エクストレイルの兄弟車であり、北米日産の看板SUVモデルでもある「ローグ」が新世代に進化した。EVではなくハイブリッドシステムを採用しているのがトピックだ。

文: 小林 淳
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米国で急加速する「ガソリン価格の上昇」とハイブリッド熱

日産自動車は、米国市場における同社の看板SUV「ローグ(Rogue)」に、第3世代となる独自のハイブリッドシステム「e-POWER」を搭載した新型モデルを正式発表した。

ローグは日本国内で展開される「エクストレイル」の兄弟車であり、日産の北米事業を長年支え続けてきた最量販車種(コアモデル)。これまで北米市場における電動化戦略はEV(電気自動車)を中心として進められてきたが、ここへきて日産は北米向けローグにハイブリッドの切り札を急ピッチで投入する形となった。

画像: 米国で正式発表された新型ローグ ハイブリッド。日産の最量販SUVに第3世代e-POWERを搭載し、北米のハイブリッド需要に応える主力モデルとして2026年秋より順次投入される。

米国で正式発表された新型ローグ ハイブリッド。日産の最量販SUVに第3世代e-POWERを搭載し、北米のハイブリッド需要に応える主力モデルとして2026年秋より順次投入される。

なぜ今、広大な北米大陸において本格的なハイブリッドモデルが急務とされているのか。その背景には、現地の車社会で巻き起こっている構造的な変化と、日産の再生シナリオが関係している。

最大の要因として挙げられるのが、北米におけるガソリン価格の再上昇だ。原油価格の変動やインフレの影響を受け、全米でガソリン価格が高止まり傾向を強めており、燃費性能に優れる車両への消費者の需要が爆発的に高まっている。

全米自動車協会(AAA)などのデータによれば、1年前(2025年秋)の全米平均ガソリン価格は1ガロン(約3.785リットル)あたり約3.10〜3.20ドル程度で推移していたのに対し、現在は1ガロンあたり約4.40〜4.50ドル台にまで跳ね上がっている。1年間で約3割から4割近くも燃料コストが高騰しており、カリフォルニア州などの大都市圏や一部地域では1ガロン=5ドル〜6ドル超を記録するケースも珍しくない。大型SUVなどの給油では、1回あたりの給油代が簡単に100ドル(約1万5500円)を超えてしまう計算だ。

画像: 1年前と比較して3〜4割近く高騰した全米のガソリン価格。大都市圏では1ガロン=5〜6ドル超を記録し、長距離を日常的に走るアメリカのドライバーにとって家計を圧迫する切実な問題となっている。

1年前と比較して3〜4割近く高騰した全米のガソリン価格。大都市圏では1ガロン=5〜6ドル超を記録し、長距離を日常的に走るアメリカのドライバーにとって家計を圧迫する切実な問題となっている。

これまで北米市場におけるローグのラインナップは、内燃機関(ICE)のみを積む純ガソリン車が主力になっていた。しかし、日常的に長距離を走るアメリカのドライバーにとって、ガソリン価格の高騰は家計に直結する死活問題。つまりローグは、優れた実用性と広さを備えながらも、純ガソリン車ゆえの燃費性能がネックとなる場面が増えていたことになる。

一方で、急ピッチで推進されてきたEVシフトにも変化が生じている。充電インフラの整備の問題や、寒冷地での航続距離低下、高価格帯ゆえの買い控えなどもあって、EV市場の伸びは少し鈍化している。そうした中で、充電の必要がなくガソリンの給油のみで一定以上の低燃費を実現するストロングハイブリッド(HEV)が、最も現実的で実用的な選択肢として急速に再評価されているのだ。

北米シェア奪還に向けた「日産最重要のキーモデル」

日産にとっても、このタイミングでのローグハイブリッド投入は絶対に落とせない理由がある。日産は「2030年度までに米国市場で年間販売100万台」という目標を掲げており、その成長戦略を牽引する絶対的エースとなるのがこのローグだからだ。

北米のミドル級SUV市場には、トヨタ「RAV4」やホンダ「CR-V」といった強力なライバルがひしめいている。これらの競合モデルは早くから主力グレードにハイブリッドモデルを投入し着実にシェアを獲得してきた。ガソリン車をメインで戦わざるを得なかったローグは、このシェア争いにおいて厳しい戦いを強いられているわけだ。

日産は昨秋、アライアンスを組む三菱「アウトランダーPHEV」のシステムをベースとした「ローグプラグインハイブリッド」を先行してラインナップに加えた。しかし、4万5990ドルから(1ドル=155円換算で約712万円〜)となるPHEVは価格帯が高く、限られたユーザー層向けにとどまっていた。

画像: 先行して設定されたローグ プラグインハイブリッド(PHEV)。三菱の技術をベースとした上級モデルだが、ライバル勢と比べると少し高価な設定。今後、普及価格帯のe-POWERモデルが投入されることで、ようやく戦える環境が整うことになる。

先行して設定されたローグ プラグインハイブリッド(PHEV)。三菱の技術をベースとした上級モデルだが、ライバル勢と比べると少し高価な設定。今後、普及価格帯のe-POWERモデルが投入されることで、ようやく戦える環境が整うことになる。

北米でさらに幅広いファミリー層を獲得するために、より手頃な価格帯で台数が期待できるストロングハイブリッドは必要不可欠だったわけだ。

高速走行が強くなった第3世代「e-POWER」の採用も追い風

実は、日産がこれまで日本などで展開してきた「e-POWER」をそのまま北米に持ち込むことは難しかった。従来のe-POWERは、ストップ&ゴーが多い日本の市街地では一定以上の燃費を発揮する反面、平均速度が高く高速道路網が発達している北米の道路環境においては、エンジンの発電負担が大きくなり燃費面でのメリットが出にくいという課題を抱えていたからだ。

今回ローグに満を持して搭載されたのは、そうした弱点を克服した第3世代の「e-POWER」になる。発電専用エンジンには静粛性と熱効率42%を追求した専用開発の1.5リッターターボを採用し、高速クルージング時でも力強く効率の良い発電を可能とした。システム最高出力は225馬力を誇り、全車に電動4WD「e-4ORCE」を標準装備することで、北米ユーザーが求める力強い走りと総合38mpg(マイル・パー・ガロン)という優れた燃費性能を高次元で両立させた。ちなみに38mpgを日本でおなじみのkm/L表記に換算すると、約16.2km/Lに相当する。

画像: 北米向けに進化を遂げた第3世代e-POWER。熱効率42%を達成した専用1.5Lターボエンジンと組み合わされ、北米特有の高速道路での連続走行時でも余裕のある発電と静粛性を実現。

北米向けに進化を遂げた第3世代e-POWER。熱効率42%を達成した専用1.5Lターボエンジンと組み合わされ、北米特有の高速道路での連続走行時でも余裕のある発電と静粛性を実現。

価格面においても、ベースグレードの「SV AWD」で3万5490ドル(約550万円)からと、PHEVモデルに対して約1万ドルも手頃な設定を実現。これなら競合するRAV4ハイブリッドやCR-Vハイブリッドのシェアも切り崩すことが可能だろう。ブランドの命運を握る北米市場。ガソリン高騰とハイブリッド需要の波に乗り、進化型「e-POWER」を携えて挑む新型ローグは、シェア奪還への反撃の1台となるはずだ。

北米で鍛え上げられた次世代パワートレーンと最先端装備は、やがて次期「エクストレイル」として日本市場へも還元されるだろう。

画像: 大幅に質感が向上した新型ローグのインテリア。14.3インチディスプレイにはGoogle Gemini対応の最新インフォテインメントを搭載し、次世代のコネクテッド体験を提供する。

大幅に質感が向上した新型ローグのインテリア。14.3インチディスプレイにはGoogle Gemini対応の最新インフォテインメントを搭載し、次世代のコネクテッド体験を提供する。

日本導入時に注目したいのは、北米仕様でお披露目された存在感あふれるフロントマスクと、洗練された横一文字のLEDリアコンビランプが描く堂々としたスタイリングだ。インテリアも質感が飛躍的に向上しており、ゼログラビティ思想のシートやクラス最大級のリア空間を確保。Google Gemini対応の最新インフォテインメントシステムも含め、先進性と快適性は次のフェーズへ進化を遂げている。

さらに、システム出力225馬力を誇る第3世代「e-POWER」と「e-4ORCE」の制御は、日本の長距離ドライブでも絶大なゆとりをもたらすはずだ。北米のみならず日本においても、新時代を切り拓く本格SUVとして期待が高まる1台になるだろう。

画像: 洗練された横一文字のLEDリアコンビランプが目を引く。北米で鍛え上げられたデザインとパワートレーンは、次期「エクストレイル」として日本への導入も期待される。

洗練された横一文字のLEDリアコンビランプが目を引く。北米で鍛え上げられたデザインとパワートレーンは、次期「エクストレイル」として日本への導入も期待される。

日産 ローグ(北米2027年モデル)Platinum 主要諸元

●全長×全幅×全高:4650×2103×1719mm
●ホイールベース:2705mm
●車両重量:1890kg
●エンジン:直3 DOHC+モーター
●総排気量:1498cc
●最高出力:148hp/5000rpm
●最大トルク:231.8Nm(23.65kg-m)/3600rpm
●前輪モーター最高出力:202hp/4400-8500rpm
●前輪モーター最大トルク:329.46Nm(33.6kgm)/0-4300rpm
●後輪モーター最高出力:134hp/5500-9600rpm
●後輪モーター最大トルク:195Nm(19.9kgm)/0-3000rpm
●トランスミッション:なし
●駆動方式:4WD
●燃料タンク容量:53L
●WLTCモード燃費:15.73km/L
●タイヤサイズ:235/55R19
●現地車両価格(参考):4万3490ドル

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