空を飛ぶ? ことで、効率よくハイスピードを実現
ランドローバーBARのフリート(チーム)が乗り込むのは、「リタ」と名付けられているフォイリングカタマラン。ふたつのカタマランは、クロスメンバーと“トランポリン”と呼ばれる丈夫な網を組み合わせたプラットフォームで接続されている。それぞれの底面にはダガーボードと呼ばれる水中翼がついていて、約12ノットで揚力を発生、1300kgを超えるボートとクルー全員分の全重量を水上に持ち上げる。
正確無比なコントロールで50ノット越えのフォイリングを実現
今回、開発されたステアリングホイールは、水中翼を正確に操作するためのスムーズかつ正確な操舵フィーリングを実現し、同時に確実なフィードバックによる状況把握を容易にしている。その精密さは、50ノットを超える速度でのフォイリングを可能にしたというから驚きだ。
そこに込められた技術や、経験に裏打ちされたクラフトマンシップには、たとえば新型ディスカバリーの開発プロセスにおいて培われた要素も数多いという。スキッパーの手にフィットするように成形されたギアシフト・パドル付きの形状は、効果的かつ効率的なコントロールを可能にした。
「ランドローバー」の技術力を高めるために生まれた新拠点
このように自動車メーカーであるランドローバーがヨットレースに力を入れる目的は、ランドローバーBARがルイ・ヴィトン アメリカズカップで勝利を収めるためのボートを設計することにほかならない。ステージは違っても技術の限界に挑むことで、これからの製品開発に反映できるようなランドローバーそのものの技術力を高めることを、追求しているという。
イギリスのハンプシャー南部、ポーツマス・キャンバーにランドローバーBARのスタイリッシュなヘッドオフィスがオープンしたのは、2015年の夏。同時期にランドローバーは、ベン・エイズリー・レーシング(BAR)とタイトルパートナーおよび「独占的な」イノベーションパートナーとなることを発表している。
チームプリンシパル兼スキッパーであるサー・ベン・エイズリーと彼のフリートがアメリカズカップに挑戦するための拠点は、チーム本部としてデザイン、エンジニアリングなどの設計を行うとともに、ヨット製造やイノベーション活動の最前線でもある。フィットネス施設もあって、チームスタッフは常にトレーニングを欠かすことはない。
2015年に始まったシーズンも、最終決戦まであと2大会を残すのみ。
今シーズンのアメリカズカップは、2015年7月にポーツマスから始まった。2016年末の福岡戦までの全9戦中、ランドローバーBARはオーバーオールで4勝を挙げ、トップの512ポイントを獲得している。次は、2017年5月の「クオリファイヤーズ」と呼ばれるチャレンジャー決定戦、そのプレーオフ戦と続き、最終的な挑戦艇が決定する。最後のアメリカズカップ・マッチは、6月に英国領バミューダのハミルトンで開催される予定だ。