ミシュランにとって日本は重要な開発拠点
ミシュランといえば、フランスのタイヤメーカーということはクルマ好きならば誰でも知っているだろう。
ミシュランは1889年に誕生したメーカー。1946年に登場しバイアスタイヤを過去のものにした「ラジアルタイヤ」、1992年に登場、シリカを入れたエコタイヤの先駆けになった「グリーンタイヤ」、2000年登場で、ダブルタイヤを1本にまとめ、1車軸あたり約100kgの軽量化を実現したトラック用タイヤ「X-One」などなど、タイヤに革命を起こしたさまざまな技術の開発でも知られる。
だが、日本で買えるミシュランのタイヤは、輸入車と同じような立場の、海外で開発された「輸入タイヤ」だと思っている人が多いのではないだろうか。
今シーズン新たに登場したスタッドレスタイヤ「X-ICE3+」の試走会の際、開発トップである東中一之さんから聞いて驚いたのは「このタイヤは日本で開発されているんです」という言葉。
冬の間、北海道・士別で走行テストが行われていることは知っていたのだが、材料研究も含めて日本ですべて開発されていることは、じつは初耳だった。
今回、そんなミシュランの、日本の開発拠点見学会が開催された。群馬県太田市にある日本ミシュランタイヤ太田R&Dサイト。広い敷地のここは、元々はミシュランの日本における工場だったのだが、いまは工場機能はなく、研究開発のための場所となっている。
話を聞いたのは、製品開発本部の池田聡さん。「ミシュランはいま、世界に6つの研究開発拠点を持っています。一番規模が大きいのはフランスのラドゥで研究者は約3000名、次はアメリカのグリーンベルで約900名。3番目がここ日本で約300名の研究者がいます」
「そのうち、基礎研究/先行開発/製品開発の3つを行っているのは、ラドゥとここ太田だけです。とくにタイヤの騒音性能やスタッドレスを含めたウインタータイヤまわりの基礎研究と開発は、世界でここ日本が主導して行っています。ですからミシュランにとっても、この太田サイトは非常に重要な役割を担っているんです」。聞けば、全世界で走っている日本メーカー車についているOEタイヤも、すべてここ太田で開発されているのだそうだ。
R&Dサイト内での共通言語は英語
タイヤの成型工程やスタッドレスタイヤ開発用のアイスドラムの見学も行った。「研究所に近いところで、特殊なコンパウンドもすぐ作れて、試作タイヤを作って、テストまで一環してできる環境だから良いんでしょうね」と池田さん。ちなみにここでの共通言語は英語だという。
「ご存じのとおりグローバルに開発を行っています。たとえばコンパウンドで分からないことがあればスペインのAさん、設計ならフランスのBさん、音振ならば日本のCさん…のように、訊ねれば必ずヒントが出てくるスペシャリストが、世界中にいるんですね。これがミシュランの強みでもあります」
何かに特化した性能のタイヤではなく、すべての性能を考慮したミシュランの哲学「トータルパフォーマンス」。その思想の一端を知った見学会だった