3.9秒)