現行モデル発表日:2021年12月10日
車両価格:94万3800円〜137万9400円
「基本性能は高く、敷居は低く」を貫いている
アルト Aは、もっともベーシックなグレードだ。バンなどの商用向けモデルがない今、Aがその代わりを担っている。そんな“素”のアルトはどのようなクルマなのか。
まずはそのスペックだが、エンジンは0.66Lの直3 NAでエネチャージが付く。もちろん、モーターなどはなく動力源はエンジンだけとなる。トランスミッションはCVTのみで、車両本体価格はFF車が94万3800円、4WDが107万5800円となる。このロープライスながら、エアバッグ(デュアル、サイド、カーテン)デュアルカメラブレーキサポート、車線逸脱警報などなど標準装備される安全・運転支援機能は他グレードと同じ内容だ。
対面した試乗車のボディカラーとスチールホイールのせいもあるが、いかにも商用向けっぽい雰囲気だ。カタログを見てみると、Aに用意されたボディカラーは3色しかない。ここからも徹底したコストダウンに取り組んでいることがうかがえる。
車内は質素ではあるが、意外と安っぽさは感じられない。ヘッドレスト一体型のシート地はデニム風の色と風合いでおしゃれな印象だ。ただし、リアシートのヘッドレストはオプションで試乗車には装備されていないこと、リアサイドドアのウインドーは固定式で開閉できないといった点にベーシックグレードであることを実感する。インパネまわりは装飾などは必要最小限だが、オプションのディスプレイオーディオが装備されていたので、スマートフォンとリンクさせればナビも使えて、取材時にとくに困ることもなかった。
まずは一般道を走り始めると、想像以上に元気に走ることにビックリした。エンジンのスペックはNAの軽自動車では標準的なスペックでも、試乗車の車両重量はわずか680kg。これでフットワークの軽さが効いているのだろう。しかもけっして立派とは言えないサイズのエコタイヤを履いているが荒れた路面でも外乱を拾うことなく真っ直ぐに進んでいく。
続いて高速道路に入ってみる。さすがに合流などではもう少し力が欲しいと感じたが、80km/h程度で巡航しているぶんにはとくに不満は感じない。それどころか、アクアラインの橋の上では、強めの横風にも負けずズンズンと進んでいく走りは頼もしい。
アルトの、しかも最廉価なベーシックグレードでも走りと安全という基本性能はきちんと担保しながら安くクルマを提供する。それを実現するスズキのノウハウと気概には恐れ入った。
スズキ アルトA 主要諸元
●パワーユニット:0.66L 直3DOHC
●総排気量:657cc
●最高出力:36kW(49ps)/6500rpm
●最大トルク:58Nm(5.9kgm)/4000rpm
●駆動方式:FF
●サスペンション形式:前ストラット、後トーションビーム
●タイヤサイズ:155/65R14
●車両価格:94万3800円