文: 小林 淳
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1)ターゲット層が明確に異なる「エルグランド」と「セレナ」
新型エルグランドの好発進が話題を呼んでいるが、そもそもセレナとはターゲットとする顧客層が大きく異なっている。
エルグランドが追求するのは、プレミアムな室内空間と優雅な走りであり、主にグランドツーリングやラグジュアリーな移動体験を求めるユーザー層に刺さるキャラクターとなっている。一方でセレナは、日常の使い勝手やファミリーの居住性、コストパフォーマンスを徹底的に追求したファミリーカーのド本命だ。

広大な室内空間には3列シートがおさまる。多彩なシートアレンジ機構に加え、サードシートにも厚みのあるクッションを採用するなど、どの席でも快適に過ごせる工夫も光る。ファミリーユーザーから高く評価されるのも納得。
実際、2026年1〜7月の登録台数は約4万台と、コンスタントに毎月6000台近くは売れていることになる。
すでに年始の段階で、今夏のエルグランドの投入はアナウンスされていたが、その影響でセレナの顧客が流出したということもない。むしろ日産のミニバンラインナップの中で明確な役割分担がなされていることが、セレナの安定した支持に繋がっている、とも考えていいだろう。
2)熟成された「e-POWER」の圧倒的な評価
さらに現行セレナが支持される最大の理由となっているのが、進化した「e-POWER」の存在だ。
100%モーター駆動ならではのスムーズで静粛性の高い走りや、レスポンスの良い加速感は、従来のミニバンイメージを覆すもの。その評価の高さを実感できるのが、現在のセレナの販売比率の8割近くはe-POWERモデルが占めるということだ。

日産独自の電動パワートレーン「e-POWER」は、高効率ガソリンエンジンが発電し、その電力を利用して大出力モーターを駆動する仕組み。エルグランド搭載の最新世代ではないものの、モータードライブならではの静かで力強い加速と、優れた燃費性能を高い次元で両立している。
それでいてe-POWERモデルの価格が330万円台(e-POWER Xで329万3400円)から設定されている点も見逃せない。先進の電動パワートレーンと広い室内空間を兼ね備えながら、手の届きやすい価格帯に収めている買い得感の高さが、ファミリー層からの熱烈な支持を獲得している格好だ。
3)ライバルに対する「納期」と「供給力」の強み
ミドルミニバンにおいて、絶対的なライバル関係にあるのがトヨタのノア&ヴォクシーだ。しかし、ノア&ヴォクシーは膨大な受注に対して慢性的な品薄状態が続いており、納車までに6か月以上、グレードや仕様によってはそれ以上の期間を要するケースも少なくない。
それに対してセレナは供給体制は安定していて、仕様にもよるが、早ければ契約後1〜2か月ほどで納車される。このスケジュール感は、「車検のタイミングまでに納車してほしい」「すぐにファミリーカーが必要」というユーザーにとって非常に強力なアドバンテージとなっている。

セレナは商品改良も積極的。2025年冬の最新改良では、Googleを初搭載した12.3インチの最新NissanConnectインフォテインメントシステムを採用し、さらに3Dビュー機能を加えた最新の「インテリジェント アラウンドビューモニター」も備えるなど、利便性向上が図られている。
4)ディーラーの士気向上と「積極的な値引き」という追い風
またセレナを取り巻く販売現場の空気が良くなっていることも、セレナを狙っているユーザーにとって追い風になる。
この夏にデビューした新型キックス&新型エルグランドは、予想を超えるほどの好調なセールスを記録しており、日産ディーラーの士気はかつてないほど高まっているといっていう。販売現場では、この絶好の機会をモノにしようと、セレナに対しても従来以上に積極的な条件を提示するケースが増加しているのだ。
5)「今買っても長く現行モデルを楽しめる」安心感
さらに日産のモデルサイクルや現在のラインナップ展開の傾向からすると、現行セレナのフルモデルチェンジはまだ先の話、ということも販売面としてはプラス。ユーザーは今購入しても、長期間にわたって「現行モデル」の所有満足感を味わうことができるだろう。いまは製品としての熟成が極まったタイミングでありながら、古さを感じさせないデザインと先進機能を長く享受できるという、賢い選択ができるタイミングでもあるのだ。
新型エルグランドの登場による相乗効果、熟成されたe-POWERの魅力、納得の価格設定、短い納期、そして販売現場の積極的なアプローチ。セレナが売れ続ける背景には、ファミリー層が求める要素と「買いやすさ」が完璧に揃っている納得の理由がある。
時代のニーズに合わせて着実に進化を重ねてきたセレナは、これからも日本のファミリーを支える定番ミニバンとして走り続けていくはずだ。

初期受注6000台超という好調なスタートを切った、新型エルグランド。プレミアムミニバン市場に新たな旋風を巻き起こす1台だが、セレナとは上手に棲み分けができるだけに、いい意味での相乗効果が期待できそうだ。
日産 セレナ e-POWER ハイウェイスターV(2WD) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4765×1715×1870mm
●ホイールベース:2870mm
●車両重量:1810kg
●エンジン:直3 DOHC+モーター
●総排気量:1433cc
●最高出力:72kW(98ps)/5600rpm
●最大トルク:123Nm(12.5kgm)/5600rpm
●モーター最高出力:120kW(163ps)
●モーター最大トルク:315Nm(32.1kgm)
●トランスミッション:なし
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・45L
●WLTCモード燃費:16.0km/L
●タイヤサイズ:205/65R16 95H
●車両価格(税込):377万5200円
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