明暗分けたセーフティカー時の戦略
前日のスプリント、そして予選でも優勢だったマクラーレン勢が決勝で一転、まさかの展開で痛恨の敗北を喫した。
鍵になったのはタイヤの摩耗が激しいロサイル用に設けられた1タイヤ25周の使用制限(57周レースなので必然的に全車が2ストップとなる)と、7周目というタイミングで出たセーフティカーだった。
スタートではポールポジションのピアストリが飛び出し、フロントロウに並んだチームメイトのランド・ノリスが3番グリッドのフェルスタッペンの好ダッシュにかわされれるという展開。しかし首位のピアストリのペースは圧倒的で、フェルスタッペンに首位浮上のチャンスはないかと思われた。

序盤はチャンピオン争いを繰り広げる3人がデッドヒート。ポールポジションのピアストリがリードを奪い、フェルスタッペン、ノリスと続く。
ところが、7周目、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)とニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)が接触し、ヒュルケンベルグがストップしてセーフティカーが導入されたことでレースは大きく動く。
7周目というタイミングは残り50周をちょうどタイヤ使用制限ギリギリの25周づつで分ける戦略が可能な地点。当然全車がピットインでのタイムロスが少ないセーフティカー出ている間にタイヤ交換をするかに思われたが、ここでマクラーレンは戦略の柔軟性が失われることを嫌って2台ともステイアウトを選択したのだ。
タイヤ交換を終えたフェルスタッペンはセーフティカー中に悠々とマクラーレン勢の背後につき、ここからはピアストリとノリスがタイヤ交換までにいかにフェルスタッペンを引き離すかに焦点が移った。
フェルスタッペン連勝で最終戦決着へ
レースは11周目に再開。マクラーレンの2台は猛烈なペースで飛ばしたが、フェルスタッペンも食らいつき、思ったように差は広がらない。結局、ピアストリ24周、ノリス25周目のタイヤ交換で、フェルスタッペンが15秒ほどの差をつけて首位に立った。
32周目、フェルスタッペンは“規定通り”の32周目にハードタイヤに交換。再び1-2体制となったマクラーレンだったが、この局面でもレッドブルを引き離すことはできず、ピアストリが42周目、ノリスが44周目に2度目のタイヤ交換に入った時点で勝負あり。最終盤はタイヤを労わる余裕も出たフェルスタッペンが、マクラーレンのふたりと並ぶシーズン7勝目のチェッカーに飛び込んだ。

セーフティカーのタイミングでの1回目のタイヤ交換を行ったフェルスタッペンが、2回のタイヤ交換で優位に立ってマクラーレン勢を逆転。「してやったり」の勝利をあげた。
「してやったり」の展開で劣勢を跳ね返したフェルスタッペンは「信じられない。チームがいい仕事をしてくれた。マクラーレンの判断? 興味深い動きだったね(笑)」と破顔一笑。
一方、この週末は常に最速だったものの、不可解なステイアウトの判断に泣く格好になった2位のピアストリは「もっと違う戦い方があったと思う。これからチームと話し合いたい」と悔しさを滲ませた。
第2スティント終盤にペースの上がらなかったノリスは、結局表彰台圏外の4位でフィニッシュ。これでポイントリーダーのノリスに12点差でフェルスタッペン、16点差にピアストリという状況で最終戦を迎えることになった。

今回のカタールGPでは、1タイヤ25周の使用制限が課されていたこと、ちょうど50周を残す7周目にセーフティカーが出たことでほぼ、全車がピットイン。マクラーレン勢がピットインしなかったことで流れが大きく変わった。
その最終戦第24戦アブダビGPは、12月5日にアラブ首長国連邦の首都アブダビのヤス・マリーナ・サーキットで開幕、決勝レースは12月7日に開催される。(文:新村いつき)
